存在
足早な足音がコツコツ
鞄の金具がカンカン
誰もいない
暗い夜道によく響く
腕を振るたび
服の布すれズルズルと
店はとうの昔に
シャッター街に変わり
通行人に無愛想に
遠くの方で
バイクがグォンと一唸り
走る道には
孤独とスリルのみ
自転車が一台
シャリシャリ走る
女は急ぐが
小さな車輪はのろのろと
男が一人
缶捨てスタスタ
宙舞う缶コーヒーは
ガコンと呻き抗議する
静々溢れる
涙が数筋
部屋の片隅で
訳も分からずボロボロ涙す
夜は寂しく
音を響かせる