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ゴブリン

「違う!」

「アリアちゃん⁉︎ 二人で燃え盛ったあの夜を忘れたの⁉︎」

「僕は違う!」


僕の言葉にわざとらしくマモンがよよよ、と泣き崩れる。


「そんな……アリアちゃんは私とは遊びだったのね!」

「悪ノリはそこら辺でやめとこうよ。一応モンスターが来るエリアでしょ?」

「一応と言うか思いっきり来るんですけど」


僕の言葉にきりがポツリと呟いた。そして


「あ、ゴブリンが来てますね」

「なんで分かるの?」

「スキルの気配感知を取ってるからですね」


気配感知、僕の探査とどう違うのかな。


「ファイアーボール!」

「えい」


きりの魔法を追い越して弓矢が飛ぶ。そしてゴブリンの何体かを倒す。残ったゴブリンも炎の球が激突したが


「倒せない⁉︎」

「うん、なら僕が行くよ」


僕は錫の剣を背中の鞘から抜いて地面を蹴る。木の間を走ってくるゴブリン。正面から斬りかかるのは悪手。だから


「えっ⁉︎」

「やっぱりアリアちゃんはどこかズレてるね」


木の幹に着地してさらに跳躍。ゴブリンの背後に回り込んで


「アークスラッシュ!」


2連撃で沈むゴブリンにようやく残りが気付いた。後4体。だから振り下ろされた剣を掻い潜り真下からスキルを使わずに切りつける。すでにファイアーボールで削られていたにも関わらず削り切れない。

これで最強を名乗るなんて片腹痛い!


「アークスピア!」


連続の突き技、先端と剣の腹に当たり判定のある技を放つ。これは貫通効果を上げる特殊な仕様のスキル。これで2体を纏めて倒す。残り2体。


「アークブラスト!」


範囲の広い連続攻撃で纏めて切る。そして背中の鞘に剣を納めて


「全然ダメだ……」

「ええ⁉︎ あれで⁉︎」

「うーん、やっぱり攻撃力不足が否めないね」

「さらに注意点まで!」


僕はため息を吐いて


「今日はここでレベリングかな。マモンときりのレベルは?」

「私は13です」

「私は57だよ」

「さらっととんでもないね」


僕は再びため息を吐いて


「ここは経験値効率が良いんだよね?」

「うん、そうだよ」

「だったらしばらく狩り続けるかな」


*****


『Aria:ちなみに皆のレベルってどれくらい?』

『mammon:58だよ』

『Aria:あれから上がったんだ』

『belphegor:おおっと、最強らしくない』

『Aria:僕だってそれくらい気にするさ』

『belphegor:俺は63』

『mammon:あ、負けた』

『diabolos:79』

『Aria:⁉︎』

『mammon:⁉︎』

『belphegor:⁉︎』

『diabolos:お前ら仲良いな』


*****


「うーん、学校だときりと堂々話すのって恥ずかしいね」

「正面で言うのはやめて欲しいなぁ」


私は蕎麦を啜り


「それで隣の二人が鳥人間とアカネ?」

「そそそ、私がリアルでも茜なアカネちゃんだよ」

「私は蝶瞳ちょうひとみ

「……私は二階堂アリア」


そう言えば


「きりの名前は?」

「え⁉︎ 知らなかったの?」

「ずっときりで通してたもん」


お冷やを飲んで


桐谷雛きりがやひな

「キリトでもキリヒトじゃなくて良かったって言うべきなのかな?」


有名VRMMOを題材とした小説の主人公、それとそれを真似るプレイヤーが出てくる小説。どっちも面白い。


「それで私を呼び出して一緒に昼ご飯を食べたいってだけって言ったのは本当だったんだね」

「どうしてそんな単純な事で疑心暗鬼されるのかな?」

「……ま、色々あったんだよ」


シェリ姉と仲が良かった男がいきなりストーキング趣味に目覚めたように、いつ変質するか分からない。だから怖い。

そしてその男の末路はもっと怖い。全裸に剥かれて証拠写真を撮られた挙句河に突き落とされたのだから。その晩『やり過ぎちゃったテヘペロ』としたシェリ姉がとても可愛かったのは覚えている。ちなみに男はあまりのショックにその晩の事は忘れたそうな。


「あら? アリアちゃん?」

「シェリ姉? 何してるの?」

「私もお昼ご飯を食べないと倒れちゃうの……お友だち?」


シェリ姉は食堂の入り口付近にいた私たちに近付いて腰掛けてからきりたちに気付いた。若干抜けている。そう言ったら『チャームポイントかな?』と真顔で聞かれた。凄く困った。


「アリアのお姉さんですか?」

「うん、二階堂シェリルだよ」

「アリアちゃん、私だって自己紹介くらい出来るよ」

「シェリ姉は初対面の人に堅苦しいからこれで良いの」

「そうかなー?」


シェリ姉は小首を傾げて


「とりあえずお邪魔しても良いかな?」


もちろん反対意見は無かった。すると


「三人ともアリアちゃんとは接点が無さそうだよね」

「え?」

「アリアちゃんはきっと教室の端っこでスマホ弄ってる寂しげな子で、三人は仲良くキャピキャピ話していそうだからね」

「あー、確かにそうかも」

「うんうん」

「シェリ姉ってばもしかして覗いたりしているの?」


首を横に振るシェリ姉。仕方がないので


「同じゲームしているの」

「ゲーム?」

「VRMMOだよ」

「えっと……バーチャルリアリティマッシブリィマルチプレイヤーオンラインだっけ?」

「知らない」


私の言葉にシェリ姉は苦笑して


「私もやってみよっかなー」

「受験でしょ?」

「もう専願取るまで二週間切ったもん。それに向こうの面接官に太鼓判押されたもーん」

「シェリ姉の進路は決めてないんでしょ?」

「決まってないなら普通高校が一番だよ」

「ここのエスカレーターじゃダメだったの?」

「うん、自分を試してみたくて」

「落ちたら笑うよ?」

「そしたらアリアちゃんのファーストキスを奪っちゃおっと」


冗談じゃない。すでにマモンが似たような事をしたから。もっとも物理でなんとか守りきった。そしてマモンの百合疑惑が完成した。


「夏休み前なのにもう……」

「えっときりちゃんだっけ? 一部生徒は向こうから声をかける場合もあるのよ」

「シェリ姉は何かがどうにかして凄いらしくてね」

「一切何も伝わらないね」


私の言葉にシェリ姉は苦笑して


「とりあえずよろしくね」


そう締めた。


*****


「ふんふん、アリアちゃんってば本格的にぼっちなのね」

「五月蝿いやい」

「そして勉強は赤点を免れるくらいっと」


私の情報がシェリ姉に筒抜けになった。私は不貞腐れてテーブルに突っ伏した。三人はシェリ姉と楽しそうに会話している。すると


「私もしてみようかな?」

「何を?」

「アリアちゃんたちと同じゲームを」

「やめて⁉︎」


私は咄嗟に叫んでしまった。それがシェリ姉の嗜虐心を唆るのを忘れていた。


「それじゃやってみよっかな♪」

「誰か……助けて……」

「アリア……頑張ってね」

「よく分からんけど気を強く持ってね」

「大丈夫、やれば出来るよ」

「……きり、ヘルプミー」

「あー、うん、家庭内の事情には踏み込めないからごめん」


至極真っ当な事を言ってきりたちは立ち去った。そして


「ほら、次の授業に遅れるよ?」

「そうだね……それじゃシェリ姉、また後で」


私は席を立って食堂から出ようとする人波に押される。すると


「後で教えてねー」


気楽な声が聞こえた。

ゴブリン

石斧か石剣を持ち、常に集団

攻撃力は低いが群れると厄介

防御力は低いので一体一体を確実に倒す

また、稀に大型種や統率種が見られる

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