第二十七章 守田 美紗 その五
「お邪魔します!」
道中色々あったけど私達はようやく中村さんのうちについたの。
小さなアパートの一室でよくわからない機械や段ボールが綺麗に山積みされてたの。
なんだかわからないけど棚にも番号がふってある。
物は多いけどお兄ちゃんの部屋よりも綺麗な部屋かな。
「ねぇねぇ部屋の中撮影していい?」
「後にしろイカレ女」
大きめの鞄をもった筑波先輩とクーラーボックスを抱えた港町さんも一緒にいるの。
正直港町さんには襲われかけたから早く筑波先輩にどうにかして欲しいんだけどこの人は残りのあけみちゃんの遺体も持ってたみたい。
だからとりあえず遺体と一緒に連れてきたの。
遺体だけとって早くこの人もばらしてくれれば私が食べちゃうのに筑波先輩には効率が悪いって怒られちゃった。
でもいいの、私が危ない時にこの人は助けてくれたから!
筑波先輩って怖いけど頼れるなぁって思ったの!
「なんだか騒がしくなってしまったな、筑波よ」
予定外の人数に中村さんも困り顔みたい。
「まぁ皆の分のミルクティーも入れてある 飲めるうちに飲み給え」
そういって中村さんは全員分の紅茶を机に並べる。
今更気付いたけど中村さんって紅茶が好きなのね!
「……む、守田よ?どうしたのだその服は?」
中村さんは私の服を見ていう。
改めてみるとさっき港町さんにかけられた何かが固まってガピガピになってたの。
警官に見つからないように気をつけてたのと港町さんに襲われたのとで気付かなかったの。
お気に入りの服だったのに……うっかりしてた。
「これあたしがうっかり興奮しちゃってローションかけちゃったやつね、ごめんね守田ちゃん!つい押さえられなくて!!」
港町さん……、謝るのはいいけどもうちょっと反省の姿勢をみせて欲しいな、やっぱりこの人は苦手かも。
「ふむ……、そういうことなら代わりの服を用意してもいいぞ。」
そういって中村さんは棚からセーラー服を取り出す。うちの学校のやつだ。
すごく準備がいいけどそれより……。
「なんで中村さんそんなの持ってるんですか?」
「ふむ、最早隠すまでもあるまい。私の本職はネットでの転売業だ。こういったマニア受けする品々を取り扱っている。」
「え、探偵じゃなかったんですか?」
「あれは嘘だぞ。警察とのコネも一切ない。」
なんだかよくわからないけどもっとすごいことしてるんだな。
「だが私の仕事は夢を売ること、お前達の犯人捜しという依頼は確実にこなすぞ。」
そうきっぱりという中村さんは何だかんだ頼りになるの!
「ところでこの制服使うかね?今回はただで貸してやるぞ。」
「……じゃあお借りします!」
「なんならシャワーを使っても構わんぞ。日頃から整理整頓は心がけている、格安ホテルのそれよりは清潔なはずだ。」
「……さ、さすがにそれは」
「大丈夫!私みんながのぞかないようにみててあげるー」
「いや、お前が一番やばいんだよイカレ女」
「安心したまえ守田、ここの獣共は私が見ておくし箱の実験の準備も済ましておく」
そういって中村さんはタオルからシャンプーまであらゆる洗面用具を出してくれる。
「……な、ならお言葉に甘えて」
私は仕方なく居間の戸を開けて洗面所へと向かう。
「……先輩、何考えてやがる?」
「ふふ、筑波よ。女子高生の使用済みは高く売れるのだぞ」
私が戸を閉めるとき少しだけ二人の会話が聞こえた。
***
中村さんの言っていた通り浴室はとても綺麗に掃除してあった。
見知らぬ人の家でシャワー借りるなんて普通出来ないけど今の私を取り巻く環境はどうにも普通じゃないみたい。
こう言うの感覚が麻痺してるって言うのかな?
港町さんが服の中まで手を入れてきてたから結構体中ベタベタしていた。
私はシャワーを浴びながら考える。
この箱に出会うまでは私は普通の学生だったはずだ。
確かに他のみんなよりもちょっとだけ食いしん坊で魚を釣ったり野鳥を捕まえたりしては自分で捌くこともあった。
お父さんにそういうのは免許がいるからやめなさいって叱られるまでは私はそれを楽しんでいたの。
あけみちゃんのことだって確かにたべちゃいたいって思ってたけど、思ってただけだ。
思うだけなら誰だっていけないって言われること考えるはずなの。
けど私はそれをしちゃった。
我慢できなかったの。
そういう意味では私も港町さんと一緒。
私は普通ではなくなってしまった。
罪悪感がないわけじゃないの。
あけみちゃんが死んじゃって、悲しくって、怖くなって。
何も考えられなくなって。
その時に私の根元にあったのが食べたいって感情だったの。
今この中村さんの家にまたあけみちゃんの遺体が揃っている。
今日送られてきた遺体がまだあけみちゃんのものって決まった訳じゃないけど中村さんが言うにはバラバラにされたあけみちゃんの胴体らしいの。
私がさっきお店でそれを見た時、やっぱり美味しそうって思った。
罪悪感がないわけじゃないの。
でも、それでもそれは美味しそうだったの。
……私は正直自分自身が怖いの。
普通じゃないことをしてるんだもん。
さっきだって港町さんに襲われた。
あの時も怖かったの。
でも筑波先輩は前を向いていた。
人を殺していながらも、殺そうとしながらも、あの人は前を向いていたの。
先輩はいつお父さんとお母さんを殺して、そしてどうやって今まで生きてきたんだろう。
わからないことは一杯あるけど筑波先輩は前を向いていた。
何か目標があるみたいに、まっすぐな眼をしていた。
先輩も怖くなったりするのかな?
わからないことは多いけど一つ思うことがあるの。
筑波先輩を見ていれば私がこれからどうするべきかわかる気がするの。
あの人は私の先輩だ。
今はとにかくついていこう。
そしていつか。
あの人も。
食べちゃいたいな!!
私の体についていたベタベタはすっかり流れていった。




