勇者の歩み、もしくは悲しき礎の始まり
「ふん、つまりオレの思った通りだったわけだな」
「……あ、うんそうだね、ハハッいやースゴいなぁイサミは」
「そうです!さすがイサミ様!」
何度も思う、このバカ(イサミ)をどうしてくれようか
いっそもうほうっておくのが良いかもしれない、隣の首輪付き獣人奴隷少女ちゃんがたまに物凄い眼でこっち見てくるし正直関わりたくない、でも……どうすることも出来ない
異世界転生
うん、良い言葉だ、凄く状況が簡潔に分かる
ある日突然謎パワーで拉致された俺は、よくもこんなテンプレ空間をと感嘆しそうな【召喚の間】で【お姫様】と【王様】に迎え入れられていた、いわく【魔王】がうんぬん【混沌の楔】がかんぬん
ここまでは良い、……余り良くないが、まぁ良い
視界の隅のステータスウィンド、…………まぁ良い、良いったら良い
明らかに降りきれたステータス、ハイハイ良いですよー
【勇者】の称号、もうDONとこいだよ
でも、あー、これはダメだ明らかにダメだ
「なんなんだお前ら!!!ボクを家に帰せ!」
「恐らく召喚の失敗でしょう」
「うむ、称号も【獣使い】…………いや、呼んだのはこちらだが」
喧しく騒ぐ同郷(日本人)とおぼしきやせ形の少し暗そうな同い年位の男
淡々と言う【姫】
明らかに称号に嫌悪感丸出しの【王様】、……獣人差別とかテンプレだよね、そう考えると【奴隷使い】か……
召喚に何らかの不具合があったうんぬん、でもこれ拉致魔法だよね?成功も失敗もなくね?
そうこうしてるうちに暴れだす同郷の男、突如男から呼び出された狼みたいなのに【姫】がついと、指を振る、鎖のようなものにがんじがらめにされる狼と同郷の男
「何と汚らわしい!生物を隷属化させる力をこうも軽々しく使うとは」
…………あれれー?おっかしいぞー突然拉致して勇者にして魔王にぶつけるのは悪い事じゃないのかなぁ?…………口は閉じますが、緊縛とか、趣味じゃないんで
「勇者様行きましょう、部屋に案内いたします」
軟禁ですね分かります
俺はすんごい顔して睨み付けてくる緊縛プレイ中の日本人くんを後にして部屋を出た
うん…………
案内された部屋で一人にしてもらった俺は一度息を付く
うん……
ふわっふわのベッドに腰掛け、ゆっくり頭を抱えた
うん、俺、【主人公】じゃないね
世の中にテンプレート広し、あれだ、成り上がり物だ、あんまり得意なジャンルではないのだけど内容は知ってる
主人公が理不尽な目にあって雑魚スキルを駆使して無双する作品
召喚失敗、嫌悪される称号、理不尽な召喚者
やだーてんぷれー…………えっ?追加注文?はーい喜んでー!最初は優遇されるけど後から踏み台にされて主人公にカスゴミのように扱われるライバルキャラ追加でーす
俺だった
現実逃避したい、どう考えても俺だ、どうしよう
それから俺の苦難の日々が始まる
にこやかに最低限の資金を与えて放り出したと説明する【姫】、俺、顔面蒼白、根性で探索スキルを発動して主人公君を探し望遠する
自分は義務の様に王宮で魔法の訓練をしながら主人公君を観察
マルチタスク朝飯前、勇者パワー凄い
流れるように冒険者➡️火力不足➡️奴隷購入(日本人の倫理観は何処に棄ててきたんだ)した主人公君を確認
不安だ、下手に手を出すと見えない力でこっちが殺られかねないし、いや人殺しとか勘弁だが、放っておいて【姫】暗殺とか来られても困る【姫】、あれはあれで馬鹿可愛いし倫理観が違うとはいえ情は移る
なので、妥協案
「おや?キミはたしかイサミ君だったか?」
「ッ!……チッ、何だ【勇者】じゃないか、何でこんな中位のダンジョンにいる、ぼ……オレに用か」
あ、一人称変えたんですね分かります、いやさっき名前確認したろ?本当ならアウトオブ眼中だからキミ、あと対面してると舌打ちって異様にイラッと来るよね精神温厚化の指輪付けといて良かった
「いやぁ、それがね、ここで採れるらしいクキニカバという薬草を探しているんだが見つからなくてね」
「何だ……誰かキャナナシの病にでもかかったか?」
おおっ主人公スキル、都合の良い知識、発動確認
「ああ、姫様がね」
「っ、あのビッ……」最悪の出会いでも、あって少しの人間にビッ○ってアダ名はいかがなものかと思うよ
「いくら探しても見つからなくてね、イサミ君は知らないかい?」
これぞ秘技
無能な勇者に変わってオレが魔王を倒す、弱小称号【獣使い】で奴隷ハーレム
である
それから、すくすく育つ主人公君の態度、奴隷一号獣人少女のヤンデレパワー、奴隷二号、エルフ奴隷ちゃんの胸囲、奴隷三号、なんか魔王に縁があるっぽい魔族奴隷ちゃんの内側から滲み出てくる闇能力、奴隷四号、明らかに日本人の奴隷ちゃんの変化した称号【勇者殺し】を観察する、育成物語が始まったのさ!
俺は俺で成長したさ!何と新しい魔法を作ったんだ!
聞いて驚け!何と医療のあまり発展してないこの国である条件下に劇的に効く魔法さ!そうだね【胃腸薬】だね
残念異世界第三段です、自分は勇者であっても主人公じゃないかもしれない、もうみんな気付き始める頃じゃないでしょうか
作中のイサミ君は根っこは良い子です子供ではありますが……
明らかに【主人公】というのは異質な物です、クラス皆が転生する。そんなことが良くあるこのご時世【明らかに】理不尽な目に合っているクラスメイトには優しくしてあげましょう貴方はその子の主人公ではあり得ないのです
作者から皆さんにお願いですよ(*`・ω・)ゞ