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《夜色の殺戮者》

「で、誰かも分からずにお前は全員全損させたんだな?」


お兄ちゃんの言葉に頷くとため息を吐かれた。


「せめて俺が顔を見たら分かるかもしれなかったんだけどな……」

「ごめんなさい……」


お兄ちゃんは微笑んで気にしないで良い、と言って頭を撫でた。


「娘さんにして上げなよ」

「いくらでもするさ」


*****


「それじゃこれからどうするか、だね」

「その事なんだけどね、さっきのプレイヤーたちは《シリアルキラーズ》じゃないと思うの」

「どういう事なの?」

「んー、何となくだけどさっきのプレイヤーたちはPKに慣れていないって気がしたの」

「……?」

「あ」


マモンが声を漏らした。それにみんなが注目すると手をぶんぶんと振った。


「関係無い事だから流してね」

「……で、慣れていない、か。他にもそう思った奴はいるか?」

「気のせいかもしれないが躊躇いのようなものは見えたな」

「ブブもか。他は?」


そう言えば、と思い出したので手を上げる。


「はい、アリアくん」

「《鑑定》スキルで確認したら無所属だったり《勇者達(ブレイバーズ)》だったり《聖堂騎士団(テンプルナイツ)》だったよ」

「「「「「最初に言え!」」」」」


あはは、と笑う。すると


「《聖堂騎士団》はおかしくないか?」

「どうしてさ」

「あそこは装備一式をギルド側が支給する、それなら見覚えがあるはずだ」


セプトはそう言うけど実際に《聖堂騎士団》のメンバーがいたんだよなぁ……


「考えていてもキリが無いな」

「そうだけどさ……」

「とりあえず俺はサタルシとアスモとシエルの援護に行って来る」

「行ってらっしゃーい」


現在も襲撃は続いているので迎撃に出ている四人。ローテーションで回っている。


「に、しても勢力はバラバラだな」

「そこが引っかかるのよね……」

「……スパイ、という考え方は出来ないかしら?」


レヴィの言葉にみんなで注目する。それに物怖じせずに


「元々PKギルドは創られる、だったら他のギルドに潜伏して獲物を調べ上げて予定などを流す役がいるとしたら辻褄が……あってもおかしくないわね」

「確証は無いの?」

「全部予想と推測よ。例え聞いたとしても素直に全部応えてくれるわけでもないしね」


お手上げ、とジェスチャーするレヴィ。だけどそれは確かにあってもおかしくない。


「……掲示板じゃまずいな」

「口伝もね……」

「ってことはアレだな」

「そうね」

「え?」


シェリ姉だけが分からなさそうなのでちょんちょんと肩を突いて


「グーグノレ先生の出番なのさ」


*****


『アリア、助けて』というメッセージが届いたのはログアウト寸前だった。もう眠いんだけどとりあえず送信者の居場所に向かうと


「……何これ?」


僕のお店が、カーマインブラックスミスがたくさんのプレイヤーに取り囲まれていた。咄嗟に身を隠して眺めるとどうやら僕を出せ、と言っているみたいだ。僕はすでに出ているんだけどね。

とりあえず良く分からないから身を隠しつつ裏道を抜けてベランダに飛び乗る。ベランダは許可した者しか入れない敷地となっているからね。


「……」

「むごっ!?」


扉の前を歩いて通り過ぎようとしたアジアンの口を塞いでベランダに連れ出す。


「静かに」

「……(コクコク)」


頷いたのを確認して


「何事なのさ」

「えっとですね……いきなりあんなにたくさんのプレイヤーがやってきてですね、アリアを出せーってずっと言い続けているんですよ」

「危害は?」

「街中なんでなにも無いですよ。せいぜい五月蝿いだけ」


アジアンはそう言うけど疲れたような笑顔だ。SSOに限らす、ほとんどのMMOでは表情は多少オーバーに表示される。つまり隠そうとしても隠せないくらい、って事だ。


「僕に何の用なんだろ」

「さぁ……マリアも諦めて奥での作業に勤めています」

「それが良いよ……ん」


ちょっと遠くから鑑定してみると所属ギルドがバラバラだ……レヴィの言葉が引っかかった。スパイがいるって。


「……違う」

「え?」


PKじゃない。その程度じゃない。


「……どうしよう」


僕の予想が正しければ手を出すのは本格的にまずい。


「アジアンとマリアはログアウトするかこの店から退避して欲しい。ここは危険だ」

「……分かりました」


アジアンは察してくれたのか素直にマリアの方に行った。僕も頷いてベランダから地下に降りる。


「ひよちゃん、ルフ、ちゅう吉……寝てるかな?」

『ちぃ?』


ひよちゃんだけ起きていた。肩に飛び乗ったひよちゃんの嘴を撫でて


「飛べるかな?」

『ちぃ!』

「お願い」


ベランダに出てひよちゃんに乗る。助走をつけて飛び立つひよちゃん。実際はつけなくても飛べるけどつけたほうが初速が出るから、と言う理由でつけだしたみたいだ。


「ん、もうちょっと西で……あ、南南」

『ちぃ! ……ちぃ!?』


ひよちゃんが顔を背後に向けて驚きの表情を浮かべた。僕も振り向くと《感知》と《探知》の範囲の外で飛翔する夜の暗い空に紛れるような夜色のドラゴンがいた。その上にはプレイヤーが乗っている。そいつが笑った気がした。


「ひよちゃん!」

『ちぃぃぃ!』


ひよちゃんが宙返りする。必死にその背中に張り付く。直後、背中を焦がすように炎の塊が通り抜けた。ダメージは無いけどひやひやした。


『ちぃ?』

「避けながら近づいて。僕が直接墜とす」

『ちぃ!』


ひよちゃんが高らかに啼き、その翼が大気を叩き急加速する。月を目指して高く飛翔する。そのままひよちゃんは氷の槍を降らせつつドラゴンに接近する。ドラゴンは炎を吐いて氷の槍を消し飛ばす。ひよちゃんの氷の竜巻は吐き出された炎の竜巻にかき消される。属性相性が悪い。水魔法なら、とも思うけど蒸発させられるだろう。


『ちぃ(アイストルネード)!』

『がぁぁ(フレアトルネード)!』


声が聞こえるくらい墜ちた。だから2本の剣を抜いて


「せやっ!」

「っ!? くっ!?」

「っ……」


初撃は確かに直撃した。だけど二撃目は受け止められた。夜色の剣の柄に。そんな芸当をする奴を僕はそんなに知らない。


「夜色……僕が知っている夜色に似ているね」

「そうですか」

「《夜色の殺戮者》、プレイヤー名は《THE・sin》だったかな」

「今は冠詞がありませんけどね」

「うん、だから君だって気付かなかったよ」


お兄ちゃんが僕達から離れるよりも前のことだ。とある一人のプレイヤーを狩るためにプレイヤー1000人が動員されるような事件があった。

そのプレイヤーの外見は人畜無害を体現したような優男。だけど戦闘になると冷酷無比になる。そして戦闘を求めすぎてPKを積極的に行うようになった。


「今でも憶えているよ、《聖天下の大虐殺》を」

「あー、あのクリスマスにいちゃつくリア充プレイヤーの虐殺ですか。個人的な恨みも加えて三割り増しで殺る気があったのは否めないですね」


あはは、と笑うシン。


「君が《夜色の殺戮者》って知っているプレイヤーはどれくらいいるんだろうね?」

「お宅の《死神》くらいですね」

「それは良かったのかな?」


嗤うシン。


「掲示板にあげたところで僕はやれませんよ」

「だろうね」


手元の《決定》をタップしてドラゴンの上で剣を構える。


「だから僕が一人でやる」

「君ならそう言うと思っていたよ」


腰の夜色の剣を引き抜いてシンは笑みを浮かべた。

タイトルの奴強そう(小並感)


殺戮者って名前で一二三さんを思い出した人は同士

知らない方はなろうで殺戮者で検索すれば大体わかると思います

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