第3章 それは決意2
「はぁ、ったくなんなんだよ・・・」
会場に半ば強引に戻された永久。
会場はまだ熱は覚めていないようだ。
「すいません。お水下さい。」
係員に水を頼んでいる永久の後ろから声が聞こえた。
「やあ、どこに行っていたんだい?直接お話をしたかったんだ。今から師匠・・・いや、師匠達となる身としてね。」
そこには赤みがかった褐色の髪、瞳は狼のような明るい灰色の青年が立っていた。その後にも整った顔立ちの男性や女性が並んでいる。だが、皆武器を携えていたのだ。
「僕はアーサー。3ヶ月の間だけど君たちをパワーアップさせるために頑張らせてもらうよ!」
「私も頑張らさせていただく所存でございます!」
警戒していた永久だが、いきなりどこからともなく聞こえる男性の声にかなり驚いているようだ。
「あははっ!それはびっくりするよね。正体はこの人だよ。人じゃないけどね。僕もだけど。」
アーサーは腰に携えている赤い鞘に収められた美しい剣をポンポンと叩いた。
「これは、これは、申し訳ありませんでした。まだ、ご紹介されていませんでしたね。私はエクスカリバー。〘精霊〙でございます。そしてアーサーも。と言うよりも後ろの方々、〘円卓の騎士〙は全員〘精霊〙なのですがね。」
「って、ことは・・・あんたら、あのブリテンの・・・」
「さようでございます。短い間ではございますが精一杯頑張らせていただきますよ。」
「あっ、ありがとうございます。」
エクスカリバーの丁寧な言葉につられ、永久もしっかりと頭を下げ礼をしている。
「もぉー、ずるいよ!アーサー達ばっかり!私だってお話したいんだから!!」
アーサーの横からひょこっと小柄な女の子が顔を出した。
「ユーウェインね!ユーウェインって言うの!よろしくね!永久ちゃん!!」
永久の手をブンブンと振りながら握手をしている。永久は若干引き気味だ。するとまたどこからか声が聞こえる。とても雄々しい声だ。
「私はライオネル。もうここまで言えばどれが本体かはわかるであろう。」
「これこれ!これだよ!」
ユーウェインは両手を永遠に見せる。その手には手の甲の部分にライオンの横顔があしらわれた白銀の篭手を付けていた。
そして急にバンバンと肩を叩かれる。
「うわっ!」
またもや驚く永久。
「ごめん。ごめん。俺の名前はケイ。よろしくな!!そんでもって!こいつが!」
そしてケイは後ろを向く。そこには竪琴が背負われていた。
「私!エラトー!!よろしくね!!」
エラトーという竪琴は楽器の精霊だけあってとても透き通った女性の声だ。
「では、次は私ですね。」
すると細身の男性が出てきた。
「私は、ベディベア。見てくれよ、逸話のせいでこんななりさ。」
ベディベアには右腕がなかった。
ベディベアは振り方を間違ってしまったと言わんばかりの顔だ。
永久もなんと言っていいか戸惑っていると。
「そんな事言うなよ!隻腕は、お前の個性!片腕で敵と渡り合える何んてそうはいないぜ!それに、片腕で槍を操るなんて!めちゃくちゃかっこいいじゃねーか!!」
「ありがとう。ブリューナク。」
ベディベアはすこし照れくさそうだ。
「ああ!そうだ!俺ブリューナクっうんだ!よろしくな!!後ろの槍な!槍!」
ブリューナクと呼ばれた珍しい5つの刃を持った槍の精霊はとても暑苦しいそうな男性の声だ。
「最後は私ですね。まだ、仲間はいるのですが。」
すると長身の男性が手を伸ばし永久に握手を求めてきた。
「私は、ランスロットよろしくお願いしますね。」
ランスロットは長い刃を持った剣を携えていた。
「そして、私はアロンダイトよ。背中の剣ね。大剣じゃないわよ。あんなにごつくはないからね!」
アロンダイトは女性のようだ。すこし大剣に因縁でもあるのだろうか?それとも大剣は大きいから大剣と呼ばれたくないのだろうか・・・
「そんなこんなで色んな人がいるから退屈はしないと思うよ!」
アーサーは無邪気な笑顔を見せる。
「アーサーそろそろ。」
「あっ、そうだね。」
エクスカリバーがアーサーを何故かせかしているようだ。
「どうかしたんですか?」
永久がアーサー達にせかされている理由を聞こうとする。
「あぁ、もう帰らないといけないんだよ・・・」
アーサーは肩を下げる。
「そんな、泊まってもいいんじゃないですか?」
「いいや!僕達には国を守るという使命があるからね!僕はあの人達の笑顔が大好きなんだ。」
アーサーは笑みを浮かべ拳を握る。
周りの騎士も笑みを浮かべている。
永久はその時、何故かとても愛おしいものを感じた。そしてこの世界を絶対に守らないといけないとも。
「そうだ!巫女さんが、1人でベランダに出て行ってたよ。僕達が行くより、君の方がいいと思うから行ってみて!」
そして会場をあとにするアーサー達。
「あっ!」
ユーウェインが振り向く
「シャルちゃんの事もよろしくね!!バイバイ!」
ニコニコしながら手を振るユーウェイン。
そして、永久は円卓の騎士と別れマリアのいるベランダへ向かうのであった。
「おい、マリアなにしてんのっ・・・」
そこには頬を濡らすマリアの姿があった。