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魔法について 主に魔法のルーツについて

 魔法は現実には存在しない架空の技術です。ファンタジー世界でどういう風に発明され発展してきたのでしょうか。

 様々な角度から魔法のルーツを探ります。

 第三回目は魔法について書きたいと思います。


 魔法はファンタジー小説には必ずといっていいほど登場し、現実世界では考えられないような超常現象を引き起こします。主人公の武器にも枷にもなり、生い立ちに密接にかかわっているような描写をされることも多い魔法。

 魔法の扱われ方は、そのファンタジー小説の色を決めるといっても過言ではありません。


 ファンタジーの代名詞といってもいいでしょう。

 そんな魔法のルーツを探ることで、ファンタジー世界の歴史を考察できるかもしれません。



 ファンタジー世界の人類が魔法という技術を手に入れたのはいつのことでしょうか。これは小説ごとに記述が違っており、説明がない場合も多いと思います。


 思いつく(思い出せる)限り列挙しますと、神が与えた、古代文明の遺産、神代の種族に人類のルーツがある、進化の過程、文明の興りとともに発明された、修業を積んだ僧から普及した等々があるでしょう。


 魔法やモンスターの存在は人類のルーツにかかわる点でもあります。

 モンスターの存在があるので、現実世界と同じように人間が猿から進化したかも定かではないのです。


 ここでファンタジー世界の神と人間の関係について考えはじめるときりがないので、とりあえず人類は現実世界と同じように進化したと仮定します。


 もとよりその技術を持ってないとすれば、どのタイミングで魔法の存在に気が付くのでしょうか。

 これを考えることで、魔法を行使する方法やその変遷も推し量ることができるでしょう。


 火熾し、巨大生物との戦闘、祭典、祈祷や精神統一、占い。人類の歴史には神秘的で謎めいた要素が沢山あります。



--魔法を誰が使うか--


 まず初めに見ていきたいのは、どの人間社会の階級に魔法が普及しているか、という事です。

 柔軟な社会でなければ、人々が従事している仕事は所属階級に対応します。農業には農民が、戦争には騎士がという具合であり、封建制社会であればなおさらです。


 そして技術は発見された分野でまず発達し、のちに他の分野に伝播します。逆にいえば普及している範囲を見ることで起源を探ることがある程度可能になります。


 要するに、魔法を使っている階級がわかれば、使われている分野もわかり、そうすれば起源もわかるだろう、ということです。

 どの階級が魔法を利用しているか、ということについては、いくつかパターンがあるでしょう。



1、貴族にしか魔力がなく、魔法が扱えることが貴族の条件である。

 この場合、魔法はごく一部の家系のみが扱えればよかったのでしょう。昔から民衆をまとめる位置にある家に伝わっていることから、祈祷や占いなどから発展していったのだと考えられます。

 当然生活に影響するほど魔法は浸透しておらず、そうであれば多岐にわたる発展はないでしょう。

 中世ロシアのように、貴族のみで構成された精鋭部隊が、魔法による戦闘技術を磨いたのかもしれません。


2、全市民が魔法を扱える。

 この場合、そうならざるをえなかった状況に社会があったと考えられます。

 魔法は原始社会の時からモンスターとの抗争で使われていたことでしょう。魔力を扱うのは割と容易、もしくは早期に発見されていたと考えられます。


3、治癒魔法が宗教関係者にしか使えない。

 こういった事例は史実にもありますが、神秘的な事象が権威の為に秘匿し続けてきたのかもしれません。

 仕組み自体が普通の魔法とは違って、宗教団体の研究分野として、技術が独占されているのかもしれません。呪術的な意味合いを持つところに発祥があれば、こうなる可能性があります。


 このように、ファンタジー世界の中世において、魔法がどの階級で使用されているかをみれば、ある程度魔法のルーツを探ることはできます。



 多くのファンタジー世界では攻撃するための魔法が異様に発達しています。

 竜巻を起こしたり、雷を落としたりと、もはや自然を意に操るレベルにまで達している場合も多いと思います。


 しかしながら、その技術はモンスターを殲滅することにのみ利用されています。


 こういった現象はその技術が発見されてから日が浅い場合によく見られます。他の分野に広まるにはある程度時間がかかるのです。



--いつ魔法が生み出されたのか--


 そこで戦闘魔法のみが発達したという現象の原因をいくつか考えてます。


1、魔法という戦闘技術を得るまで、人間はモンスターに安定して勝利を収められずにいた。攻撃魔法を手に入れた人類は、その研究に力をいれて生活圏を広げ現在に至る。


2、戦闘魔法がなくてもある程度文明圏は守れていたが、モンスターの大規模侵攻の際魔法が開発されると、魔法が編み出され、瞬く間に発展した。


3、ローマ帝国に相当する魔法が発達した文明が一度滅ぼされ、人類は文明を失い暗黒時代に突入。迫りくるモンスターの大群に対して必死に抵抗をつづけるかたわら、攻撃魔法の復旧を急ぐ。


 1つ目の説は、すこし無理があるでしょう。というのも、ファンタジー世界の文明は中世程度まで発達していなければならないのです。

 常に生存が脅かされる状況では余剰生産物など生まれるはずもなく、ファンタジー世界レベルの多様性は生まれないでしょう。中世の水準を得るには、それ相応の余剰生産物がある社会が持続しなければなりません。

 錬金術の研究によって魔法が発明されたとも考えられますが、その錬金術が発達するには社会が安定しなければなりません。


 2つ目の説はどうでしょう。この場合、魔法技術がすでに開発されていたものの、戦争に転用する発想がなかったのかもしれません。

 冷蔵や保温のような日常生活のための当たり前の技術として魔法が細々と存在していたとすれば、それを戦闘技術に使うことを思いついた時は人類にとってブレイクスルーに近いものだったでしょう。


 個人的には3つ目の説を推したいとおもいます。

 始まりは何だったにしろ、魔法発見から長い時間を経て、ある程度生活全体に魔法が浸透した文明があって、それが崩壊したことで魔法技術のレベルが低下してしまったという説です。

 そう考えると、戦闘目的で使用される魔法の説明が付くと思います。



--魔法をどうやって使うか--


 視点を変えて、魔法の発動方法から考えていきたいと思います。魔法の発動方法には3つのタイプがあります。


 1.体内の魔力を練って、外に放出する方法。

 2.呪文を唱えて、望む事象を引き起こす方法。

 3.何らかの方法で魔法陣を書き、そこに魔力を込めることで効果を得る方法。


 この3つは同じように見えて全く違うルーツを考えることができます。


 体内の魔力を練る方法は、己の中の状態を探るという瞑想や気功といったものに似ています。東洋的宗教や哲学に寄った考えでしょう。ある程度社会が発達している必要があります。


 呪文を唱える方法は、祈祷がルーツなのではないのではないかと思います。

 というのも望む事象を得るために必死になって声にして出す、というのは雨ごいや神頼みの際の祝詞や真言に近いと考えられるからです。集落が形成されて指導者が誕生した後でしょう。


 魔法陣を利用する方法は、記録や占い、もしくは数学がルーツでしょうか。

 象形文字や図面が偶発的に魔力的な反応を起こすことも想像しやすいと思います。



 このようにどれくらいの層が、どういう分野で、どのような方法で魔法を使うかということを見ることで、魔法のルーツを考察できます。

 場合によりますが、ファンタジー世界の中世に至るまではやはり古代文明の存在がありそれが崩壊した、と考えるのが説明が付く事が多い気がします。


 その理由は文化面においてあまり魔法が活用されていないからです。

 文化、つまり音楽や美術、スポーツなどに文明の恩恵が回るには、社会にそれ相応の社会の余裕と技術の発展が必要だからです。文化の発展に対する考察はこの後何回かすることになりますが、多くのファンタジー世界で文化的な要素に魔法の存在が見られないというのは、魔法の存在を考えるカギになることでしょう。


 崩壊後に一部の伝承技術と、必要とされた後発技術がごちゃ混ぜになった状況が、ファンタジー中世の魔法事情なのかもしれません。



 さて、ファンタジー世界の中世において"貴族のみが魔法を使えている"という場合、ひとつの歴史を作れます。

 以下は筆者の貧しい空想なので、話半分に読んでほしいとおもいます。



 定住生活がはじまり農業技術が進歩したころ、指導者は豊作や治水について考えなければなりませんでした。


 雨が降らなければ雨ごいをし、気温が上がらなければ日照りを願い、氾濫が起きれば土地の隆起を祈る。

 そうして口にだして祈りをささげる行為が魔法の原点です。


 規模も効果も代償も桁外れなこの魔法は、原典魔法として伝わりました。指導者は命を賭して原典魔法を人類の発展に行使してきました。


 やがて社会に余裕が出てくると原典魔法は改良され、指導者は小規模ながらもより安全に魔法を使うことができるようになってきます。


 指導者の証がこの魔力の制御能力であり、指導者の血筋はその力を磨き、伝え、都市経営のために捧げてきました。それは巨大な繁栄をもたらし、帝国による平和は未来永劫続くかのように思えました。


 しかし、そんな淡い夢はモンスターの大規模侵攻によって霧散してしまいます。


 都市防衛をするために指導者は戦闘指揮の傍ら、秘儀とされていた原典魔法を扱うものの、多勢に無勢、帝国は滅んでしまいます。


 大規模侵攻を逃れた指導者の子孫は、各地に散らばった難民を集め原住民と血を交わらせながらも、再び村を興します。


 指導者の子孫達はやがて領主となり、魔力を扱う血筋が貴族階級を占めるようになります。


 継承権を持たない貴族の子弟は戦闘技術を磨き、略奪を仕掛けてくる蛮族やモンスターを倒す役割を担いました。

 こうして騎士階級は生まれます。その戦闘能力は絶大であり、またその地位を守るためにさらに攻撃魔法の研究に力を注ぐこととなります。


 しかし巨大な戦闘力を持つ騎士を疎ましく思ったとある王様は、その力を削ぐために力の源である魔力の制御方法を民衆に明かしてしまいます。


 騎士の権威の象徴として秘匿され続けてきた魔法は、民間人にも解放され広く研究されるようになっていきました。


 それは騎士の武力を削ぎ、それは直接領主の力を削ぐことになります。しかし、王様には原典魔法という王家代々に伝わる魔法があります。


 領主は王様に恭順せざるを得なくなりました。


 こうして封建制度の時代は終わり、絶対王政の時代に移っていったのでした。

 騎士は名誉階級となり、魔法に優れた者が騎士を名乗ることを許されるようになります。


 そして現在。軍の精鋭である騎士を育成するための学校が王都にあるのです。

 騎士を目指す主人公は学園に入学しようと、生まれ故郷である農村を出て王都へやってきました。



 小説ごとに様々な歴史があるとは思いますが、魔法が使われている分野、魔法を使う階級、魔法の発動方法など、これらを並べることでその世界の歴史や起源をある程度考察できるのではないか、と筆者は考えています。


 この章ではあまり深いことには触れることはできませんでしたが、このようにして本小説では現実とファンタジーのバランスを取りながら、ファンタジーの要素を考察していきたいと思います。


次の話で封建制度について詳しく書き、この章はおしまいです。

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