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第三十一章 光本 歌蓮 その三

挿絵(By みてみん)


「いってきます、ママ!!」

「うん、行ってらっしゃい幸太」


 私の息子、幸太はやんちゃ坊主だ。

 毎日の見送りが大変だけどそれでも園に連れていっている。


 幸太はよくトラブルを起こすけど子供達には人気だ、いわゆるガキ大将ってことなのかしら。

 主人も昔は私達をリードしてくれる素敵な男性だったわ。


 今日は日曜日だけど託児所に幸太を預けた。

 それもこれも私と網谷君の作戦が失敗したからよ。


 お陰で私は二つ目の作戦をとることになったわ。




 準備をするのには少し時間がかかっちゃったけど仕方ないの、これで全てが終わるもの。


 あの探偵さんを犯人に仕立て上げてこの事件を終わらせる作戦は失敗した。


 けど今、遺体と箱は全てあの探偵さんが持っているわ。

 だから全てをなかったことにするいい方法があるの。


 私は幸太を送り届け足早に家に帰った。

 玄関に入ってもうちに人気はない。


 三人家族にしては広めの一軒家だったけど主人は会社の付き合いでゴルフにいっている。

 あの人はただでさえ家庭のことは置き去りなのに休みの日までいないのよ、信じられないわ。


 でもそれは私にとって好都合、私は玄関の戸を閉めた。

 廊下をゆっくり歩いて居間に向かう。


 この部屋には誰もいない。

 机とソファーがあるだけだ。


 庭へと繋がる吐き出し窓にはカーテンを掛けたまま。

 静かすぎる部屋に飽き飽きしてテレビの電源をいれる。


「未だ被害者の明道明美ちゃんは行方不明です。」


 このニュースはもう聞き飽きたわ。


 私はつけたばかりのテレビを消す。


 そうよ、先週のカフェでの作戦、箱を回収した探偵さんの嘘までは私は見抜いていたわ。


 あの人が言っていたのはハッタリよ、私にはわかるもの。


 元々箱に興味をいだいていた彼が箱を回収することだってわかってたわ。

 だから通報したわ、店を出てすぐに。

 あの箱を全て入れた鞄は目立つはずだしすぐに探偵さんは捕まるはずだったの。


 それなのに未だにこのニュースは流れ続けている。


 それはつまりあの探偵さんが捕まってないってこと。




 お店でおじいさんが箱を落としかけた時は確かにヒヤヒヤしたわ。

 でもそれだけの危険を冒して実行した作戦が上手くいかなかったのよ、やってられないわ。

 でも一つ確かなのは明美ちゃん殺害の証拠となる死体と箱はほぼ全てあの探偵さんの元にあるということ、これは確かよ。




 だからあの人が今死ねば私が疑われることはもうこの先ないわ。


 私は押し入れの奥から取り出した黒い箱を机の上に置く。

 蓋が閉まらないようにテープで止めてある。


 この箱は私があのこを殺した時にピエロさんに貰ったもう一つの箱、ピエロさんが使っていた特別な箱。

 他の箱と違って側面に薄いダイヤルがついており番号を選択することで選んだ特定の箱にものをワープさせることが出来る。


 私の願いを聞いてくれたピエロさんが私だけに特別に用意してくれたものなの。




 誰も気付かないわ、箱が本当はもう一個あるなんて。


 私は用意した灯油缶とマッチ、ガスボンベをその横に並べる。


 このアイデアは先日網谷君が思いついてくれたわ。


 この箱は中のものがどんな状態でも別の箱にワープさせることが出来る。


 だから燃えるものを送りつけて引火させればその場を火の海に出来るわ。


 私はまずマッチ棒を一本箱に入れて、開けっぱなしだった蓋を閉じる。


 ダイヤルは一番にしてある。


 蓋を開けるとそこにマッチ棒はなかった。


 ふふ、不用心ね探偵さん。


 それから全てのダイヤルを試して見たけど全ての箱にマッチ棒が送れた。


 これはつまり探偵さんの箱が今全て閉じていてワープが発生する状態であるってことよ。


 やっぱり不用心ね、探偵さん。


 箱は開けずに保管でもしているのかしら?


 でもそれなら私の箱に繋がる証拠は探せない。

 それはそれで好都合よ。




 けどもし箱を使って私を探そうとした時は……、その時は死んでもらうわ。




 私は空になった箱を持ち上げガスボンベの栓を壊し箱の中に気体を注ぐ。


 ガスは空気より軽いから上に向かっていくけどこうして箱を上にしておけば気体だって箱に詰めることが出来る。


 これを考えた網谷君は賢いわ。


 それぞれの番号の箱に詰めた気体を送りつける。


 いいわ、これでどの箱を開けてもすぐに部屋中にガスがまける。


 次は火種よ。


 でもガスを巻いた部屋で火種をつけるのは危ないから換気しなくっちゃね。


 網谷君も言っていたし気をつけなきゃ。


 私は部屋の窓をカーテンを掛けたまま少しづつ開ける。

 部屋中の換気扇をフルに起動する。




 これでいいわ、あとは火種をいれるだけ。


 箱の中に灯油を注ぐ。


 箱の半分まで満ちた灯油の中に火のついたマッチ棒を投げ込む。


 瞬く間に箱は炎を吹き上げる。


 火柱が沸き立つ。


 箱を開けた途端これがでればガスにだって引火するはずよ!


 いいわ。


 これだけの勢いで燃えてくれればきっと探偵さんの全てを燃やし尽くしてくれるわ!!




 私は急いで蓋を閉じる。


 それを繰り返し全てのダイヤルに炎を送りつける。


「ふふ、これでいいわ。」


 あれから時間が経っちゃったけどこれでもう安心よ。

 私の箱の存在に気付いて箱の実験でもしたときにはあなたは私の炎に包まれて死ぬわ。

 証拠品となる明美ちゃんの遺体ももし保存でもしていたなら一緒に燃やしてくれる。


 寧ろ二週間も経って未だに見つかってないんだから上手く処分してくれたのかしら?


 まぁいいわ、これで全てが終わりよ。


 探偵さんももうこの箱のことを探ることは出来ない。


 証拠になるものもなにもない。




 これで私は自由よ!!




「あはははは、うふふふふ。」







「あははははははははは!」









「なにがおかしいんだ糞ババァ。」


「……え?」


 私が喚起の為に開けていた吐き出し窓から大きな鞄を担いだ二人の人影が現れる。


「……あなただったんですね、光本さん。」


 それは探偵さんじゃなくて、あの時カフェにいた二人の学生だった。


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