接続遮断
「じゃあマリアたちのレベリングも兼ねてダンジョンに行こっか」
「適性レベルには届かないから……そうね、洞窟が良いかしら」
「洞窟ね……蜘蛛、出ないよね?」
僕の言葉にマモンとレヴィは確認するような会話をして
「遭遇した事は無いわね」
「目撃情報も無いねー」
と、いうことなので
「《アークスラッシュ》!」
高速の二閃が固有名、《ビートルウォーリアー》の体力を全損させる。
「《スプレッドアロー》!」
無数に分裂した矢が《クワガタウォーリアー》の体力を全損させる。
「《スナイプ》」
狙撃が《コックローチウォーリアー》の頭を吹き飛ばす。
「《アークスラッシュ》!」
「《エンチャントファイア》《アークスラッシュ》!」
2人の剣が地面に倒れた《コックローチウォーリアー》の体力を全損させた。
「出てくるモンスターぜーんぶミノタウルスみたいだね」
「ケンタウロス?」
「それ」
「全然違う……」
「……」
「エミリア?」
何かを考えているエミリアに声をかけると頷かれた。何?
「……ゴニョゴニョ」
「ふんふん……正解よ」
ぬ? マモンと2人で内緒話? 2人に何か接点ってあったのかな。
「アリア、このダンジョフゴフゴ⁉︎」
「エミリア、ネタバレ良くないよ?」
「はっ⁉︎ そうでした!」
何か分かんないけどそういう事らしい。
「でもさー、カブト虫と人間の融合ってどんな人が考えたんだろうね?」
「それは……ケンタウロスの前例があるからじゃないですか?」
「アラ某よ」
「アラ?」
アラ……アララギ?
「ま、良いや」
「……良くないけどなぁ」
マモンの呟きは聞こえなかった。
*****
それは突然やって来た。背後から音も立てずに迫るそれ。僕は《探知》スキルのおかげで気付けた。でも動けなかった。
「……あれ? アリアちゃんは?」
「さぁ?」
「モンスターでも見つけたんじゃないですか?」
「……?」
………………………………………………………………………………………
「っ⁉︎ 上よ!」
「え、ってわお」
「やっぱり!」
「何がですか⁉︎」
「虫の上に人間の融合、アリアがそう言ったでしょ?」
「はい!」
「果たしてアレを虫って言うのかは知らないけどね」
*****
八足を広げ、複眼で私たちを見つめるソレ。蜘蛛。でも、それの上半身の人間がアリアを糸で縛っている。迂闊な攻撃はできない。
「うわ⁉︎」
マリアの悲鳴が聞こえた。
アリアの装備を剥がしていき、インナー一枚にされるアリア。そのままインナーの隙間にヌチャヌチャと音を立てつつ糸が入っていく。淫猥……だけど
「色気が無いのが……ううん、おっぱいが無いのが幸いね」
「言い直す理由がどこにあったのよ」
「おっぱいよ」
マモンは話にならない。マリアとエミリアは驚きに固まっている。私がなんとかしないと。
「弾丸でアリアを撃ち落とす……糸を断つ」
《狙撃銃》に持ち替え、スコープを覗いた瞬間、アリアが光に包まれて消えた。今の消え方は全損ではない。
「まさか……リンクロスト⁉︎」
「……嘘でしょ」
アリアの蜘蛛嫌いはそこまでだなんて……そう言えばここに蜘蛛が出ないって断言したのはマモン……まさか、知っていた?
「リンクロストって何ですか?」
「言葉通り《接続遮断》。プレイヤーがリアルで意識を失った時に起こる現象ね」
「……つまり?」
「マリアたちは落ちているアリアの装備を拾って。多分所有権解除されてるから」
「つまりどういう事なんですか⁉︎」
「「蜘蛛マジ無理」」
「あっはい」
《狙撃銃》のスコープから目を離し、おそらく《アラクネー》と呼ばれるモンスターの頭を撃つ。俊敏な動きで回避しようとしたけど
「それはダメよ」
マモンの矢が動きを止めた。麻痺矢。金持ちめ。おのれブルジョワ。
「レヴィ、多分こいつはレアモンスターよ」
「そうなの?」
「目撃情報が伏せられているって事は狩ったら良い事があるのよ」
「……アリアにはその恩恵は無いけどね」
銃を持ち替える。単発式の《拳銃》二丁持ち。
「スキルとして《二丁銃士》は無いのよね?」
「あるけど?」
「あ、そうなんだ」
「ただコスパが最悪で使うプレイヤーがいないだけ」
《アラクネー》に次々に弾丸をぶち込んでいく。
「動きが存外速いなぁ……」
「マリア! エミリア! 足を斬り落として!」
「「ええ!?」」
「無理にとは言わないけどさ!」
吐かれた毒液を駆けて避ける。噴出された糸を地面を転がって回避。振り下ろされる蜘蛛の足を銃で殴り、相殺。拳を避けて零距離から
「《スプレッドバースト》!」
残る弾丸を纏めて射出する《バースト》に散弾と同じ効果を付与する《スプレッド》。それを零距離から叩き込めば
「脚が!?」
まとめて足が二本吹き飛んだ。思っていたよりも硬い。地面を蹴って距離を取りつつリロードして
「マリア!」
「《スターダストスラスト》!」
高速の三連撃は足の一本を集中的に攻め立てた。だけど切れない。
「《ミーティアスラスト》!」
エミリアの追撃。舞い跳ぶ脚。バランスを崩す《アラクネー》。終わりね。
*****
「アリア! 無事だったの?」
「うーん、無事なのかな?」
「え?」
「SSOに入ったと思ったら夢だったっぽいし入りなおしてみると装備が全部無いし」
……レヴィさんとマモンさん、エミリアと顔を突き合わせ
「夢って思ってるみたいですよ?」
「そのまま通すの?」
「装備を渡さないといけないですし……」
「なら責任者として私が全部話してくるね」
「そもそもの原因でしょうが」
レヴィさんの言葉にあはは、と笑ったマモンさんはアリアと向き合って話す。どんどん表情が険しくなっていくアリア。
「……とりあえず装備を返して欲しいんだけど」
「あ、はい」
インベントリに余裕があった僕が運搬係だったので纏めて渡す。そしてアリアさんは無言で頷いて
「マモン、ちょっとお・は・な・ししようか?」
「お、お手柔らかに……?」
「ダーメ」
引きずられてマモンさんが奥の部屋に連れて行かれた。
「……しかし移転してから時間が経ってないせいかお客さん、来ないわね」
「それだけなんですかね」
「?」
「アリアのことだから移転した事を前の店の看板に書いていたりしないんじゃ?」
……三人して固まる。
「かもね」
「どうします?」
「あの店の所有権はアリアが持っているし……」
店の奥を見ても防音設備がしっかりしているので何も聞こえない。
アリア曰く鍛冶屋のカーンカンが近所迷惑になるから防音優先、との事だけど当事は擬音のせいで分からなかった。
「……確認に行ってきます」
「アリアには伝えておくからゆっくりしておいで」
「気が向いたらそうします」
アリアと同じ間違いは犯さない。ちゃんと屋外に出てから《転移の翼》を使い、三つ目の街《山と川の狭間》へ。
「……やっぱ」
店の中にプレイヤー達が。そしてポーションなどのアイテムを買っている。やっぱ所有権の放棄とかしてなかったか……
「マーリーア!」
「!? その声は!」
振り向くと黒髪に薄青の瞳、全身真っ黒のナイフ使いが。
「アジアン!」
今年もあと1日
しかし明日も変わらず投稿する予定
正月は無理やもしれませぬ
ぶっちゃけネタ切れになってきたのでイベントのアイデア募集
イベントではなく「このキャラの活躍を書いて欲しい」などでも良いんでお願いします
もう何も思いつかないのだ……
感想が欲しいなー、誰か送ってくれないかなー?




