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第六章 山本 玄道斉

挿絵(By みてみん)


 わしには不満がある。

 わしが長年勤めた会社についてじゃ。


 わしはこの生涯をあの小さな置き薬訪問販売の会社の発展のために尽くしてきた筈じゃ。


 若い頃はそれはもう一日中働き、家庭に割く時間もなく妻と娘にも見放され……。


 それでも一人ずっと働いてきたんじゃ。




 なのにじゃ!

 あの退職金はなんじゃ!!

 老後も裕福に暮らせないではないか!!




 ちょっと競馬に使っただけで今月も生活費がギリギリじゃ。

 世の中おかしいわい!


 金が無くては遊ぶに遊べん悲しい世の中じゃ。




 そんな不満を抱えて昨日散歩をしておると怪しい男が現れたのじゃ。

 やつは修行中でお代はいらんと言ってわしに手品を見せてくれおった。

 出すならリンゴではなく金を出してほしいところなのじゃが問題はそこではない。


 やつは手品で使った箱をうまく使えと言ってわしによこしてきたのじゃ。


 最初は訳がわからんかったがこの箱は中々面白い。


 あるときは紙切れが入っていておったかと思えば肉じゃが、むふふなイラスト、カブトムシのおもちゃなど開けるたびに様々なものが入っとる。まるでパチスロで当たりを待つような感覚じゃ!


 わしは中々よい玩具を手にいれたのかもしれん。

 老後の楽しみがギャンブルしかないわしにとってこれは興味をそそられるものじゃ。



***



 わしの住むぼろい借家の一室でわしは考える。


 しかしやはり賭け事と言うのは金をかけてこその賭け事じゃ。

 今手持ちは少ないから家にあるいらんもんを詰め込んでみるとしよう。


 そこで思い付いたのわ今となっては使わなくなった仕事のフロッピーディスクとわし秘蔵のビデオテープじや!!


 この間キャバクラのねぇちゃんに話したらなんと見たことがないと抜かしておった!

 ぴちぴちのねぇちゃん達と話を合わせるためにもでーぶいでーとかを使いこなさんといかん。


 よく年をとると考えが固くなり頑固になると言うがわしは違う!


 誰があの安っぽい会社を支えてきたと思っとるんじゃ?


 バリバリの営業マンとして時代の変化には柔軟に対応するのじゃ!!




 早速でーぶいでーとか言うのにデータは焼き直しておるし古くなったこやつらともお別れじゃ。

 まさかビデオカセットを使わなくなる日が来るとは夢にも思わなかったのぉ。


 わしの若い頃はテレビを見るのでもやっとなのに今の若者と来たらいつでもどこでもすまほ?じゃ。

 道を歩いててもぶつかりそうになるし困ったものじゃい。


 ともかくわしらの世代の思い出をこの箱をもつ誰かに配ってやるとしよう!

 もらったやつらの喜ぶ顔が目に浮かぶわい!!




 がははははーーー!!




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