決着
縦からの振り下ろし、横からの薙ぎを同時に放つ。だけどお兄ちゃんは平然と二本の剣を鎌の刃で受け止めた。
「相変わらず硬いっ!」
「そっちこそな!」
鎌の刃が首を刈るような軌道で迫る。軌道上に《炎龍の天剣》の柄を割り込ませて防御、《風龍の天剣》で斬りつける。しかし柄に阻まれる。
「やっぱりあの時みたいだ」
「だな」
僕が目標にしていた『最強』を越えようと戦った際の。
『いやー、息もつけない攻防でしたねー』
『そう? どっちも全力じゃないよ?』
『お互いのプレイスタイルを放棄した手加減しているからな』
『と、するともっと凄くなると?』
『アリアちゃんだからね』
『ジャックだしな』
「わざわざ実況まで付いているんだ、全力を尽くそうぜ」
「尽くすに値するかは僕が決めるよ」
だって
「僕が最強なんだから!」
「……最強の名前、返してもらうぜ!」
同時に突っ込む、と見せかけて背後に回り込む。しかし鎌が迫っていた。読まれていた。さすがだ。
「ソードリバーサル!」
「ジャッジメント!」
逆手に持った鎌からの連続切り。それを高速移動で回避して撹乱する。
『おお⁉︎ アリアの残像が見える⁉︎』
『ようやくやる気を出したみたいね』
『全力じゃないがな』
『え、あれでも?』
『アリアちゃんが本気で動いたら残像が攻撃して来るようなものだから』
『あれは範囲攻撃でもどうにもならないし速過ぎるからな……』
『えー、何故か魔王が遠い目をしたので実況に戻りまおおっと⁉︎ 土壇場でアリアの剣が折れた⁉︎』
『ううん、折れたんじゃないね』
そう、折れたんじゃない。作戦通りだ。現にお兄ちゃんは好機とばかりに攻め込もうとしている。だからメニューの装備欄に《獅子剣レグルスネメア》を。
「《獅子の咆哮》!」
「げぇっ⁉︎」
直撃、ぶっ飛ばす。体力は結構減ったけど6割以上ある。
「硬いよ!」
「え、なんで怒られたの?」
「硬いからだよ!」
「アッハイ」
飛び込み、《炎龍の天剣》で斬りかかる。剣の腹を素手で殴られて逸らされる。6、という微量過ぎるダメージに笑いそうになる。
すれ違うタイミングでレグルスネメアを振るう。鎌で受けようとした直後、避けられた。
「あぶねーな」
「そうなの?」
「いや、多分その剣の特性は押し合ったり鍔迫り合いになると勝つって感じじゃね?」
「そうなんだ」
「持ち主しっかりしろよ……な!」
レグルスネメアで鎌を受け止める。すると確かにダメージが発生した。
「防御専用じゃなかったんだ⁉︎」
「ホントしっかりしろよ⁉︎」
お兄ちゃんの叫びにあはは、と笑いながら剣を振る。鎌とぶつかり、避け合う。
「危な⁉︎」
「惜しいっ!」
お兄ちゃんの顔面を突くが鎌の石突きに受け止められた。レグルスネメアで切っていたらダメージは極小だし……
「ってええ⁉︎ さっき折らなかったか⁉︎」
「あれは《錫の剣》だよ!」
中々使う機会が無く、インベントリで発酵しかけていた剣は隙を作るために耐久を失い、消滅した。
「やっぱりギリギリで回復は無し縛りしたのが良かったね」
「長引かずに済むな……っ!」
至近距離で柄と石突きで打ち合う。蹴ろうとした脚を足場に跳躍して飛び下がる。
「クイックリープ!」
「ソーン!」
速攻の一撃はしっかりと迎撃されるけど
「アークスラッシュ!」
「ち、ジャッジメント!」
2連撃を打ち破り、3連撃が襲いかかる。最初の一撃はアークスラッシュと相殺、二撃は横に回転して回避、三撃は地面すれすれに倒れ込んで回避した。
そのまま起き上がりざまに
「メテオインパクト!」
「……かすったか」
「当たると思ったんだけどなー」
「甘い甘い」
「だって僕は甘党だもん」
「辛党と兼党しているだろうが」
お兄ちゃんは苦笑気味に言う。確かにその通りだ。
「お?」
「……」
二本の剣を背中の鞘に収め、腰に移動させる。速度任せの抜剣切りだ。
「居合斬りか……なら」
鎌の刃を背中の後ろに隠すように構え、体勢を低くするお兄ちゃん。そして
「っ!」
「っ!」
剣と鎌が激突、甲高い金属音が耳を突く。それを意に介さずに
「アークスラッシュ!」
「当たるかよ!」
一撃目の剣をバックステップで回避された。そのまま二撃目はかわされると思ったら
「ギルティ!」
振り下ろした直後を狙われた。いくらスキル後硬直が一瞬にも満たないとは言え一瞬にも満たない瞬間はどうしようもない。痛い。体力を見る、5割半。結構やられた。
「やっぱ中々ダメージ通らねぇな」
「約半分もっていったのに?」
「もうちょい削るつもりだったさ」
「むぅ」
舐めているわけじゃない。それはきっとお兄ちゃんも同じだ。だけど
「手加減は無しって言ったよね」
「お前が言うな」
あはは、ははは、と一瞬に笑って
「《リンク》!」
「げぇっ⁉︎」
僕たち《魔王の傘下》全員のステータスの何割かが僕に流れ込む。
「あいつら全員が相手かよ……」
「面白いでしょ?」
「まったくだ!」
破れかぶれじゃない笑みを浮かべてお兄ちゃんは突撃して来る。その頭目掛けて剣を振り下ろす。
「グリムサイズ!」
「ぬっ⁉︎」
首を刈る軌道の斬撃。開いたままの装備欄を変更して
「《獅子の咆哮》!」
「チート武器じゃねぇか⁉︎」
「……削り切れない……」
残り3割の体力にため息を吐く。勝てそうだけど勝てない気がする。
「アリア」
「何? お兄ちゃん」
「多分これが最後だな」
「ううん、違うよ」
「?」
「これからだよ、お兄ちゃん!」
驚いたような表情からの笑み、そして
「行くぜ! 最後だ!」
「今のが、ね!」
全速力で駆ける。振り下ろされる鎌をレグルスネメアの柄で弾く。地味なダメージがお兄ちゃんに通る。
「アークスラッシュ!」
「ジャッジメント!」
「ソードリバーサル! スターダストスラスト!」
「ソーン!」
至近距離での短いスキルの応酬。もういい加減のんびりとやり合うのはごめんだ。
「メテオブラスト!」
「サイズブロック! アッパーソーン!」
真下から刈り上げるような鎌をレグルスネメアで防御する。ここで《獅子の咆哮》を使えば良かったかもしれない。だけど武器に頼り切って勝つなんて僕のプライドが許さない。
まぁ、ダメージはあるし打ち上げられたけどね。
「エアリアルジャッジメント!」
「わわ!? ミーティアメテオ!」
立て回転(下回り)しつつの鎌による斬撃を真上から突撃して相殺。お兄ちゃんは勢いを殺され落下。僕は体勢を崩して落下。後ろ周りの要領で起き上が……ろうとしたけど横回転して起き上がろうとしているお兄ちゃんに切りかかる。
『おお!? なんだか駄々っ子のような攻撃をし始めましたよ!?』
『起き上がる時間も惜しいって感じね』
『みたいだな……だがそろそろ決着がつくさ』
「ああ、そうだな!」
「まったくだね!」
お互いに同時に距離を取って構える。
「ライトジャッジメント!」
「ダブルサイクロン!」
2本の天剣による横薙ぎが下からの振り上げに阻まれ、右下からの斬り上げが左上からの斬り下ろしと激突。斬撃と斬撃がお互いに打ち消しあう。
一撃の威力が軽く、手数で攻める二刀流、一撃が重く、手数が少ない大鎌。
最後を飾るには相応しい全力のスキルがぶつかり合った。
*****
そして僕達のギルドのメンバーが13人になった。
タイトル詐欺だこれ
決着は着いたかもしれないけどどっちが勝ったって分からないもん
詐欺だ詐欺
さりげなく慎ましく唐突に脈絡無くノリとテンションのままになろうコンに参加してみた
次回は日常回になるかなー?
少なくとも戦闘少なめ




