表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/40

第二章 大歳 利樹

挿絵(By みてみん)


「うーん!今月も売れ行きは好調だぞ。」


 私は大歳利樹、転売ヤーをやっているものだぞ。

 扱う物品は様々だが一番の売れ筋は私お手製の改造エアガン、それと小型盗聴器だ。

 今は小さなアパートに住んでいるぞ。


 前は中々にセキュリティの高いアパートに住んでいた。

 しかし私のお隣さん、戸畑峰子が部屋の鍵を壊してしまったことで大家と揉めて引っ越してしまった。

 だから私も引っ越したんだぞ。


 む?お前が引っ越す必要はないだろう?


 そんなことはないぞ。

 私は峰子先生を追っている。

 盗聴器開発もほぼそのためと言うべきだろう。

 峰子先生の私生活を聞きながら飲むミルクティーが一番旨いのだぞ。


 峰子先生はと言うと一年前から宇多田とか言う学生と仲良くなりいつも家に連れ込んでいる。

 彼女達は気付いていないが私は全てを知っている。


 この優越感がやめられないのだぞ。


 それはそうと今月の売り上げの帳簿を作っていた時のことだ。




 私は奇妙な体験をしたのだぞ。




 私がデータを打ち込み終わり午後11時を迎えたくらいだったか……。


 突然チャイムがなった。


 こんな時間に来るやつはろくなやつではないと居留守を使っていたところ、




 カチャリ。




 と音がなったのだぞ。


 確かに前にすんでたところと比べたら防犯機能の薄い家であった。

 しかしそんなに簡単に鍵開け出来るようなものでもないはず、私はそう思った。


 おかしいと思いふりかえるとそこには一人の男が立っていた。




「こんばんわ!遅くに失礼いたします!」




 真っ白な格好をしたそいつは両手に真っ黒な箱を持っている。


「……なんだね、君は?」


 私は耳に当てていたヘッドフォンを置いて訊ねる。


 ……商売柄こんなやからに命が狙われる日を想定して手元に銃器を置いている。


 だが今は峰子先生が楽しそうに録画されたドラマをみている。

 大きな物音をたてるわけにはいかない。

 これは困ったな。


「通りすがりの手品師です。」


 随分図々しい手品師がいたものだと思っていると彼は私に手に持っていた黒い箱を差し出す。


「これはプレゼントです!」


 いかにも怪しいその男は黒い箱を差し出してくる。

 相手の出方がわからない以上、無意味に抵抗してことを荒立てるよりも素直にしたがったほうが良さそうだ。

 それにその黒い箱はどこか引き込まれるような不思議な魅力がある。

 面白そうだと思い受け取ってみると薄い材質で出来ており中身は空だということがわかる。


「……なんだね、これは?」


「今からマジックを披露します!お代はいりませんよ!」


 面白ければ金ぐらい払ってやっても構わんのだがそうゆうことなら仕方ない。


「それでは僕の箱にご注目!見ての通り中身は空でございます!」


 正方形のその箱の上部を開けて中身を見せてくる男、私も騙されまいと必死に見つめる。


「それではこの箱にこちらのリンゴを投入します!」


 どこからか手品師はリンゴを取り出して箱に入れる。

 私としてはリンゴがどこにあったのか気付けずに少しへこんだぞ。




 リンゴを箱に積めてやつが蓋をした途端、私の持っている箱に異変が起きる。





 ……重い?

 ……まるでリンゴが入ったようだ。


 ……私は箱の蓋をとる。


 するとそこには、さっき見たリンゴが入っている。




「……なるほど、面白いではないか!」




 私は入っていたリンゴをかじる。甘くてジューシーだ。




「いいものを見せてもらった!褒美を出そう!」




 私が貯金箱をとろうとデスクに手をかけると男はいう。


「あなたの他に七人にお配りしております!褒美は結構なので私はこれで失礼いたします!」


 そうやって彼は足早に玄関に向かう。


「待ちたまえ!それでは私の気がすまない!」


 私が追い掛けようと机を立つと去り際にやつはもう一度いう。




「それでは う ま く 使ってくださいね!」




 そうゆうとやつは玄関をでていった。

 部屋を出る気は起きないので私は再び席につく。


「……なんなのだ全く。」


 私はもう一度リンゴをかじり、渡そうとしていたお手製五百円硬貨型のGPSタグ付き盗聴機を机に置く。

 私の元にはかじられたリンゴと黒い箱が残っていた。


「……七人ということは七つこの箱があるのだろうか?」


 今のマジックのように瞬間移動で装着出来る盗聴機が作れればいいのにと物思いにふける。





 ……悩んだときは峰子先生の美声に限る。


 私は再びヘッドフォンに手をとり机に向かったのだぞ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ