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守らないといけない者

「……うーん」


炎に包まれて燃え盛る森。だけど私の経験値は増えない。つまりやれてないんだ。


「とりあえず逃げよっと。アルカ」

『きゅっ?』

「どっちに逃げたら良いかな?」

『きゅ……きゅっ!』


尻尾に示された方向に走り出す。アリアちゃんたちみたいに前傾姿勢で走るのは少し怖いので安全第一。


「でもなんで私が襲われたのかなー」


一切理由が思い浮かばない。狩場を独占した記憶も無いし……魔法の範囲にいたかもしれない。でも、今のは


「ストーカーよりも怖さが違った……アリアちゃんの戦う時の雰囲気よりも暗い雰囲気」


あんまり関わりたくないタイプだ。だから逃げ切る。そう思ったら


「げ」

「逃がすな!」

「助けてー」

「棒読みじゃねぇか!」


*****


それはあまりにも唐突だった。レヴィさんとマモンさんと一緒に接客していた。そんな平和な時間だったのに……


「「っ⁉︎」」

「え⁉︎」


2人から威圧するような雰囲気が。直後、2人がカウンターを乗り越えて駆け出した。店から速攻で出て行ってしまった。


「一体何事⁉︎」


奥から現れたアジアン。説明しようと思った瞬間、アジアンが閉めた扉が開き、薄緑色で、カーマイン色の風が吹き、カーマインブラックスミスの扉が勢いよく開いた。


「…………次のお客様」

「あ、ハイポーションをスタックで」


困った時はマイペースという店の雰囲気に合わせてみた。


*****


走れ。もっと速く走れ。何よりも速く走れ。

体力なんて気にしないで良い。何もかもを置き去りにして良い。守らないと、助けないといけないから。


「来たぞ!」

「捕まえろ!」

「逃が「邪魔をするなぁっ!」


立ち塞がった邪魔なプレイヤーを足場に跳び上がる。そのまま地面に着地して駆ける。


「シェリ姉!」


助けるために駆け続ける。今度は私が助けないといけないから。


*****


「あー、姉妹水入らずにしよっか」

「そうね」


銃を構えてアリアを追いかけようとしたプレイヤーたちを牽制する。


「ねー、なんで私たちを襲撃したの?」


マモンが問いかける。すると


「団長の意向でな!」

「ふーん。団長って?」

「ああ! それってハネクリボー?」

「団長は今、《幻影面》とやり合っているさ」

「「⁉︎」」

「あの《死神》とな!」


この場にいるプレイヤーは襲撃者たちと私たち、そして遠巻きに見ている他のプレイヤーたち。ジャックの事がばれた。まずい。


「マモン!」

「ええ!」


速攻で削り切る事にした。


*****


『この傷は一生残るでしょう』


その医者の言葉は忘れられない。泣きながら聞いたからかもしれない。ベッドで寝ているシェリ姉を見たからかもしれない。


『お気の毒です……ですが命に別状はありません』


救いにも何にもならない言葉だ。

両手を振り、脚を前に出す。止まらない。街一つを飛び越えようとして失敗し、屋根に着地。屋根の上を駆ける。


『ごめんっ……ごめんっシェリ姉!』

『ん、大丈夫だよ』


優しく私の頭を撫でて微笑んだシェリ姉。あの時は血をダラダラと流していたのに。私のせいなのに。


『まったくストーカーってのはタチが悪いね。思い通りにならないとすぐに物理攻撃だよ』


戯けて言うシェリ姉。そして顔を顰めるシェリ姉。


『あたた……』

『痛むよね……ごめん……』

『馬鹿だね』

『ごめん……』

『落ち込んで過去が変わるなら今は凄い事になってるよ』

『……?』

『だからアリアちゃんは未来これからで強くなれば良いの』


*****


ストーカーに2人で一緒に追いかけられて路地裏に逃げ込んだ。そしてアリアちゃんがこけちゃった。

ストーカーはすぐに追いついてきて服を脱げなんて言ってきた。ストリッパーじゃないって言ったらナイフを取り出してそう言った。

私は仕方なく、従おうとした。震える手でボタンを外そうとした。なのに


「ダメだよ、シェリ姉」


そう言った。そして


「誰かー! 助けてー!」


叫んだ。ストーカーは怒り狂ってナイフでアリアちゃんを刺そうとした。慌てて止めようとしたら脇腹に違和感があった。


「シェリ姉⁉︎ 嘘だ⁉︎」

「ひっ⁉︎」


刺した方も刺した方で自分のしでかした事に驚き、逃げ出そうとした。しかし鈍い打撃音が聞こえた。そして倒れるストーカー。ざまぁ、薄れ行く意識の中でそう思った。


「死んじゃやだよ⁉︎ シェリ姉⁉︎」


絶叫が聞こえる。視界が霞む。あー、これ死んだかなー、と他人事のように思った。


「アリアちゃん⁉︎ 何事!」

「ひっ⁉︎」

「私よ!」

「直美⁉︎」

「そう!」

「お願い! シェリ姉を助けて!」

「……救急車呼んで!」


あれ、ここは知らない記憶だ。んー、開いていた目が記録していたのかな?


「119だっけ⁉︎」

「それ消防車⁉︎」

「118は海上保安庁だし!」

「マニアック⁉︎」


あはは、2人はこの時も面白い会話をしていたんだ。でもさ、今生きてるから死んでないって分かるよ? 分かるけど私死に掛けてるよね? 漫才のような会話をしている場合なの?


「なーんて思い出してる場合じゃない⁉︎」


慌てて矢を回避してMPポーションを飲む。実際には体に触れるだけで良いんだけど気分の問題。服が濡れるのと飲むのなら飲む方が良い。シミにもならないし。

五分、十分、二十分。どれくらい経ったのかな。きっと襲われているのは私だけじゃないはず。


「っ⁉︎」


剣を受け止めようと杖を盾にし、吹っ飛ばされて地面を無様に転がる。ダメージも大きい。残り6割も無い。それに体勢を立て直す余裕が無い。すぐにやられる。


「あー、ダメだこりゃ」


諦めかけた瞬間、脳裏をよぎったのは白馬の王子様。その白馬はきっとテイムモンスターって思えるほどSSOに馴染んでる自分に笑う。


「死ね!」

「だりゃぁっ!」


助けてくれた王子様は自力で走り、まさかの飛び蹴りを加えた。

薄緑色の服のような防具に揺れるカーマインの髪。うん、間違える事なくアリアちゃんだ。


「悪いけど誰一人として生かして返すつもりは無いよ」


沙羅羅、と音を立てて剣を抜く憤怒の表情のアリアちゃん。冷静な時がもっとも怒っている。

アリアちゃんが剣を振るう。それだけでプレイヤーたちが吹き飛ぶ。全損すると思ったプレイヤーは何故かしない。


「死ぬまで徹底的に甚振り尽くす」


見た感じ、アリアちゃんの店の安い剣を構えてアリアちゃんは嗤った。


*****


「今回の件は明らかに俺たちへの、《魔王の傘下》への宣戦布告だ」


魔王は静かに言う。怒っているんだ。


「アスモ」

「ああ。向こうのギルドは《シリアルキラーズ》、どうやら正式なギルド名だったようだ」

「規模は?」

「不明だがジャックと正面から戦えるレベルの奴が最低でも一人だ」


そういったのを調べるのが得意なアスモの言葉に考える。お兄ちゃんと互角ってことは僕や魔王と同等……だけどそんなの関係ないや。


「全員ぶち殺す」

「だな」

「向こうのギルドホームは分かっているのか?」

「さーな。だがPKギルドが街中にホームを構えるとも思えない。俺たちみたいにホームを持たない可能性もあるぜ」

「……そうだな、釣りでもするか」


魔王の言葉にシェリ姉だけが困ったような表情を見せた。

まだ正月だと言うのに平常運転

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