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クレーマー(っぽいの)

レグルスのドロップアイテムは種類がある。

『星獅子の毛皮』『星獅子の爪』『星獅子の牙』『星獅子の鬣』『星獅子の尾』だ。

爪と牙は武器に、他は防具を作るのに使える。つまり何が言いたいかと言うと


「混み過ぎだよねぇ⁉︎」


レグルス戦に参加したプレイヤーへの報酬から装備を作って欲しいって依頼が多過ぎるのだ。


*****


「なんでこんなに高いんですか⁉︎」

「なんでって知らないの?」

「知らないから聞いているんです!」

「素材に性能と手数料が発生するから」

「だからってこんなに高くして良いと思っているんですか!」


売れているんだけど?

そのプレイヤーが指差している一本1Mの剣などは売れ筋だ。素材はいらないし金さえあれば良い。その上僕は素材を買い取ったりもしているからだ。


「君がどう思おうと勝手だけどその意見を押し付けるのは間違いよ」

「マモン! ナイスタイミング!」

「ナイスタイミングも何も出来たんでしょ?」

「おうともさ!」


奥の部屋の鍛冶場に置いていたそれを手に取り、店内に戻る。


「名前はマモンが付ける?」

「そうね……にゃんにゃんボウ」

「チョイス⁉︎」

「冗談よ」


マモンは澄ました顔で言う。僕の驚きを返して。


「とりあえず名前を知らないこっちの剃ってる部分は「節の部分ね」

「そこはレグルスの爪と牙を加工したので弦は尾、これで良かったよね」

「そうね」

「攻撃力は192と結構高いよ。耐久も3002だから中々壊れないし」

「近接でもないのにそんなに高くなるのね」

「素材がとーっても硬いやつだったからね」

「なるほどね」

「んでもってdexーstrで良かったんだよね?」

「うん、変える気はしばらく無いからね」


にゃんにゃんボウのステータスを開いて


「dexが83、strが62上がるね」

「やっぱりdexが上がり辛い?」

「うん。付与素材が少ないもん」

「ゲットしたらまた来るねー」

「分かったよ。料金は100Mね」

「はーい」


トレードを済ませてマモンはスキップするようにカーマインブラックスミスを出て行った。さてと


「で、何の話だっけ?」

「高過ぎって話です!」

「そう言えばそうだったね。でも高いの?」

「M単位がそもそもおかしいんです!」

「買う人がいるからM単位でやれてるの。それにどうしてそれが悪いみたく言うのさ」

「もっと他のプレイヤーの事を考えるべきです!」


ため息を吐きたくなるような言葉だ。


「そいつはおかしくないか?」

「そうそうってお兄ちゃんの格好の方がおかしくない⁉︎」

「この装備を作ったのお前だろ⁉︎」


ご当地キャラみたいに海老フライの格好をしたお兄ちゃんが店内に。


「どう? 使い心地は」

「性能か凄いけど周囲の視線が辛い……」

「大丈夫、似合っているよ、お兄ちゃん」

「嬉しくねーよ⁉︎」


お兄ちゃんは躊躇無く装備を換える。酷い。


「で? 他のプレイヤーの事も考えろって?」

「そ、そうです!」

「本気ならお笑い種だ」


真っ黒な裾の擦り切れたローブに身を包み、髑髏の面を装着したお兄ちゃんはまごう事無き《死神》だ。


「僕が間違っているって言うんですか!」

「ああ。お前さんが何を思おうとここの店は繁盛しているんだ。例え固定客だとしてもな」

「っ……! 僕は間違っていない!」

「……はぁ、どうする?」


お兄ちゃんの呆れたような反応に頷いて


「追い出して」


*****


横暴だのなんだの騒いでいたけど値段にケチつける方が悪い。


「そもそもなんであんなプレイヤーがいるのさ」

「そりゃー、自己中な人間がいるのはどこにでもだろ」

「お前ら二人が原因だろうが」

「「え?」」

「動画投稿サイトでも覗いてみろ。お前らがレグルス戦で色々していたのが有名なんだよ」


お兄ちゃんと顔を見合わせて


「とりあえず後で確認してみるよ」

「それが良い……それよりもスカーレットの回復を頼む」

「はいはーいっと。そういえば鍛冶屋の上級のレベルが上がったんだけどね」

「ほう?」

「武器を強化した際に《真》化が出来るんだってさ」

「なんだそれ?」

「字面的に武器の覚醒的な感じか?」


魔王はメニューを開き、掲示板を開く。そして


「一切情報が無いな」

「そうなんだよね。どうも僕が最初にここまで鍛えたっぽい」

「凄いけどよ……試したことは無いのか?」

「中々機会が無くてねー」

「なんか基準でもあるのか?」

「うーん、それが良く分かんないんだよねー」

「なら素材を使って性能が高いのを作って試せば良いじゃないか」


魔王の言葉は間違いない。だけど


「そんなチャレンジャー精神の無いことはしたくない……っ!」

「そうか」

「ならどうするんだよ」

「この《水龍の天剣》で試してみるぜ!」

「水龍素材ってvitだよな?」

「つまり元々使っていなかった物か」


二人のため息は聞かなかった。


*****


「いらっしゃい、何をお探し?」

「片手剣を」

「短剣? 長剣?」

「まだどっちか決めてなくて……」


学校の友達にこの街で性能の良い鍛冶屋がいるって連れて来られたのにそこは物凄いぼったくりだった。

なんなんだよ1Mって。どう言う単位なんだよ。調べてみたら百万の事だって分かったし。


「はぁ……」

「お気に召す物は無かったか?」

「あ、いえ」


考え事に夢中で見ていなかった。いくつかのステータスを見てみるけど


(全体的に低いな……)


あの店に比べたら……


「カーマイン……何とかってお店知ってますか?」

「カーマインブラックスミスの事?」

「あ、それです」

「あそこは凄いよね」

「え?」


あんなぼったくりのお店が?


「あそこの店長のアリアは最強だしね」

「あんなちんちくりんが!?」

「そんな言い方は無いんじゃないかな……ああ、知りたいんだったね」


店主の男プレイヤーはちょっと目を細めて


「武器屋兼鍛治屋兼ポーション屋兼料理屋カーマインブラックスミス」

「え?」

「それぞれがかなりの領域だ。その上で武器屋鍛冶屋としては最高峰、ポーションもだ。料理は知らん」

「……凄いってのは分かったけど」

「戦ってみれば分かるさ、あの圧倒的な暴風と。嵐のような旋風と」


若干中二入っているみたいだった。


*****


「……また君か。何? 今度は値段にケチつけるだけじゃ満足しないの?」

「……俺と戦ってください」

「やだよ、今日は武器屋のおねーさんに努めるの」

「え」


おねーさんって言うには俺よりも年下っぽいけど。


「お願いします!」

「何でさ」

「……さっきの事は謝ります!」

「そんな嫌々みたいな顔で言われても」

「お願いします!」

「……レベルは」

「18です」

「そんなに低くてよくこの街に来れたね」

「学校の友人に連れてきてもらったんです」


余り興味無さそうに頷くアリアさん。


「そのレベルで僕と戦ったら完全に僕が初心者いじめになっちゃうじゃん」


と、言われたので


「どこからでもかかって来なよ」


両方の手を空にして俺を眺めるアリアさんの姿がある。舐められている。その澄ました顔に一撃をぶち込みたい。なのに


「これさ、僕が弱いものいじめをしたってだけで一切何にも無いじゃん」

「……」


一撃も当てられなかった。


「……俺を強くしてくれませんか?」

「何でさ」

「……」

「強くなりたいならお金を貯めて装備を整えれば良いんだよ」


だから


「僕は身の丈に会うような値段設定をしているんだよ」

今回から2章に入ります

何も変わりません

登場人物が増えたりするだけです

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