表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/40

第十四章 筑波 善財 その四

挿絵(By みてみん)


 ようやく七人の箱の所有者が集まった。


「ではまず皆さん自己紹介でもしましょうか。私から時計回りの席順でいきましょう。」


 大歳先輩が場を仕切り始める。

 この人はひきこもりの癖に対人能力が高い。

 商売やってるからなのかはよくわからねぇ。


「私は中村葉月、探偵職を営んでいるものです。まぁそうはいってもいつもは浮気調査などが主な仕事ですがね。」


 よくもまぁいけしゃあしゃあとデタラメが言えるぜ。

 あんた日頃から家でパソコンに張り付きっぱなしのくせによ。


「船頭渡、漫画家でーす。よろしくおねがいしまーす。」


 船頭とかいう女は顔をあげずノートに絵を書き殴り続けてやがる。

 俺が言うのも何だが礼儀のない女だ。

 こうゆうのが天才肌ってやつなのか?

 何でもいいが頭のおかしいやつだってのはわかる。


「私は守田美紗っていいます!!近所の高校に通ってます!」


 ついで話し出すのは守田美紗、妙に明るくってうっとうしいやつだ。

 確かに手紙を出してきた点は利用価値があるが面倒くさそうな女だ。


「私は光本と言います。専業主婦です。」


 この光本とかいう女は俺が聞き込みをした限りいい噂はない。

 注意しなくちゃな。

 面倒くせえが次は俺の番だ。


「……筑波、学生だ。」


 俺も大歳先輩みたいに偽名を使いたがったが同じ学校に通う守田がいる以上意味がない。


「ワシは山本玄道斉じゃ、よろしく頼むぞ!!がはは!!」


 俺の横のじじぃは守田よりうるせぇ、大歳先輩と席を変わりたいぜ。


「……網谷っていいます。大学生です。」


 目立たねぇ端の男は大学生ってことくらいしかわかってねぇ。

 おどおどしゃべりやがってむかつくやつだ。




「では自己紹介も終わりましたし改めて我々が今回集まった理由についてまとめましょうか。」




 大歳先輩は注文したミルクティーを片手に語り出す。

 気取りやがって、胸くそわりぃぜ。


「今回我々が集まったのは箱の中に二つのものが送りつけられてきたからです。」


 あいつの聞き慣れない妙な丁寧口調も聞いてて苛つくぜ。


「まず一つ目はバラバラの死体、二つ目は手紙です。」


 大歳先輩の言葉に元々静かだったこの部屋に改めて緊張感が漂う。

 船頭とかいう女の筆音だけがシャカシャカとうるせえ、いい加減筆を止めろよ。


「まず死体について、ご存じない方はいませんか?」


 大歳先輩の問いかけに誰も答えない。

 つまりここにいる連中は何かしら箱をあけた、もしくは箱を使ったと言うことだ。


「……それでは皆さん目撃しているようですね。」


 大歳先輩は確認を済ませると少しだけ口角が上がる。

 あの糞野郎、何が楽しいってんだ?


「死体について私は一部しか確認しておりませんが、恐らく幼稚園児程度の子供であったと推察できます。」


 大歳先輩がそう言うとその場にいた全員、いや船頭とか言う頭のおかしい女以外が顔を引きつらせる。船頭とかいう女は寧ろ嬉々とした表情をしてやがった。


「そして私が調べたところ近くの幼稚園で一人行方不明になっている女子がいるようです。」


 それを調べたのは俺なんだがあたかも自分の手柄のように話しやがる。


「彼女は明道明美、まだニュースにはなっておりませんが失踪して三日も経ちますしそろそろ報道される可能性があるでしょう。」


「そして彼女の死体の後にはいっていた手紙、正確には私の出したものと守田さんが出したものの二種類ですが、この手紙の差出人である守田さんは犠牲者の明道ちゃんを知っていたんですね。」


「……はい。」



「よろしければこの場に集まった皆さんに説明していただけますか?」



「うんうん!私聞きたいですー。」


 船頭とかいう女はようやく筆を止め便乗する。

 その言葉に光本とか言う女が船頭をにらみつける。




「……はい、なら話しますね。」




 明るくうっとうしかった守田は静かに話し出す。


「……あけみちゃんとは、……幼稚園児との交流ボランティアで出会ったんです。」


 守田は涙声になっていた。


「……あけみちゃんは最初は私達に警戒していて、……とっても可愛い子で、……でも私が手をひいたら、ちゃんと遊んでくれて、……帰りには手を振ってくれて、でもその手が冷たくなっていて……、おい……。」


 守田はそれだけ言って黙りこくった。


「……大丈夫ですか守田さん?きつければもういいですよ?」


 大歳先輩は笑顔で語りかける。

 俺はこの善人ぶったように見える笑顔の理由がやつの趣味からくるものであることを知っていた。

 やつは苦しむ女の声が好きなのだ。


「……大丈夫です、中村さん。」


 守田は落ち着きを取り戻し話し出す。


「……とにかくあけみちゃんはいいこで、それでいて警戒心の強い子でした!!そんなこが誰かにあんなにされたなんておかしいんです!!」


 守田は強い語気でそう言い張る。


「なるほど、ありがとうございました守田さん。」



 

「守田さんの言うことが正しければ今回の事件は恐らく誰かが意図して明美ちゃんを殺害し我々の持つ箱に詰めたものと考えられます。警戒心の強い子だったらしいですしね。」


「容疑者はこの箱を持つ我々七人、もしくは最初に我々に箱を渡してきた人物。」


「皆さんで協力して犯人を見つけましょう!」


 俺だけはわかる、あいつじゃねぇ。



 

 この場にいる誰かだ!!




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ