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第九章 大歳 利樹 その二

挿絵(By みてみん)


 やはり筑波は器用な男だぞ。

 私が箱の持ち主を探るように依頼してから早速成果があった。

 一週間の調査の結果、やつからの報告で箱を持っている人物は七名いることがわかった。

 現状あのピエロの言った通りだぞ。




 まず一人目に守田美咲、筑波と同じ高校に通う一年生の様だ。


 父と母、そして年の三つ離れた兄との四人家族のようだぞ。

 私が箱に入れた盗聴器、そして筑波に調べてもらった家の見取り図を照らし合わせた結果、あの家族の中で守田美咲が箱を所持していると考えられるぞ。


 筑波に学校での様子を確認してもらったところ、どうも保育士を志望する子供好きの少女で積極的にボランティア活動に参加しているらしい。筑波の知人に面識があるものがいた様で明るくて活発な娘と聞いているぞ。


 もう一つの特徴として彼女は中々の大食いらしく毎日他の人の三倍の量の弁当を持ってきているようだ。その割には写真で見る限りは細身で華奢な印象をうける。

 小学生の頃を知る人に訊ねたところ、給食の食べ過ぎで喉を詰まらせ、病院に運ばれたことがあるらしい。




 次に光本歌蓮、この街の一軒家に住む主婦だ。夫と子供が一人いるようだが箱の稼働時間を考慮して日中家にいる彼女が箱の持ち主だろう。

 この女は一般的な主婦の様だが近所からの評判はあまりよくないらしい。

 息子の幸太が幼稚園でも問題児で他のママ友から距離を置かれているようだ。

 まぁそうはいっても土日に筑波が尾行して近所の井戸端会議の様子を盗み聞きして手にいれた情報だから有力な情報ではない。




 次に船頭渡、彼女については有名人だ。

 住居を突き止めると色々とわかった。


 去年公開されていた映画「黒いライオン」の原作者で港町碇のペンネームで活動している。

 この前峰子先生がDVDを借りていたので私もネットでダウンロードした。


 今回はちゃんと合法的にだぞ。


 作品の内容としては女子高生がストーカーに狙われるサスペンスものでヒロインと幼なじみ警察官との恋愛要素が強く峰子先生も一時はまっていたようだ。

 主題歌をよく口ずさんでいたのを私は覚えている。

 私が原作を見た限りでは陳腐な恋愛要素よりもストーカー側のリアルな心理描写、レイプシーンの緊迫感にリアリティがありメディア化に伴って丸くなり味気ない作品になってしまったように感じたぞ。

 そんな作品の作者である彼女は最近は連載を持っていないようだ。

 筑波がファンを装って編集社に電話で訊ねたところ作品の持ち込み自体はあるもののいまいちなようだ。

 SNSでもスランプだと言っているようで多くのコアなファンがいるものの活動は低迷している様子がみられるぞ。




 次に山岡玄道斉、うちのような一人暮らしの安っぽいアパートに住む初老の男だ。

 筑波の尾行の結果、仕事は定年退職しパチンコとキャバクラに通って日々を送っているようだぞ。

 箱に大量に入っていたフロッピーディスクに彼の仕事先と思われるデータがいくつか残っていたぞ。

 ウイルスでも仕込んでいるのかと警戒して漫画喫茶のパソコンでデータを見たがロックもかかっていなかったし大分警戒心の薄い男の様だ。

 筑波に渡してあるメイクセットで変装させてパチンコ屋まで尾行してもらったがその時はぼろ負けしていたぞ。




 最後に網谷八雲、彼はこの町から離れた場所にある工業大に通う学生だ。

 彼についてはまだまだ調査不足だ。

 今後の筑波の連絡に期待しよう。




 とりあえず私は七人の箱の所有者からいかにして箱をいただくか考えている。


 筑波に盗ませるのも簡単だがやつの様子を見る限り易々と渡してはくれないだろう。


 ……それなりに長い付き合いだ。

 今回の依頼に対して妙に積極的な様子を見るにやつもこの箱を集めようとでも思っているのだろう。


 私にはわかっているぞ、筑波。


 だからこそ、筑波も出し抜いて箱を集める必要がある。

 私はそう思ってGPSタグと私お手製の小型の盗聴器をあれから筑波に内緒で多めに箱に入れた。

 一つでも多くの情報を集める必要があるからだ。


 私のこの実験の結果、新たな箱の特性に気付いたぞ。




 それは一度箱に入れたものは同じ箱に戻ってこないということだぞ。




 私の箱に入れた機器達は私の元に返ってこなかったのだ。

 GPSの足跡を辿る限り私の機器達は箱の所有者の元を転々とした後、必ず誰かの箱から動かなくなる。

 その結果いくつか私の機器達は箱の持ち主達によって破棄されてしまっている。


 機器の見た目はおもちゃに偽装させてあるから見た目でばれることはない。

 ぬいぐるみに偽装させたものが守田美紗の部屋に飾られているのは幸いだが他のものはゴミにだされてしまったのだ。


 勿体ないのと他の誰かにばれるとまずいので筑波に回収を頼まなくては……、困ったものだ。


 それとこれについては推測だが箱の中に別のものがあるとき、新しいものが入ることはないようだ。

 これもGPSのおかげでわかった。同時に二つのGPSが同じ場所に存在しないことからそう考えられる。




 しかしこの箱は本当に面白い。現代の科学では説明できない未知の力だぞ!




 筑波が去年所持していたというカードもこのようなものであったと思うと去年の事件に参加出来なかったのは非常に歯がゆいぞ!


 警察が絡んで来るとなると私は距離を置かないといけないので、ある意味では学生達の失踪事件が絡んでいる去年の事件には関わるわけにはいかなかった。

 そういう意味では正解であったがこんなに面白いものを見落としてしまうとは、惜しいことをしたぞ。


 オカルトなど興味はなかったがこれからはそういうものも取り扱うようにするぞ!!



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