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申し訳なさそうな顔をしている1年生達に礼を言って、わたしは科学室を出た。
そこで思いがけぬ人がわたしを待っていた。
「鈴さん、どうしたの?」
「あのね、美夜さんの探し物ってコレでしょう?」
彼女はウキウキした様子で、一本のペンをわたしに差し出す。
それは愛用している例のボールペンだった。
「教室で見つけたの?」
「と言うことは、なくした物はこれで間違いないのよね?」
疑問を疑問で返さないでほしいんだけどな~。
けれど確かにそうなので、頷いて見せる。
「ええ、確かにコレよ。―で、どこで見つけたの?」
「占いで見つけたのよ」
「具体的には、どこで?」
しかしこの問いには答えず、ただ笑みを浮かべるだけ。
―つまり、言えないんだな。
わたしは深いため息を吐いた。
「とりあえず見つけてくれてありがとう。じゃ」
淡々と礼を言って、わたしは教室に戻ろうと歩きだす。
階段を登ろうとした時、一部始終をそこから見ていたらしいクラスメート達が、黙って手招きしてくる。
「どうしたの?」
「なくした物、見つかった?」
「やっぱり『魔女』が見つけたんでしょう?」
「まあ、ね」
確かにわたしの手元にペンは戻ってきた。
その事実は否定しない。
「ほらぁ。最初っから『魔女』を頼れば良かったじゃない」
「下手に機嫌を損ねると、後で大変な眼に合わせられるよ?」
このクラスメート達が本当にわたしのことを心配してくれているのは分かる。
「だけど、どうにも好きにはなれないのよねぇ」
わたしは階段を登りながら、渋い表情になった。
「別に彼女自身のことは嫌いではないんだけど…。注目のされ方は嫌いね。『魔女』と呼ばれて嬉しがるなんて、どうかしている」
「でもさあ、『魔女』になる前の彼女なんて、エアーも同然だったじゃん」
「そうそう。いっつも怪しい本ばっか読んでてさ。でもまさかそれが特技だったなんてね」
…占いはともかく、人を呪うのも特技のウチに入るのか。
最近の女子高校生の考え方は、本当に面白い。
「美夜はあんまり噂とか信じない方だろうけど、本当に気を付けた方が良いよ」
「うんうん。何かあってからじゃ遅いんだから、『魔女』のご機嫌取りはしといた方が安全だよ」




