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魔王との戦争を嫌がる人、したがる人


 ファンタジー世界ではほとんどの場合、争いが起こっています。

 彼等はいつまで戦争を続けるのでしょうか。戦争は落としどころ、着地点が重要になってきます。


 敵対勢力としては魔界からきた魔王か、凶悪なドラゴンなどの何かしらのモンスターである場合が一般的です。

 何度も書いていますが人類に共通の敵がいる場合は、国家間の状況はわりと穏やかになっています。



 人類は勇者一行や騎士団、冒険者などをつかって、どうにか魔王と戦おうとしています。


 人類と魔王が戦争する時、どのような目的をもって戦うのでしょうか。



 史実で戦争が起こる場合、基本的には敵の土地を奪う事が重要な目的になってきます。

 隣の領主の土地や、交易流通を守る砦の奪取、富を生む都市、資源を産出する土地、工業地帯等、何かしら土地を奪うことが大事になってきます。宗主国として認めさせる、属国化なども同じようなものでしょう。


 ところが魔王が魔界にいる場合、戦争に勝っても魔界の土地しか手に入りません。魔界をもらったところで困るでしょう。魔界はどんな環境かわかりませんし、いつ魔物が攻めてくるかわからないのです。

 魔王との戦争に勝った人類が、厄介払いも兼ねて勇者が魔界の一部の領地を辺境伯として就任する、という話を読んでみたいところですが、そうでもないなら神にでも封印してもらうしかないでしょう。


 魔王と戦争する場合、国家間での戦争するのと違って、土地を期待することはできません。

 レコンキスタのように、魔王に占拠された地域を解放する場合は別ですが、それでも魔界から魔王が攻撃してくるのであれば、最終的には困ってしまいます。ちょうど二度の元寇で傾いた鎌倉幕府と同じようなものです。


 富や資源に期待できなければ、領主たちは魔界に攻め入ることを躊躇するでしょう。魔界との戦争は慢性的なものになっていきます。


 しかし世の中が不安定という状況は、騎士にとっては悪い話ではありません。

 武力を担保にその地位を確保しているので、武力が必要になる世の中であってくれた方がいいのです。

 武力が必要ではなくなる、騎士の持つ戦闘能力が戦場で役に立たなくなると、騎士は称号になってしまい、職業軍人としての騎士はいなくなってしまうのです。


 冒険者にとってもそうでしょう。

 農村近くにポップするゴブリンを倒すことで生計をたたえる冒険者がいるとすれば、魔界の影響力がなくなってゴブリンがいなくなってしまえば、職を失います。

 仮に冒険者の社会的立ち位置が弱ければ、魔王討伐賛成派の声に負けることでしょうが、ファンタジー世界の冒険者ギルドは非常に大きな力を持っているので、そのようなことにはなりそうにありません。


 防衛力を持った商人にとっても同じ事がいえます。戦争が起これば戦争特需が起こります。

 モンスターの素材や武器防具、その他もろもろの消耗品でお金を稼ぐ商人は、おそらくモンスターがいてくれた方がありがたいことでしょう。

 魔王がいなくなって世界が平和になれば次の戦争で儲けることでしょうが、既に構築したルートは完全に破壊されることになるので、できれば戦争は続いてほしいところです。

 世の中に必要なものを握る商人ギルドは大きな力を持つので、ファンタジー世界で冒険者と関わり対モンスター用の加工販売ルートを持っている商人ギルドは、やはり大きな力を持つことでしょう。


 では宗教勢力はどうでしょうか。彼等の持つ教義からして、魔王の存在は許すわけにはいきません。十字軍を組織したがったローマ教皇のように、魔界への侵攻を積極的に扇動するかもしれません。

 しかしその一方で、不死系モンスターに対する威光という実際的な威力を持つ宗教は、やはり魔王がいてくれた方が権力を握りやすいでしょう。魔王を倒すための派兵をすることで、各王家に対する影響を強めることができますが、実際倒してしまうところまでやるかどうかは分かりません。

 勇者を召喚する王や教団は魔王を口実にしています。逆にいえば勇者を召喚する大義を手に入れるには、魔王が存在している必要があるのです。

 神託を受けて立ち上がる聖女は鉄板ですが、神に真摯に仕えつつも信仰を集めるために魔王を利用しようとするリアリスティックな司祭が出てきても良いでしょう。



 このように、中世ヨーロッパが戦乱の世を長い間送り続けてきたという背景もありますが、ファンタジー世界の各階級は魔王との決定的な決着を避ける可能性がでてきます。

 唯一農奴にはいいことがなさそうので、決着を望むかもしれません。しかし彼等は力を持ってないので、いくらそれを望んだところでかなえられるはずがありません。農奴の気持ちがわかってくれる勇者が倒してくれることに期待するしかないのです。



 史実近世のロシアやインドの帝国、中東のいくつかの武闘派がそうだったように、上層階級が権力と武力を持っていると、世の中は膠着状態になります。

 ヨーロッパがその呪縛から解き放たれたのは、支配地域が拡大したり兵器が積極的に開発されることで、どの勢力も大きな権力を持つ可能性がでてきたからです。


 ファンタジー世界の住民はこぞって魔王討伐を望みますが、実際世の中が本当にそのように動くかはわかりません。

 神々は神託だなんだといって人間を魔界に派遣することに躍起になることでしょう。神がファンタジー世界に現れるのは仕方のないことであり、思い通り動かない人間を天界から眺めつつ、世知辛い世の中だと感じるのかもしれません。

人間の土地を魔王から解放するために戦うが、魔界で人間が勢力を広げることはできない、という前提で話を進めています。今回はいつにもまして勢いに任せて書いてしまいました。

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