色々あった
「そもそも宿題が多いんだよ!」
「いや、やらなかったお姉ちゃんが悪いと思うよ?」
「シェリ姉〜、エミがいじめる〜」
「はいはい、頑張ってね。エミはこっちおいで。アリアちゃんの邪魔しちゃダメよ」
「はーい」
*****
スコープを覗く。その先に映るのは彼だ。
「はぁ……流沙」
「レヴィ? どうした?」
「五月蝿いルシファー。少し黙ってて」
「いや、移動しないのかよ?」
「するわよ。まだしないだけ」
「はぁ……やっぱまだベルに想いを伝えられないんだね」
その言葉を無視して……彼がこっちに手を振った。いや、私に手を振った。
「移動しろってさ」
「分かってるわよ……それで今日はなんだったっけ?」
「この前追加されたダンジョンの攻略よ」
「あー、そうだった気もするわね」
「ちなみにマモンと魔王、アリアとシエルとセプトとシェリルは今日は休みね」
「ジャックもでしょ」
前衛がアスモとブブ、中衛がベルとサタン、後衛が私とルシファーだ。どう考えてもおかしい並びね。
「何でこんな並びなの?」
「昨日の話を忘れたの? このダンジョンのリポップ速度がヤバイから前後挟み撃ちにならないようにって」
「そう言えばそんな事を言っていたような気もするわね」
「レヴィは忘れるのが早いなぁ……っと、早速後ろから来たよ」
振り返ると確かに鎧ががしゃがしゃと音を立てて迫って来ている。中身は空のモンスターだ。
「打ち漏らしは僕がやるから」
「一体も漏らさないわよ」
腰のベルト装備であるハーネスに手を伸ばす。どの銃にしようか……
「散弾銃とか良いんじゃない?」
「そうね……機関銃だと出費が激しいし」
「うちで一番金欠なのはレヴィだもんね」
「……前の見たいにMPを消費して撃つ銃が欲しい」
アレがあれば良いのに……
「MP銃か、アリアが作ってくれないの?」
「頼んでない」
「何で」
「金欠」
「あー、貸そうか?」
「良いわよ。他のスキル育ててそれで稼ぐから」
結局単発式の銃で一体ずつを確実に打ち倒す。すると
「思ったんだけどさ、銃で殴ったらダメージ判定無いの?」
「知らないだけであるかもしれないわね」
「試してみたら? その間くらいは守るよ」
「そう、頼むわね」
単発式の銃を抜いて二丁流。これで連射も良いかもしれない。金に糸目をつけなければ。
「一体通すよ」
「分かったわ」
ルシファーが鎧を一体素通りさせる。それに近づいてお腹に銃で切りつける。ダメージは小さいけどしっかりと発生した。これはスキルが存在する可能性があるかもしれない。
*****
「って事で来たんだけどアリアは?」
「アリアさんは夏休みの宿題をしないといけないらしくてまだ入らないそうです」
「やっぱりしてなかったのね……で、君は誰?」
いきなり店を訪れた鋭い目つきの女性が俺……いや、僕を睨む。何もしていないのに。
「僕はこの店でバイトをしているマリアロージュと言います」
「マリアロージュ? ふーん、なるほどね」
「えっと何がなるほどなんですか?」
「ブレイバーズみたいなプレイヤーなのね」
さっぱり分からない。
「それよりもご用件は?」
「アリアに頼んで情報収集とそれ用の銃を作ってもらおうと思ったんだけどいないんでしょ?」
「そうです……あ」
視線を向けた先でログインの際の光が。そして
「もー宿題多過ぎだよ!」
「やってないアリアちゃんが悪いのよ」
「多いのが悪い!」
「こんにちは、店長」
「んー、やほ、マリア」
「やっほ、アリア、シェリル」
この怖そうな女の人は店長ともう一人の人と知り合いなのか?
「さてと、何かあったの?」
「銃を使った近接スキルに付いて何か知らない?」
「んー? 銃弾にかけるお金がなくなったの?」
「ご明察」
なんだろう、話の内容は少し悲しくなるような感じだけど二人は楽しそうだ。
「とりあえず僕は何も知らないから調べとくよ。それと他にもあるんでしょ?」
「それ用の銃を作って欲しいの、安価で」
「どれまでなら許容範囲?」
「そうね……10M」
「そこそこの物しか作れないけど良いの?」
「それを使ってお金を貯めて良いのを作ってもらうの」
「なーるほどね。とりあえずは情報集めだ」
店長はメニューを開いて目をきょろきょろと動かして
「うーむ、銃で近接攻撃しまくったら出るかもね」
「見つからなかったのね……ま、試してみるわ」
「ひょっとしたら撃破数で計算かもよ」
「そうかもね、ありがとうシェリル」
「僕は!?」
「銃が出来たら一杯言うわ」
「なら良し」
「良いのかよ……」
静聴していたのだがついつい突っ込んでしまった。
「あれ? そちらの方は?」
「バイト」
「……アリアちゃん、もっと丁寧な説明しようよ」
「真っ赤中身にオレンジっぽい目の男の子。結構イケメン、以上」
「箇条書きじゃないの……初めまして、アリアちゃんの姉のシェリルです」
「あ、初めまして、マリア……です」
色々と言われても困るから簡潔に名乗る。しかしこの姉妹、かなり綺麗だ。学校で一番綺麗と言われている奴よりも綺麗だ。
*****
「銃を使った格闘術ってのがあるの?」
「ガンカタ……だったかな。そんなのがあったよ」
「それは現実に?」
「多分ね」
「でもどうやって探すの?」
「忘れてるかもしれないけどね、シェリ姉」
あ、ひよちゃんがルフの上で寝ている。僕も一緒に寝たいけど大多数のVRでは寝たらログアウト扱い、つまり寝落ちにされる。
「何を忘れているの?」
「え? 何の話だっけ?」
「アリアさんが忘れているじゃん……」
「おお、そうだった」
「マリアさんって良い突っ込み役になれそうな気がするわね」
シェリ姉があはは、と笑い、マリアが困ったように頭を掻く。するとお店の扉が開いて
「いらっしゃーい」
「いらっしゃいませ……ってトマトか」
「トマト?」
鎧を着てはいるけど兜は無い、そして両手剣を背中に背負っている男が店内に。トマト? リコピンって萌えキャラみたいだよね。名前だけだと可愛いし。
「知り合い?」
「同じクランのメンバーです」
「ふーん……何か用かな?」
「二つほど装備を作って欲しくてな」
「どんなの?」
「そうだな……口で言うのも難しいから箇条書きする」
送られてきたメッセージに目を通す。
『炎模様のある鎧に琥珀色の波打っている大剣』
「ふむふむ、なるほどね。で、いつまでにってのと素材は? 最低一週間は取るけど」
「……一週間で頼む」
「トマト、ここって結構高いけどお金足りるの?」
「ねぇ、シェリ姉。ここってそんなに高いのかな?」
「うーん、分かんないなぁ」
僕とシェリ姉の会話にマリアはため息を吐いた。そして
「普通三つ目の街でM単位の武具が一番安いなんてありえません!」
「そうかな? 違うのだと最初の街でもやっているプレイヤーはいたけど?」
「私はこれが初めてだから良く分かんないなぁ」
「あのシェリルさんでもですか?」
「え、私のことを知っているの?」
「そりゃあの伝説的なギルド、魔王の傘下のメンバーじゃないですか!」
「僕の方は知らなかったのにね」
ぼそりと呟くと
「アレは……ちょっと忘れていただけです」
困ったようにマリアは頭を掻いた。
タイトルがアバウト過ぎる件について
Twitterで更新報告しているんだけどさ、小説は毎日更新でTwitterでは毎日じゃないんだよね
なんでだろーね




