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幻想歴史読本 ~ファンタジーを考える~  作者: 走るツクネ
おまけ 主に歴史に関わる話
29/84

イタリア戦争の話 攻撃と防御の競争

イタリア戦争は様々な影響を及ぼし、三兵戦術につながっていきます。


キーワード:技術発達の様子、兵器の役割

特殊兵種:有翼重騎兵、胸甲騎兵、ウ―ラン

 火砲に関する成果の確認は、イタリア戦争にて行われます。


 "都市国家だらけという状態になったイタリア"にやって来た諸国が、一世紀近く都市国家をめぐってイタリアで戦うのです。どこまでをイタリア戦争とするかは諸説ありますが、定説では1499年から1559年(1450年あたりから争いは始まります)を言うようです。


 参加した主な国は、フランス、神聖ローマ帝国、スペイン、オスマン、イングランド、スコットランド、スイス、それにイタリアの都市国家があります。

 当時としては、フランスが強力な国力を有していました。


 各国は自慢の兵器を携えてやってきます。

 15世紀(1400年代)は大砲がようやく実用的な性能になった、マスケット銃が登場し始める、という重要な変化が起こった時期です。


 フランスは最新型の大砲で、イタリア(都市国家)に攻め込みます。

 イタリアはこの大砲の威力にびっくりし、フランスは大砲に自信を得ます。


 スペインは、熱心に研究したマスケット銃の運用で、そんなフランスに勝利をおさめます。

 陣地構築技術も高く、騎兵突撃や、スイス傭兵の突撃槍兵に頼ったフランスに対して有利に働きます。


 

【大砲の話】

 しかしながら、時代は攻城戦です。

 大砲を持っていなければ、富を生み出す都市を奪い取ることはできません。堅固な要塞を数か月の間包囲して、重カノン砲で砲撃を加えて攻略する、という様子です。


 この戦争の様子はいくつか影響を及ぼしました。


 1、たとえ野戦で勝利したとしても、覇権を得ることができなかったこと。

 2、大砲と城塞の技術競争が行われた結果、イタリア式築城技術を生み出したこと。

 3、攻城戦によって騎士がだんだんと無用の長物になっていったこと。


 例えば、イタリア式築城技術、というのは、一つの欧州発展のカギであります。

 イタリア戦争(-1559年)が終わった後で、マルタ包囲戦(1565年)にて、神聖ローマ帝国によって領土を与えられたヨハネ騎士団(とスペイン)が、火薬帝国オスマンの攻撃をしのいだ、という結果を残しました。

 砲撃に対して有効な城壁を築くことができたのです。


 この結果、"大砲といえど、進歩が必要である"という認識を、欧州が得ることができました。

 宮廷、工房、現場、敵味方関係なく、あらゆるところで積極的に技術交換が行われ、急速に発達することになります。


 こういった認識を得ることができず、大砲という究極兵器に胡坐をかいていた、ロシア(モスクワ大公国)、トルコ(オスマントルコ)、インド(ムガール帝国)は、欧州に大きく後れを取ることとなります。

 究極兵器と信じて配備を進めていたものを時代遅れにしかねない、という新技術は、支配者にとって不必要だったとも考えられます。

 


【歩兵の話】

 とはいえ大砲は重くて仕方がなく、野戦においては戦機をつかむことができず、重要な役割を果たすことができませんでした。


 槍兵をずらりと並べる基本戦術と、騎兵突撃の戦術は相変わらず効果を発揮しました。ここでも攻撃力と防御力の競争は行われているといえます。


 騎兵の攻撃力を生かすには、やはりどうにかして槍兵の陣形を崩す必要があります。槍兵さえどうにかできれば、大砲も脅威ではありません。


 そこで用いられたのはマスケット銃兵でした。

 マスケット銃で相手の槍兵の陣形を崩し、そこに騎兵で突撃するといった流れです。


 ここでおこった問題は槍と銃のバランスです。

 マスケット銃を多くすれば敵の陣形を崩せますが、敵騎兵の突撃を防ぐための槍兵が減ってしまうのです。


 そして前にもどこかで書きましたが、兵力の上限は大体5000程度だったようです。これは指揮を正しくを保つための数です。太鼓を鳴らしても、ラッパをならしても、距離に限界が出てきます。

 号令をかけるには5000程度が良いだろう、とフランスの将官が残しています。

 歩兵の事情はこのようなものでした。



【騎兵の話】

 対して高火力高機動力な騎兵は相変わらず脅威です。有名どころだとポーランドの有翼重騎兵フサリアでしょう。起源は貴族の戦闘部隊です。

 なんとパイクよりも長い槍、鎧も貫く超長剣、叩き切る長剣、なで斬りにする曲刀、至近距離で使う戦斧やメイス、飛び道具としてピストル、をすべて装備していたというのです。

 突撃前にはしばらく準備がかかりますが、特産である巨大な馬にまたがり突撃し、そのキルレートは非常に優秀だったそうです。財政や経済が息切れするまで、圧倒的な強さを誇っていました。火砲に敗れたわけではなかったのです。


 各国にこのフサリアはフサール、ユサール、ハサーなどと広がったし、フランスではしばらく後に大敗北を喫するまで、やっぱり戦の締めは騎兵突撃、と考えられていました。


 またウ―ランや胸甲騎兵キュイラシェ、という騎兵も有名でしょう。

 サーベルや長槍と、ピストルで武装します。火砲が進歩してきたので、全身鎧が時代遅れになってしまい、機動力を重視し始めたのです。

 彼らはピストルで戦列を乱したのち、抜刀突撃を仕掛けたのです。



 クロスボウと板金鎧、マスケット銃と全身鎧、大砲と城壁、槍兵と重騎兵、などなど、攻撃と防御の技術競争は、大抵、攻撃力が勝利するようです。


 こういった技術競争は、ファンタジー世界であまり見ることがありません。大体100年程度の周期で起こるようなので、それより短い期間を取り上げることが多いのが、一つの要因でしょう。

 一つ例を出すのであれば、魔法に関する頁で攻撃魔法が異様に発達している件について書きましたが、こんな理由がある、のかもしれません。


 騎兵の威力は銃の登場で直ちになくなったわけではないのです。

 騎士衰退の理由は戦場の様子、社会体制の推移、経済状況、兵数補給問題、といった、様々な要因で語られる必要がある、という話でした。


 本日はもう一話投稿します。

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