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幻想歴史読本 ~ファンタジーを考える~  作者: 走るツクネ
モンスターにまつわる話
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植物モンスターについて 書き手の事情

 植物がファンタジーでも立ち位置が大きく変わらないことから、いくつか考えていきます。

植物系モンスターについてのあれこれ

 今回は植物系モンスターを通してみることができる、現実世界、ファンタジー世界のあれこれを考えていきたいと思います。

 植物は人間にとって食糧、資源として利用されるものですので、モンスターとの境目があやふやです。モンスターの分類で見た場合、一番付き合いの長い種族だろうと考えることもできます。


 特徴を上げると、いくつか他のモンスターと異なる性質が見えてきます。



【資源として】


 人間は全ての植物を利用しています。毒となるものも薬として利用しようとするし、辛いものも苦いものも食べます。日本人は小動物も食べないような栃の実すら食べようと努力します。

 麦やジャガイモは何人もの人を殺しましたが、結果的には対策する形で克服されてしまいました。


 ファンタジー世界でも、聞いたら死ぬ叫びを上げるというマンドラゴラを薬として扱う時もありますが、モンスター化した植物は薬毒くらいにしか利用されないようにも思えます。

 対して木材としての利用はあまり見ません。そこから考えると、木材になる植物は普通の木々であり、それを浸食してしまうかもしれない植物モンスターの駆除は優先されるべきものだったという可能性があります。


 火属性が魔法の代表格のようなイメージがありますが、対植物用に発展した経緯が魔法の歴史にはあるのかもしれません。



【創作物における植物、モチーフについて】


 基となる植物は、ラフレシアのような大型の花、食虫植物、つる性の植物、キノコや粘菌などの菌類、大きな木程度です。

 あとは野菜系のモンスターがちらほらいますが、どちらかといえば独創的なモンスターに属することが多く、定着はしていない気がします。


 この種類の少なさは、人間は木は木、花は花、などというように大雑把に認識していることの表れなのかもしれません。

 特徴的な性質を持つ物はモンスターになりやすいと思うのですが、動物に比べて植物にはモチーフが少ないという事は面白く思います。


 先述のとおり、資源として植物のことをみるので、ミスリルやオリハルコンといった架空の資源と同じように処理されている場合も多くあります。魔法の木の実や不思議な草花など、そういったアイテムはたくさんありますが、どれもモンスターというくくりではありません。

 例えば、花粉症に苦しむ人にとってはスギなどはモンスターだろうと思いますが、植物を資源として見てきた人間の価値観があるように思えます。



【勢力範囲の拡大について】


 植物は海流、風、虫、小動物、鳥、さらには人間までも利用して、勢力を拡大してきました。

 いくつかの植物系モンスターも同じような手段を取って勢力を拡大しようとするでしょう。


 しかし人間の勢力範囲に生きることは過酷です。


 以前にも書きましたが、人間は森を破壊することでその勢力を伸ばしているのです。イタリアにはほとんど森はありませんし、ドイツの黒い森もほとんど植林によるものです。


 田畑にある植物も都市にある植物もすべて人間の手によって管理されており、モンスターが入り込む余地はないでしょう。むしろ畑を作るために大胆に焼き払うのです。


 植物系モンスターにとってはたまったものではないでしょう。


 

 このように、植物系モンスターは人間とことごとくそりが合わない生物です。植物系モンスターが人間を利用して勢力を伸ばすにはどうしたらいいでしょう。


 一番よさそうなのは幻覚を使うという事です。


 感覚をいい方向に勘違いさせる幻を纏うことはモンスター化した植物にとっては最大の武器でしょう。


 美味しいと感じさせたり、美しく見せたり、良い匂いだと感じさせることができれば、人間は勝手に増やしてくれます。


 もしそれが害をなすものだとしたら、じわじわと勢力を伸ばすモンスターはホラーのような展開になって物語が暗い色になりそうですが、植物という性質とモンスターという性質を掛け合わせて考えるとこれが合理的な気がします。


 必ずしも麻薬のようなものである必要はありません。ソメイヨシノやバラのようになってもいいかもしれません。

 そうするともうモンスターであるか定かではありませんが、人間と戦う力がない以上、半ば寄生する形をとって勢力を伸ばすのが一つの形でしょう。



【植物と妖精】


 モンスターは人間に害をなそうと積極的に行動しますが、植物系のモンスターは根っこを張っており、受動的な立場にあるのが特徴だといえます。


 植物は動かない物であり、もし動いてしまえば動物になってしまいます。


 そんな特徴を持っている手前、意思を持たせることが難しくなるでしょう。また、もともと目や口がないわけですから、それらをくっつけて喋らせようとするとどうしてもマスコットのようになってしまい、人に仇をなすモンスターとして描くことが難しくなってきます。


 植物自身に意思表示をさせることが出来ないとなれば、やはり妖精という小道具を用いてそれを表現するしかありません。森に妖精がよく出現するのはそのような流れ、いきさつがあったかもしれません。



【強力な植物モンスター】


 一方で色々無視すれば、強力な植物モンスターを物語上で描くことは、他の種族のモンスターに比べて比較的簡単でしょう。


 なにしろ弱点がはっきりしている上、動かないので巨大化させ放題です。生命力の象徴でもあるわけで、無尽蔵の体力をもっていたとしても不思議ではありません。身体の大部分を地中に隠せるという特徴も持っています。


 粘液のようなものを纏っていて火炎を無効化する、伸縮性があるのですべての物理攻撃を無効化する、なかなか死なない、など説得力をもった例は挙げたらキリがありません。

 知られずに都市に種を落とし、都市の下に大きく根を張る植物系モンスターが、いきなり牙をむくという展開も書きやすいでしょう。他にも洞窟に擬態する、というのはよく見る手段です。


 生物学的な身体構造に縛られがちな多くのモンスターと違って、植物系モンスターは動かしにくい、意思を持たせにくい、ということさえクリアできれば、一番自由度の高いモンスターに変わることができるのではないでしょうか。


 先述のとおり、種類としては植物系モンスターは多くありません。

 逆にいえばそれだけ未開拓地が広がっているという事かもしれません。


 あと人工系生物、巨人系生物、悪魔系生物について書いて終わりにしようと思います。

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