魔法と法律について
前回は、法が社会を作り出すから、魔法があったところで社会の雰囲気が大幅にかわることはないだろう、と考えました。
では逆に、法律的に禁止される魔法、というのは存在するのでしょうか。ファンタジー世界の登場人物は好き勝手に魔法を習得し、それぞれのタイミングでぶっぱなしてますが、もし法律があるとこれが禁止される可能性はあります。
残念なことに、筆者は法律の専門家でもないし、法制史に明るいわけでもないので、中世という世の中に置いて、どの程度人間社会が魔法を容認するのかという点については、考えることができません。
そこで人間がしてはいけないことを簡素にまとめたものはないかと考えると、モーゼの十戒というものがあります。昔から大きな宗教に採用されてきているので、中世を考えるうえでもなかなか信用のおけるものでしょう。
前半は神と人との関係を説いたものですが、後半は道徳観や刑法の根幹である、とされています。後半を少し見てみましょう。5つ目と最後の一文は道徳観なので省きます。
--以下、wikiから転載--
殺人をしてはいけないこと
姦淫をしてはいけないこと
盗んではいけないこと
偽証してはいけないこと
--ここまで--
これらをみると、たしかに我々がやってはいけないこと(するべきこと)の大半は、ここに詰まっていると言えそうです。
つまりそれを助長するような魔法は法律的に禁止されているのかもしれません。
殺人をするための魔法、例えば即死魔法はよく禁忌の魔法とされていますが、根拠をたどるならここにあるでしょう。
姦淫してはならない、ということは、魅了魔法は禁止でしょうか。精神に影響を与えるようなものは制限されていてもおかしくありません。
盗みを助長する、というと少し想像がつきにくいですが、錠前を解除するような魔法が該当するでしょう。
偽証を禁止するために、どのような魔法が制限されるのかはわかりません。例えば幻覚魔法などの、虚偽の情報を与える魔法は該当するでしょうか。物を複製するような魔法も禁止されそうです。
こうすると、ゲーム的にいう補助魔法はほぼ禁止されてしまいそうです。
登場人物が国家権力に認められた組織に所属していたり、法も道理もないような敵集団であれば、法を順守する必要がなくなるので問題ありません。法律について言及することも必要ないでしょう。
しかし大多数の魔法使い(例えば冒険者)の素行を統制するには、このような魔法は法律で禁止してしまうのが良さそうです。
もちろん、街中で魔法をぶっぱなすのがタブーだ、というごく当たり前の道徳観念が生まれるように、統治者は努力すべきでしょう。しかし直接的に禁止にすることで生まれる観念というものもあります。
また、このような設定をちらつかせることで、「なんで幻覚を見せる能力があるのに犯罪が横行しないの?」などといった問題を封じ込めることができる、かもしれません。そのような問題がまず出るかどうかは別として。