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バイト

「……ねぇ、君」

「はい」

「何を探しているのさ?」


僕はクレーマーっぽい男を眺めてため息を吐く。決闘でえいっ、てやったら懐かれたみたいだ。


「っと」


レベルが上がった。

SSOではポーションを錬金術によって作製、武器や防具の作製、強化、料理などの生産、加工系のスキルを使い、作り上げると経験値がもらえる。


「うーん。上げたいスキルも無いからなぁ」


《釣り》スキルも地味ーに育ててはいる。いるだけで積極的ではない。

ちなみにその恩恵として魚の群れが見つけやすくなった。だからどうした。まだ水中には入れないのに。


「ちっす」

「やぁ、スカイ。1人なの?」

「ああ。耐久回復を頼みに来たぜ」

「ほいほいっと。結構限界近く使ったね」


白黒の鍵剣、名前は忘れたの残り耐久は二桁。大きな一撃で削れる量だ。


「ギルメンのパワーレベリングしてたんだよ」

「なるほどね。お疲れ」

「ありがとさん……あいつは?」

「さぁ? 客っぽいけどね」


武器を眺めているからそう判断した。スカイもそれには同意のようだ。すると


「ここの店ってバイト募集ありますか?」

「えなんで?」

「バイトしたくなったんです」

「お帰りください」


出口を示すも反応無し。それどころか


「お願いします!」

「なんと……」

「落第点だな」

「「え?」」

「普通の土下座は甘い!」


スカイが何故か力説をする。それをぼーっと眺めているとスケートみたいにトリプルアクセルをしたりしている。土下座って何かな?


*****


「それで……えっとマリアロージュで良いんだよね?」

「あ、クランのメンバーからはマリアって呼ばれています」

「クラン?」

「動物園ってギルドです!」


どこかで聞いたような設定だけどとりあえずがんスルー。薔薇の某なんて知らない。


「それじゃマリア、まずは店内の案内をするから」

「はい!」

「バックに入って奥の扉の向こうは畑。薬草に上薬草、ブルーベリーにスーパーブルーベリーがあるよ」

「え?」

「薬草はポーションの素材、ブルーベリーはMPポーションの素材ね。収穫はNPCに任せているから」


バックヤードに戻り、上と下のどっちを案内しようかで悩む。


「上に行くよ」


階段を上って二階に。二回には依頼品や作り貯めた武具がある。ここから一本1Mの場所に移動させる。


「見たら分かるように平積みのは安物。一本1Mのやつね」

「安物⁉︎」


一本を適当に選んでステータスを覗く。

『名無し 攻撃力+168 耐久4832』


「いる?」

「え」

「一本くらいなら無料で上げられるけど?」

「良いんですか⁉︎」

「良いよ」


手に取ったそれを手渡す。所有権移転もきっちり済ませた。これを済ませないと万引きになる。ちなみにお金を払ってトレードが成立した瞬間に所有権移転は行われている。


「後は依頼品の取り置きとかだね。ほら、ベルの依頼品の『星獅子の杖』とかあるよ」

「えっと……一十百千……」

「万丈目サンダー!」

「え⁉︎」


一十百千ときたらついつい言っちゃうんだ。


「2Gだね。二十億だ」

「高過ぎますよ⁉︎」

「レグルス素材は全部高いの。僕のドロップ品だって少なかったんだから」

「レグルス……?」

「おっきな猫」

「ライオンじゃなくて?」

「おっきな猫」


マリアは呆れの混じった表情で頷いた。僕は何も間違っちゃいない。


「じゃ次は地下だね……っと」

『ちぃ!』

『ばぅっ!』

『ちゅう!』

「あ、おはよ」


ひよちゃんたちが地下から飛び出して来て階段を駆け上がる。そして僕の頭にひよちゃんが、足にルフが、肩にちゅう吉が張り付く。


「ごめん、マリア。ちょっと待ってね」

「はい」

「ひよちゃんはポーションを量産、ルフとちゅう吉はそれを小瓶に」


指示を出し、その通りに3人が動き出すのを確認して


「マリア、基本的に3人がポーションを量産しているから」

「は、はい」

「地下には僕の鍛治場がある他、倉庫だね」


*****


「それじゃ時給制にする? もっと細かくする?」

「細かくの方で」

「そっか」


うーん。どれくらいにしたものか……良し、


「十分で半Mでどうかな」

「え?」

「20分で1Mって感じ」

「そんなに良いんですか⁉︎」

「嫌なら下げるけど?」

「ありがとうございます!」

「タイムカードっぽいシステムがあったと思うから待ってて」


マリアが驚きの表情でいる間に画面を操作していると


「そう言えば俺は一体何をしたら良いんですか?」

「あー、うん、そうだね。マリアには店番を任せたいんだ」

「それだけですか?」

「うん。結構お客さん来るからね」


僕が素材を集めに奔走している間にも色々来るから。もっともその場合は予約制だけど。


「あれー? アリアちゃん?」

「む、マモンか。ちょうど良いや、接客して来れる?」

「……」

「じゃとりあえず着いて来て。カウンターの内側で見ているだけで良いから」

「……どうしてそんなに優しくしてくれるんですか?」


優しく?


「優しくしているの?」

「え」

「僕は間違えられないように教えているだけだし」


とりあえずあまり待たせるのもアレなので


「お待たせー」

「お待たされたー」

「1人なの?」

「うん。《にゃんにゃんボウ》の性能を試しただけだからね」

「正式に《にゃんにゃんボウ》なんだね」

「えへへ」


マモンが微笑む。そしてマリアを見て驚きの眼差しを僕に向ける。


「ご注文ですか?」

「ノーよ。あの子、アリアちゃんのお友だち?」

「バイトだよ」

「え、バイトなんだ」


マモンはマリアをマジマジと見つめて


「知っている小説に出て来るような……」

「気のせいじゃないかな」


*****


「それじゃメンテナンスするほど使い込んだの?」

「だって《にゃんにゃんボウ》が強いんだもん」


拗ねたように頬を膨らませるマモン。それはベルに見せてあげて欲しい。


「そうだ、アリアちゃん」

「ぬー?」

「鏃を新しく作ってくれないかな?」

「鍛治屋ね。素材は?」

「《ナーガ》の鱗」

「アレかぁ。硬いし毒がある鬼畜な鏃になりそうだね」

「そうするのよ」


マモンはあはは、と笑うけど怖い。


「とりあえず2スタック素材を渡しておくね」

「はいはーい。いつまでにしとく?」

「んー、今ってどれくらい依頼があるの?」


メニューからメモを開く。そこの横線の引かれていないのを数えると


「30ちょっと」

「ならゆっくりで良いよ。8月の10までとか?」

「2週間ね。分かったよ」


素材を受け取って


「棒の部分と羽は?」

「そっちは前のと同じで」


《木鬼の枝》と《極彩鳥の羽》が今のマモンの矢の素材だ。コスパ最悪と言われた理由がこの辺りにある。

銃は弾丸と火薬が必要だけど素材を集めるのにモンスターを狩る必要は無い。


「あ、そうだ。アリアちゃん、野菜炒め一つ」

「素材はどうする?」

「んー、dex寄せで」

「魚系の素材ね」


野菜炒めに魚を使うのは難しいので


「焼き魚と野菜炒めで良い?」

「良いよー」


良かったらしい。


*****


「ほら、アリアちゃん。宿題頑張ってよ?」

「全然終わらないよぉ……」

「溜め込んだアリアちゃんが悪いの。ささ、頑張って頑張って」


アイスを舐めながらシェリ姉は楽しそうに笑った。性格悪いよ。

薔薇のマリ何とかってスニーカー文庫から出ている著十文字青の面白いラノベなんて知りませんとも

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