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第一章 筑波 善財

挿絵(By みてみん)


 ……ふざけやがって。

 俺はあの事件からこの一年間ずっとムカついていた。


 殺すと決めたやつを()()()()()()からだ!


 あの時、やつはなんの痕跡(こんせき)も残さず消えやがったんだ!


 それが今!今になって俺の目の前に現れやがった!!




「こんにちは!手品はお好き?」




 やつは俺の帰宅中、突然現れやがった。


 ここは住宅街の一角、塀に囲まれた交差点の真ん中だ。


 しかし不思議と周りにひとけはねぇ。


 ……五月の上旬、連休明けのこの時期に誰もいないのは不自然だが、……確かに人気(ひとけ)はねぇ。

 

 目の前にいるのはやつ、白色の道化師だけだ。

 シルエットこそ派手なピエロの格好に見えるが真っ白な服。

 顔にはメイクはなくあの事件の時のまま、どこか滑稽だ。

 それでいて気味の悪い薄ら笑いを浮かべてやがる。


「……どの面下げて俺の前に現れた?」


「はて、なんのことでしょうか?」




 やつは去年の事件の殺人鬼だった。

 事件の後で知った話になるが同じ学校の先輩だったらしい。

 事件ってのは変な男の配っていた魔法のカードに関する事件だ。


 やつはそのカードを利用して、……少なくとも三人は殺しやがった。


 そして俺はあの時、その中の一人の殺人現場を目撃しちまった。

 酷い吐き気がしたのを憶えているぜ。

 

 あんな狂人を生かしてはおけねぇ。




「……あぁそう言えば君はこの姿と面識があるんだったね!」




 何をいってやがるんだこいつは?


 とにかくこいつは生かしておけねぇぜ。


 俺は胸ポケットに隠していたエアガンに手をかける。




「物騒な人だね!」




 俺は構わずやつの眉間に向けて撃つ。


 この銃の正式名称「M1911ガバメント型準空気銃」、ただの玩具じゃない。

 俺の知り合いが違法カスタマイズしたもので2m圏内なら5㎝の木製の板を貫通出来るだけの威力がある。

 別に人間の体を貫いて殺せるって訳じゃないが、肉は抉れる。

 少なからず痛みで動きは止められる。

 最も、至近距離で眼球から打ち込めば脳まで届いて殺せるらしい、作成者はそういってた。

 まず動きをとめて、近づいて殺す。




 パンッ!!




 乾いた発砲音を鳴らす。




 ポン。




 しかし弾丸はやつに届くことなくやつの持っていた黒い箱に受け止められる。




「とりあえず手品を見てからにしておくれ!」


 やつはその箱を俺の方に投げてよこす。


 俺は拾わない。

 足元に黒い箱が転がる。

 先程の軽快な着弾音から箱は柔らかい素材だと考えられる。


「ならいっくよー!」


 俺のことは全く気に止めずやつは話し出す。

 相変わらず不気味な野郎だ。


「ここに君に渡した箱と同じ箱があります!」


 そう言うと先程の箱と瓜二つの箱がやつのポケットから出てくる。


 俺の前に転がるものと同じでサッカーボール……、いやそこまでは入らねぇ、丸々と太ったリンゴが入りそうな大きさだ。


「中身は入ってないでしょー!ここにリンゴをいれます!」


「糞が!付き合ってられるか!」


 考えが読まれたような気がしていらつくぜ……。

 俺は二発目、三発目と撃つがやつはふらふらと動きながらそれを避ける。


「はい!リンゴはなくなりました!」


 何事もなかったかのようにやつが再び蓋を開けるとリンゴの姿はそこになかった。




「……っち。」






 俺が舌打ちをすると足元の箱の蓋が開く。




 何も入ってなかったはずのその箱から。



 ……コロコロとリンゴ、……みるかぎり先程のリンゴ同じ色合いをしたそれが転がっていく。




「……何をしやがった?」




「はーい、瞬間移動大成功!!」




 やつはニタニタと笑い出す。


「この箱は君にあげるよ!」


「……いらねーよこんなもん。」


「これから七人にこの箱を配るから暇なら集めてみるといい!」




「バカにしやがって!!!!」




 パンッ!!




 もう一度銃を撃つ。


 しかし俺が撃った弾丸はやつの前で静止する。


 やつの周りに膜があるかのようにピタリとだ。


 ……どうゆうことだ?


 今度は箱もないのに……。


 また何かのトリックか?






「もし君がこの箱を集めれたら僕がまた時間をあけて会ってあげよう!」




「それなら う ま く 使ってね!」




 そういい残すとやつは突然俺の視界から消えた。


 俺が撃った弾丸も気付けばポトリと地面に落ちている。


 俺の足元には忌々しい黒い箱とリンゴが転がっていた。


 俺はそのリンゴを拾ってかじる。

 シャクリといい音がして意外と美味しい。




「絶対お前は俺が殺す!!」




 俺は昔の俺じゃない。こんなことには恐れない。



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