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斬姫の苦悩

「エミリア、バイトに来ませんねー」

「どうしたのかな?」

「……そうね」


アレ、マモンはキッチンにいるから良いとしてレヴィの顔が浮かない? 何かあったのかな?


「何かあったの?」

「……何も」

「アジアン、話したくないことを聞いたらダメだよ」

「はーい」


アジアンが作業に戻ろうとした瞬間、


「エミリアはもうここには来ない」

「「え⁉︎」」

「彼女がエアリミだから」


エアリミ……、最近聞いたような気もする。


「それってPKの……」

「そうよ」

「PK⁉︎」


エミリアがPKだなんて……そんな人には思えなかったのに。


「どうしてそれを知っているんですか?」

「……現行犯ね」

「疑いの余地が無いですね……なんで……」

「あいつらに理由を求めるだけ無駄よ。謎の理論で動いているんだから」


レヴィは冷たく、切り離すように言う。エミリアを敵として、言っているのだろう。そう思うと、とても悲しくなった。


*****


「最低ね……ほんっと」


あの子たちには教えるつもりは無かったのに。悲しませるつもりも無かったのに。負けたからってペースを崩された?


「我ながら嫌になるわね」

「何がよ?」

「メンタルの弱さ。マモン、聞いてたわね?」

「うん。エミリアはやっぱりエアリミだったんでしょ?」

「そうよ」


マモンの嫌そうな声に頷く。彼女も悲しんでいる。


「でも、レヴィ」

「何よ」

「狩られなかったんでしょ?」

「……そうね」


それだけは不可解なのよね……まさかエミリアとしての気持ちなんてほざかないわよね?


「アリアがいないタイミングでこんな事になるなんてね」

「そもそもレヴィがエミリアを尾けなければ良かったのに」

「時すでに遅し」


椅子に腰掛け、どうしたものか、と考える。魔王たちを頼るのはダメね。カーマインブラックスミスの問題だもの。


「ねぇ、マモン」

「何かな?」

「もし私がエミリアを説得するって言ったらどうする?」

「私がエミリアを説得するって言う」


一瞬沈黙して、同時に噴き出す。


「何よ、負けず嫌いね」

「えへ」

「あざとい」


ため息を吐き、椅子から立ち上がる。そのまま地下でポーション系のアイテムを作製しているマリアとアジアンのところに。今ひよちゃんたちは畑から収穫している。私たちの指示も少しは従ってくれる。


「ちょっと良い?」

「あ、ちょっと待ってください」

「同じく」


小瓶や器をテーブルに置いた2人の顔を見て


「エミリアを説得するって言ったらどうする?」

「出来る限り手伝います?」

「やれる範囲で手伝います?」

「そう、ありがと」


これからの方針が決まったところでエミリアについての情報収集を始める。もちろんバイトとしての接客もしながら。


「……あの時襲われたパーティに襲われる理由は無かったみたいね」

「どこもそうみたいよ」

「……アリアが戻ってくる前にカタをつけなくちゃね」


*****


「シェリルさん! 俺と一緒に踊ってくれませんか!」

「僕と!」

「私と!」


それを眺めながらお面で顔を隠す。狐のお面だ。


「シェリ姉人気だねー」

「そうだね」


エミと私は小さいからそういった事に巻き込まれないんだろう。そう思えば気が楽だ。


「エミも誰か気になる子と踊ってきたら?」

「んー?」


エミはきょろきょろと辺りを見回して


「おねーちゃん、一緒に踊ろー」

「お姉ちゃんは浴衣なので派手な動きができないのです」


逃げ口を用意していたので問題なし。


「あの……」

「「?」」


振り向くときの弱そうな男が。多分私より年上。


「僕と踊ってくれませんか?」

「だってよ、エミ」

「だってさ、おねーちゃん」


二人で見詰め合って


「どっち?」

「え」

「私か妹のエミか」


エミを脇の下から持ち上げる。エミは何故かピースしている。それと思いからすぐに降ろした。


「それとも3人で?」

「え!?」

「ふふ、アリアちゃん、あんまり困らせちゃダメよ?」

「シェリ姉こそ踊ったの?」

「浴衣だから踊れませーん」


*****


なんだろう、心の中に穴が開いたような気がする。大切な何かを捨ててしまった気がする。


「……」

「どうしたんだ、エアリミ?」

「何も無いわよ」


シンの言葉に適当に応えて席を立つ。


「どこかに行くのかい?」

「うん」

「気をつけてね」


シンの言葉に手を振って応える。そのままギルドホームを出て、そのまま少し歩いて屋外に出る。空は青く澄んでいる。眩しい。


「……なんだろう」


見かけたパーティを狩り、思いの外自分が考え込んでいることに気付いた。


「……まさかね」


あの店に戻りたいとか? そんなことは無い。ただお金のためにいたんだから。そうだ、そのはずだ。なのに


「どうしてこんなに虚しいの?」


前は殺せば気がマシになった。それなのにこのズーん、と気が沈み込んだのは何故?


「それは何か気がかりなことがあるからじゃないんですか?」

「そうかもね……だけど今は一人になりたいの」


《霧雨》を抜いて《X鬼(テンキラーズ)》の一人を眺める。

アリアたちの十三人を正面から殺すための十人と私たち三人。いずれ来るべき決戦だ。そのための住人、数合わせとも言う。


「殺す」


地面を蹴って懐に飛び込む、と見せかけてさらに加速してすれ違うように。その瞬間に


「《居合い・羅刹》」


上半身と下半身が別れ、地面に落ちるのを眺める。即死だ。《致命的位置(クリティカルポイント)》に当てたから。


「他愛も無い」


こんな奴らを集めてシンは何を考えているの? 演出? 展開?


「分からない事だらけね」


手首を返し、刀を逆手に持つ。そのままゆっくりと腰の鞘に刀をしまう。

何故かポーションを小瓶に詰める作業が懐かしく感じた。


「分からない事?」

「うん」

「戻れば分かると思うわ」

「戻……りませんよ」

「そう。力づくでも戻すけどね」


嗤う。抜刀できるように柄の近くに手を下ろして


「また負けに来たんですか?」

「違うわ」

「?」

「アリアを悲しませないためにもね、私たちバイト一勢はあなたを連れ戻すことにしたの」


……悲しむのかな。怒るとは思うけど……


「エミリア、あなたの作ったアクセサリーはまだいくつか店内にあるのよ」

「……いきなり何の話?」

「あなたの作品は現在お高いの。それに顧客様方が作って欲しいって依頼もあるのよ」

「それがどうしたんですか?」

「私が知っているエミリアは頼みごとに文句は言っても断るような奴ではないわ」


……っ!?


「あなたに何が分かる!」

「……」

「何も知らないくせに! 知ったような口を利くな!」


怒りのあまり《霧雨》を抜刀し、距離を詰めて切りかかる。なのに


「どうして……」

「信じたから」

「っ!?」


何もせずにただじっと私を見つめていたレヴィは笑った。刀はその眉間を割る直前で止まっていた。


「戻ってきなさい、エミリア」

「……」

「エアリミなんてもういない、死んだのよ」

「!?」

「今ここにいるのはカーマインブラックスミスってネーミングセンスに疑問を感じるあの店のバイト二人よ」


泣きそうになった。ここで駆け寄って抱き合えば感動の最終回とかになったんだろう。それなのに


「それは裏切るって事なのかな」

「「!?」」


シンが、夜色の剣を構えて突撃してきた。

孤面の男の入力係り兼代表である私がまた何か書きたくなったようだ

まったく今ですらギリギリなのにどこまでする気なのだろうね?

愚かしい事この上ないよ


しかしアレだ、エアリミ視点で書くのって面白い

それとエアリミの名前をエリミアとか間違えそうになる

誰だこんな名前にしたの


次回予告

「まさか、裏切ったの?」

「裏切ったふりをして裏切るんじゃねぇのか!」

「裏切る理由が無いよ」

「西瓜を割るなら周囲に被害が無いように!」

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