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最終試合

「いやはや、決勝戦は《天弓》マモンと」

「《最強》アリアとなりましたねー」

「予想通りねぇ」

「さてここで、実況席に1人お呼びしております」


僕は一息吐いて


「あの、セブンスドラゴニックライオネルソードさんです!」

「巫山戯んな⁉︎」

「おや、どうしました? セブンスドラゴニックライオネルソードさん」

「お前あれか? 喧嘩売っているのか? 買うぞ? いくらでも買うぞ?」

「セブンスドラゴニックライオネルソードぉ? そんな事を言うなら私が黙ってないわよぉ?」


レヴィさんの言葉に声にならない叫びを上げるセブンスドラゴニックライオネルソードさん。すると


「あれ、本名なんだったっけ?」


無自覚に、もしくは分かっていてのエミリアの追撃。


「えー、実況席にいらしたサタンさんが泣きながら去って行ったのでやはり実況席に僕、マリアと」

「エミリアと」

「レヴィアタンでお送りするわぁ」


*****


「んっん〜」

「マモン、嬉しそうだね」

「だってアリアちゃんと久々にやり合えるのよー?」


僕はメニューを開いて装備の耐久を確認する。ついでにスキルも開いて経験値を消費しようとしたけど……どれを上げよう。


「マモン、《錬金術》と《鍛冶屋》のどっちを上げたら良いかな?」

「んー? 《料理》は良いの?」

「あ、《料理》も」


うーん、とマモンは悩んで


「《料理》?」

「オッケー」


《料理》スキルの《食材》と《調理》のスキルレベルを上げる。熟練度とスキルレベルが別物なのは分かり辛い。


「これで使う食材が良くなって調理したらステータスが一気に伸びるよ」

「だったらこれが終わったら何か作ってー」

「良いよ」


二本の剣の柄に指を付ける。ギリギリ抜けるくらいにして


「まだかなぁ」

「ふふふ、やる気満々って感じね」

「だってマモンとやるんだよ?」

「嫌がっていたくせに」

「あれは……ツンデレなの」


マモンが苦笑している。そして


『最終試合、開始よぉ!』


レヴィの宣言が終わるや否や、すでに矢は放たれた。たんたんたん、と地面に矢が刺さる。


「速いなー」

「マモンだって!」


ベルとの戦闘の時の速度よりも速く、もっと速く駆ける。……チーターのように。


「チーターって4足歩行だ⁉︎」

「えっと……どんな思考をしているの?」

「比較対象が分かんないの!」


*****


矢をつがえて放てるように。そのままアリアちゃんのフェイントを眺める。アリアちゃんの事だ。前か後ろから仕掛けるに違いない。だからこそ


「上ね」

「ばれた⁉︎」

「えいっ」


三射。剣で全てを切り払われるけど


「それは失敗」


爆発。アリアちゃんの小柄な体が吹き飛ぶ。ダメージは小さくない。このまま押し切る!


「はっ!」


弓をしならせ、矢を連射する。弓道は一切経験が無い。邪道も邪道の射方だ。

振られた剣を上半身を反らす事で回避してバク転の要領で蹴る。だけどその足を蹴ってアリアちゃんは一回転。矢を放つのが間に合わない。だから


「《正拳》!」

「《アークスラッシュ》!」


《体術》スキルの始まりにして最速の拳を放つという単純明快にして頂点のスキル、それを放つ。アリアちゃんの剣による一撃を相殺する。でもそれだけ。二撃目の切り上げは直撃した。

高く切り上げられた。でもそれは失策ね。


「ミスった⁉︎」

「正解よーっと」


自慢の長い足を使って空中で姿勢を立て直す。剣士じゃないから拘る必要もない。


「んっ、と」


麻痺矢、毒矢、睡眠矢、暗闇矢をつがえて


「《スプレッドアロー》!」


広いリング全域を埋め尽くさんと降り注ぐ矢。一つでも当たれば動きが一瞬で硬直して、追撃を加えられる。普通ならこれで勝ち確だ。

だけどアリアちゃんにその法則は一切当てはまらない。何故ならアリアちゃんは予測の斜め上を行く事に定評があるのだから!


「っ、見失った⁉︎」


思考に夢中になり、致命的なミスを犯した。だけどそこまで問題は無かった。リングの中央で降り注ぐ矢を回避し続けるアリアちゃんが目に入ったから。

矢は耐久が低いため、激突した瞬間に消滅する。つまりアリアちゃんに当たらなければリングに激突して消えるだけだ。


「やっぱり凄いなー」


笑いしか出ない。リングの端に着地して矢を構えても無反応。だけどあれは罠だ。

撃てばその一瞬だけ私に反撃の手が無くなる。最速の《正拳》でも一瞬必要、つまり二瞬必要。つまり先手を取った瞬間、負ける。


「……」

「……」

『ここに来てまさかの硬直⁉︎』

『これは先に動いた方の負け……って感じだね』

『そうねぇ……あの2人なら相手の行動に合わせて動けるからぁ、先に動いたら負けねぇ』


アリアちゃんは笑っている。私もきっと笑えている。


『刹那の一瞬を見極める、それがあの2人の至った境地にして極地よぉ』

『……それは人間に可能なのですか?』

『さぁ? ディープリンカーなら辿り着けるかもねぇ』

『ちょくちょく出て来るディープリンカーって何ですか?』

『マジパネェプレイヤーよぉ』

『なるほどよく分かりました』


もはや呼吸すら隙となる。お互いに硬直は終わらない。

私もアリアちゃんも動かない事によって何か利は無い。だからこそ動けないし動かない。でもね、アリアちゃん。


「勝ち負け程度に私はこだわらない!」

「そう言うと思ったよ!」


高速で移動して矢を放つ。それはアリアちゃんの首筋の鮮明な髪を散らしてノーダメージ。低い体勢で突っ込んで来たアリアちゃんに《正拳》。しかし


「《ソードリバーサル》!」


勢いのままに流された。そしてそのままもう片方の剣が私の喉を切ろうと迫る。でもね、アリアちゃん。《体術》スキルの真髄を見せてあげる。


「《ヘッドバット》!」

「え⁉︎」


通称頭突きで剣を弾く。体勢を崩すアリアちゃん。好機。蹴りを放つ。笑みが見えた。釣られた?


「っと、《ミーティアメテオ》!」


蹴りをあえて受け、距離を置いた直後の突進。矢をつがえる余裕はない! なら


「《流拳》!」

「やぁぁっ!」

「ふっ!」


振り下ろされる剣を交差させた手首のガントレットで受け止める。アリアちゃん謹製の逸品はきっちりと受け止めてくれた。


「この至近距離なら私の方が速い!」

「それはどうかな」

「何⁉︎」


アリアちゃんの手が迫る。それと私の拳が激突する。アリアちゃんも《体術》スキルを? ううん、一瞬だけど金属光沢が見えた。


「逆手持ちってわけね」

「そうさ」


鍔迫り合いのように押し合う。押し過ぎると距離を取られ、力を抜くと押し倒される。絶妙な力加減が必要だ。


『……これはちょっと予想外ねぇ』

『と、言いますと?』

『マモンは本来なら遠距離の射手よぉ? あんな距離で戦えるなんて予想外も良いところよぉ』

『ですがアリアも剣の柄で応戦していますよ?』

『あっちは普通よぉ』


蹴りを放とうにも隙が無い。拳を放とうにも動かせない。


「NDK?」

「なんで僕が煽られるのさ」

「うふふ、なんでかな?」


歳上として余裕のある姿を見せつけて一息に両手を突き出す。驚きの表情が笑みに変わるのを眺めつつメニューから装備を再び取り出す。


「《スプレッドアロー》!」

「あはははははははははははははははは!」


至極楽しそうに狂ったように笑うアリアちゃん。たまに戦闘狂バトルジャンキーになっちゃうのが玉に瑕ね。

全てを切り捨て、舞うように振られる剣が私を幾度となく切る。


『なんとー⁉︎ 至近距離で放たれた矢を全て打ち落とし、アリアが勝利した⁉︎』

『そうねぇ、どちらが勝ってもおかしくない、凄い戦いだったわぁ』


1しかない体力に苦笑する。するとアリアちゃんは右腕を上げて


「僕が、《最強》だ!」


堂々と言い放った。アリアちゃんも残り体力少ないのに。

マモンとアリアの最終戦を書いていたけどどっちもチート臭い


今回のトーナメントではマモンが実は強かったという事を知らしめたかっただけなんですよね

セブンスドラゴニックライオネルソードはオマケです


次回から日常に戻る予定です


ちなみにトーナメントの日は7月31日です

次回から8月に入ります

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