ドラゴンズレイヤーひよちゃん
「そう言えば君の作戦くらい聞いておきたいな」
「単純ですよ。また大きな騒乱を起こすだけです」
「ふーん」
それって
「他のギルドにいる《シリアルキラーズ》のメンバーに僕たちを襲撃させ、他のギルドと僕たちを争わせるとか?」
「ご名答です」
夜色の剣は怖い。かつて何の特殊能力も持たず、ただ純粋な物理攻撃で200人斬りを達成させたのだから。決闘で、の話だけど。
PKとしては200を軽く越えているだろう。だから迂闊に飛び込めない。しかも足場がドラゴン。シンの意思で動くドラゴンだ。
「ならこうするしかないよね」
「ターンして」
足場を崩そうとしたら回転、バランスを崩しかける。そのタイミングでシンが動いた。
夜色の剣は周囲に溶け込むように、僕の首筋を狙う。左手の《真風龍の天剣》を野球のバットのようにし、受ける。
「っ!」
「っ⁉︎」
蹴られた。ドラゴンの上から落ちそうになるのを右手の《真炎龍の天剣》を突き刺す事で無理矢理止まる。振り飛ばされそうになりながらも足場を整える。
「やっぱり速いですね」
「君こそ」
「そして相変わらずの速度任せの剣、それもよりにもよって二刀流とは」
「えへへ」
「褒めてません」
二本を体の前で交差させるように構えて
「二刀流は防御主体で隙を見つけて片手剣のスキルを放つもの、君のスタイルは奇抜だ」
「反撃メインの君に言われてもね」
「盾も無しに反撃メインはおかしいってよく言われるよ」
瞬間、ドラゴンが吠えた。それと同時にドラゴンの背を蹴り、夜色の剣が迫る。確実に《致命的位置》狙いのそれを剣の柄を合わせてX字にしたものに引っ掛けてお返しで蹴る。
ふわりとドラゴンの上に着地するや否や剣戟が始まった。上からの剣は下から合わせ、下からの剣は上から下ろす。対し僕の剣も遮られる。
「相変わらず速いですね」
「君こそ!」
勢いのままに突き。避けられる事を前提に剣を逆手に持つ。
「回転剣舞、懐かしい技だ」
「っ⁉︎」
突きを避けた隙に遠心力を乗せ、なおかつ回転して放った剣が相殺された。単純な力で止められた⁉︎ 僕はstrーagiだぞ⁉︎
「力負けしたのがそんなに驚く事ですか?」
「自信があったからね」
拳を避けて頭突きを剣の腹に止められる。
「その剣、誰の作品なのさ」
「ドロップとは思わないんですか?」
「あいつでしょ?」
シンの言葉に答えず断言する。笑みを浮かべるのに確信を得た。
「《血塗れの鍛治師》アビス」
「正解です」
「やっぱり君たちはいつも一緒だね」
「リアルでは知り合いでもなんでもありませんよ」
ふーん、と思いつつ剣を交わす。止められたからなんだってんだ、僕は僕だ。
「《アークにゃー」
「《ソードパリィ》! っ⁉︎」
剣の防御の範囲外を斬りつける。
「まさかスキルを失敗させるとは」
「フェイントも必要だし」
「勝つために無策を貫くと思っていましたが……」
シンは笑みを絶やさずに剣を構える。守りの構えだ。名前があるかもしれないし無いかもしれない。知る気も無い。
「っ⁉︎」
ドラゴンが揺れた。そして地面に向かっている。
「まさか墜とされるというのか⁉︎ ドラゴンが鳥に⁉︎」
「僕のひよちゃんは強いからね!」
動揺しているシンの懐に飛び込み、柄で顔面を殴ろうとする。防がれる。蹴られた。ダメージは無い。《体術》を習得していないから突き放すだけだ。
「なっ⁉︎」
「空中戦と洒落込もうじゃないか」
脚を払ってそのまま一緒に落ちる。柄と柄で殴り合いながらも地面に落下する。激突まで間も無い。焦燥感が顔に現れた。だから
「ひよちゃん! 僕ごと!」
『ちぃ(アイストルネード)!』
氷雪の竜巻に飲み込まれる。身動きがあんまり出来ない。あんまりって事は
「んっ」
「ふっ」
剣と剣が火花を散らす。どんどん減っていく体力を気にせずに剣と剣を交わす。
「僕の作戦負けかな」
「違うね、ひよちゃんの勝ちだよ」
「……ははっ」
笑って転移アイテムを使われた。逃げるまで一瞬ある。剣を突き出す。手応えがあった。しかし
「……経験値は無し、か」
やれてない。そう思った瞬間、背後から殺気が。頭を下げつつ前に出ると頭の上を何かが通過した。何かというか
「シン……テレポートアイテムでもあるの?」
「正解です。まぁ、クールタイム30分なので無駄遣い出来ませんが」
「プレイヤーメイド?」
「いえ、ダンジョンボスのドロップです。耐久も低いので使いどころに悩まされますよ」
シンは嘯きながら近寄ってくる。右手の剣はどこから迫るのか分からない。
『ちぃ(アイスランス)!』
「テイムモンスターですか」
氷の槍を正面から全て斬り落とし、ひよちゃんに向かって駆け出す。それだけはさせない。
「ひよちゃんに手を出すな」
「……遠距離攻撃を残すと厄介なんですよね」
シンは笑みを絶やさずに突き進む。タイミングを合わせて剣でXの字を描くも一瞬足りとも停滞は無い。瞬時に剣と剣が交差する。
「援軍が来ないって事はさっきのは掲示板では無かった?」
「うん、正解」
「……君を殺してからにしましょう!」
「殺れるものならね!」
一瞬先に立っていた位置が斬り裂かれ、一瞬先に立っていた位置に剣が空振る。
「っ!」
「んっ!」
お互いに弾かれ、下がる。
「なっ⁉︎ って驚くプレイヤーいますよね」
「うん」
「プレイヤーに限らず漫画やアニメ、小説でもよくいますよね」
「うん」
「そう言った方々はアレですかね、負けるのは想定外なんですかね?」
それはさっき同じ事を言った自分と僕に言っているのか?
「君もそうだ、負けるのは想定外なんですか?」
「そうだね」
「どうして」
どうしてってそりゃもちろん、
「だって僕が最強なんだから」
*****
暗がりの中、散る火花が存在を主張していた。
「あそこね。カゲオ、もうちょいもうちょい」
『……』
「マモン、ストップ」
スコープを覗き、アリアちゃんかどうかを確認しようとするレヴィ。だけど位置的にあっていると思う。
「狙撃する?」
「下手に撃つとアリア当たるわ……あの2人、狙うのが難しい速度で動いているの」
それよりも
「マモンはホームを見ておいて。劣勢になってたら戻るわよ」
「みんななら大丈夫だと思うんだけどなー」
「絶対は無いわ……ん!」
「どうしたの?」
「ひよちゃんが気づいてこっちに来てる……跳び移るわね。マモンはホームをメインに」
レヴィはバッサバッサと滞空している巨体に飛び移りそのまま指示を出した。
「えー」
私もアリアちゃんが心配で来たのに。とりあえずホームのお城を眺めていると
「あり? ジャックがブチ切れなう?」
鎌を振るい纏めて切り裂いている。ちゃんと切り裂きジャックだ。そう言えばアリアちゃんは娼婦の意味を知らなかったね。教えて顔を赤くするところを録画したいなぁ。
「うふふ」
お城に向かって駆けているプレイヤーを次々と射抜く。でも何かおかしいなぁ?
「どうして所属ギルドはバラバラなんだろうね?」
1人ずつ確実に削り取りつつ首を傾げた。
ひよちゃんタイトル久々
そしてネタバレひよちゃん
しかしアレだ、夜色って書いてると黄昏色のを思い出す
召喚魔法が出たら出そうかなイェレミーアスくんを
夜色さんとアリアの戦闘ではスキル硬直すら敗因になるのでお互い使っていません




