表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/401

鬼ヶ島

「あ、マリア。上の剣を何本か取ってきて」

「え」

「適当で良いよ」

「そうなんですか?」

「在庫を溜め込むよりも安く売った方が良いでしょ」

「それでも高いのがこの店なんですけど⁉︎」


二三日働いて若干慣れてきたマリア。愚痴愚痴言いながら仕事はきっちりこなす。


「それとあのトマトってプレイヤーのを作るけどどうする? 見る?」

「良いんですか?」

「別に代々伝わるなんて素敵滅法なものじゃないし」


素敵滅法、たまたま辞書を開いたら見つけた言葉。カッコよかったから使ってみた。


「素敵滅法って……分かりました」


マリアは上から5、6本剣やらなんやらを取ってきて並べる。僕よりも並べるのが上手だ。


「素材はこっち任せね……ねぇ、トマトって今はどこのダンジョンに行ってるの?」

「えっと……確かこの街の東のダンジョンに」

「なるほどね」


その辺りのプレイヤーの財布に合わせるとMに行くわけにもいかないね。


「Kに収めないとなぁ」

「え?」

「あんまり高過ぎると買えないでしょ? だから素材を考えているの」


あの辺りなら……鉄装備か鋼鉄装備だ。でも炎模様や琥珀色と注文があるからなぁ。


「うん、まずは鎧からだね」


素材は『鋼鉄インゴット』に『炎龍の鱗』だ。strも上がっちゃうけど大剣使いなら良いよね。


「……うん」


出来上がったのは『炎鋼鎧 防御力+39 耐久742』と弱いけど


「マリア、これって君たちでは強い方?」

「えーっと結構強いですね」


前線に立つにはこの5……6? 倍くらいの防御力が普通は求められる。セプトみたいな壁役は10倍くらいは平然と求めてくる。素材が足りなくなるんだけど。


「なるほどね。ならその辺りにしておくかな」

「えっと?」

「素材には『鋼鉄インゴット』と『琥珀石』でよいよね」


『琥珀石』は直接ステータスを高くする付与素材だ。確かvitが上がるはずだ。前衛なら良いよね。


*****


「む……思ったよりも高いな」

「だから言ったのに」

「そんな事言ったか?」

「また忘れたんだね」

「忘れたんじゃない、憶えていないだけだ」


トマトの言葉にマリアが苦笑する。仕方が無い。


「素材を売れるならその分値段は引くけど?」

「良いのか?」

「うん」


色々とトレードして


「うん、マリアはまだしばらくここにいる?」

「そのつもりですけど」

「なら店番よろしくね。僕はちょっと素材集め行って来るから」

「え」


*****


「うーん、おっかしぃなぁ」

「何がですか?」

「店番を任せたつもりなんだけどなぁ」

「クラッカーとしてダンジョンに潜るのは必要ですからね」

「だからって無理に僕と同じ所に来る必要は無かったんじゃないかな」


基本的にレグルスネメアの《獅子の咆哮》でカウンターを狙う防御メインでの戦い方をしている。でも何となく違和感を感じる。


「ひよちゃんとルフはトレインして。ちゅう吉とマリアは待機で」

『ちぃ!』

『ばぉん!』

「え」

『ちゅう』


インベントリに空きはたっぷり作ってきたしインベントリの中にアイテムを収納できるアイテムもある。これで大分余裕があるはず。


「あ、来るから警戒してね」

「あ、はい」

『ちぃ(アイスストーム)!』

『ばぉぉん(フレアスラッシュ)!』

「うん、良い感じに殲滅しそうだ……アレ」


殲滅ってトレインを頼んだ気もするけど……


「あ、普通に来ましたね」

「うーん、気のせいかもしれないけどひよちゃんが回復させたね、アレ」


うっすらと緑の回復エフェクトが見えた。そしてルフとひよちゃんが戻ってきた。その後ろからドドド、と音を立てながらこっちに迫るモンスターたち。鬼達だ。

今いるダンジョンは『鬼ヶ島』、鬼系のモンスターしか生息していない。PVPの練習にはうってつけの人型だ。


「こいつらは《鍛治屋》取っていたら《鬼鉄》ってレア金属を落とすよ」

「取ってないですよ」

「何を取っているのさ」

「戦闘系だけです」


腰の剣、エストックを抜いて構えるマリア。だけど


「マリアは僕の背後を守って」

「え」


地面を蹴って駆け出す。久々の感覚だ。振り下ろされる金棒がとてつもなく遅く感じる。


「《獅子の咆哮》!」


受け止めたレグルスネメアの剣身が輝く。眩い光が放たれ、鬼の上半身を消し飛ばした。そして全損。


「アークスラッシュ!」

『メテオインパクト!』


2連撃と振り降しが激突、相殺した。前に出てスライディングのようにして背後に回りこむ。


「ダブルテンペスト!」


16連撃で二体目の鬼も全損。


*****


鬼を狩るってアリアさんは言っていた。だけどアリアさんがやっているのは一方的な蹂躙だ。


「マリア! 前に出ないで良いかな?」

「あ、やってみても良いんですか!?」

「やりたいならね!」


マリアさんは鬼の上や壁や天井や色々な場所を駆け回る。そしてどんどん鬼を倒している。


『ちぃ?』

「あ」


このままで良いの? と、言うような視線を向けるひよちゃん? だったっけ。うん、そうだよね、ダメだよね。


「行きます!」

『ちぃ!』


付き添うかのようにひよちゃんが僕の頭の上を飛ぶ。そして


「ピアース!」


片手剣カテゴリー細剣属エストックは突きがメインの武器だ。エストックを左肩の辺りまで下げて全力で突き出す。それは鬼のお腹を刺して……抜けない。


「やばっ!?」

「よっこいしょういち!」


いきなり後ろから引っ張られた。エストックを手放してしまった。


「アリアさん!?」

「防御力が低いうちは正面から止めといた方が良いよ」

「アリアさんがそれを言いますか!?」

「僕は防御手段があるから良いんだよ! 《獅子の咆哮》!」


ぶぉん! と、大きな音を立てて振り下ろされた金棒はアリアさんの握る煌びやかな剣に阻まれた。そして剣から出た光によって鬼の体力が消えた。


「ほら、しっかりと持っててね。それと全力で突き刺すより突き飛ばすようなやり方のほうが良いよ」


アリアさんはエストックを手渡して駆けた。たんたたん、と足音が聞こえるだけでどこにいるかは分からないそしてどんどん鬼が消えていく。だけど僕に迫ってきた一体は残された。そう言うことか。


「落ち着け……そうだ、落ち着いて見極めろ」


振り下ろされる金棒の危険範囲から逃れる。そのまま何度か斬りつける。スキルを使ったら刺してしまうからだ。他のスキルも育てていれば良かった。斬撃とか。


「マリアー、頑張ってー」

「分かってますよっ! ピアース!」


振り下ろされる軌道に合わせて全力の突きを放つ。金棒とエストックが同時に弾き返されるがエストックのほうが小さいし短いし何よりも軽い。金棒よりも早く手元に引き戻せる。


「せやぁっ!」

「危ないよ!」

「え」


鬼が足を突き出した。ううん、違う。蹴りだ。


「ひよちゃん!」

『ちぃ(ハイヒール)!』

「っ!?」


ぶっ飛ばされ、壁に叩きつけられた。体力がグングン減る。レベル相応のダンジョンに行くべきだった。アリアさんに着いて行くべきじゃなかった。きっと怒られるんだろうなぁ。


「スターダストスラスト!」


鬼が光となって消えた。


「お疲れ様」


そう言ったアリアさんの姿が何故か救世主に見えた。

次回、作者すら忘れていたあのプレイヤーが再び登場


薔薇マリ面白いからオススメですよ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ