決闘
「決闘する際にルールを決めるの?」
「フツー正々堂々ってやるからにはそうでしょ」
「え、正々堂々なの?」
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「もしもしー? ジャック?」
『アリアか。リアルで連絡を取るのは久しぶりだな』
「うん、5、6ヶ月ぶり」
『それで?』
「正々堂々やる?」
『……一対一ならどうでも良いだろ』
「りょーかい。それじゃ日曜日にねー」
『明日だろ。それと宿題しろよ』
「……ナンノコトカナー」
『直美がさっき爆笑しながら電話かけてきた』
「直美が?」
『ああ。おかげで現在進行形で浮気を疑われている』
「あはははは」
『笑い事じゃねー』
*****
「……」
「……」
どうしてこうなった。
かつては『最強』、今では『死神』と呼ばれているプレイヤーは考えた。そしてあっさりと答えは出た。
「俺が負けず嫌いなだけだ」
単純明快な答えが出た。だからこの全損プレイヤーの抜け殻が山積みされているわけだ。
「アリアに負けたのは悔しかったな」
独りごちる。
あの敗北で若干気が沈んでいた。そんな時に圏外に出た俺はPKに襲われたんだ。それを全て返り討ちにした。そして
「膨大な経験値……」
普通にモンスターを狩るよりも多く手に入った経験値。プレイヤーの方が同レベルのモンスターでも圧倒的に多い。
「……プレイヤーを狩ってレベルを上げるか」
幸いと言うべきか、このゲームにPKは禁止されておらず、推奨されているのだから。
これは『死神』が傘下を抜ける少しの事だった。
*****
みんなの明るさは会社で中々結果を出せずに落ち込んでいた俺の心を温めた。しかし俺はみんなに隠れてPKをしていた。そのおかげでレベルも大分上がった。
「……明るい方法で強くなったあいつら」
それと暗い方法で強くなった俺。どちらが正しいのかは分からない。いや、正しさなんて求めるのが間違っているんだ。
「俺たちはどこまでいっても究極的に別人なんだから」
*****
「『首刈り』が出たぞ!」
「やれ! 囲め!」
「全損だけしなければ助かる!」
「遅え!」
振り下ろされる剣を持った腕を鎌で刈る。そのまま両刃の鎌だから手首を返さずに切る。
「遠距離攻撃を!」
「総員! 離れろ!」
飛んでくる矢を回避し、駆け抜ける。すれ違いざまに斬りつける。《無言》スキルと《鎌》スキルの併用、それで無双出来る。
「……もう終わりかよ、だらしないな」
ため息を吐いた。
*****
「だからその『首刈り』ってプレイヤーをどーにかしないといけないと思うんだよ」
「何がだからなんだよ……誰かマトモな説明してくれ」
「はいはーい。簡単に言うとちょー強いPKが出たからそいつをとっちめて欲しいってアリアを通しての依頼ね」
「プレイヤー依頼か。相手は?」
そんな会話に冷や汗が出る。
「アスモ、特定出来たか?」
「無理ゲー」
「ブブは?」
「鎌使いってのと面つけててそれの柄が変わるってだけ」
「そうか……ジャック?」
魔王がいつの間にか目の前にいた。
「どうした? 気分でも悪いのか?」
「VRだから過剰に示されているだけじゃない?」
「いや、心なしか顔色が悪い」
その会話にどんどん気分が悪くなる。
「……あらぁ? 確認だけどぉ、ジャックがこの前変なお面ドロップしてなかったぁ?」
「あー、言ってたね。確か模様が変わ……る?」
「⁉︎」
「おいおい、いくらジャックでもそんな事は無いよな」
ベルの言葉は軽く、優しくもあった。だから
「……」
「おい⁉︎」
「ジャックさん⁉︎」
「お兄ちゃん⁉︎」
俺はギルドホームの出口に向かう。するとアリアがわざわざ前に回り込んで来た。
「お兄ちゃんが『首刈り』なの?」
「……俺が名乗ったわけじゃないけどな」
「っ⁉︎」
「呼ぶなら……そうだな」
つける面の特徴的に……幻とかそんな感じだな。
「幻影面とでも呼べ」
「幻影面……英語でファントムマスクね」
「何故英語にしたんだ」
「さぁ? とりあえず戻って。ジャック」
「……いや」
メニューを開き、ギルドの欄を開く。そのまま脱退の文字をタップ。確認が来る。もちろんYesをタップ。
「じゃあな」
「待って! お兄ちゃ……
*****
「……我ながら大分酷いな」
「あだ〜?」
「大丈夫だよ、紗凪。お母さんは買い物に行っているだけ」
「あだだ〜♪」
愛娘の紗凪はハーフの俺と純日本人の李莉の子、つまりクオーターだ。
「とと、ちょっと降ろすよ」
「あだ〜」
ベビーベッドの中に紗凪をそっと降ろして玄関に。
「お帰り」
「ただいまって言うより先に持って」
「はいはい」
買い物袋を受け取って台所の冷蔵庫の近くに移動させる。
「ただいま、ジャック。紗凪は?」
「元気だよ」
「なら良いわ……さ、早く冷蔵庫の中に入れないと。夏だから足が早いのよ」
「分かった」
冷蔵庫の前で夫婦でゴソゴソやって
「何かが切り替えられそう?」
「え」
「何かあるんでしょ? 私の知らないあなたに」
「……」
「だからさっさと入れて行って来なさい」
「あ、ああ」
「別に見ないからハッチャケて来なさい」
「いや……そうだな」
*****
『さぁさぁ皆さんこんにちは、セスタスです』
『どーもー、解説のマモンと』
『魔王です』
『しかし今回の決闘を見るためにたくさんのプレイヤーが集まりましたねー』
『アリアちゃんと《死神》の一騎打ちだからね』
『《死神》はレグルス戦で途中参加したアリアが兄と呼んで親しんでいるプレイヤーなんですよ』
『アリアさんが兄と呼ぶのですか……中々の好試合になりそうですね』
*****
「やっほー、お兄ちゃん」
「よぉ、アリア」
大きな鎌を肩に担ぐように構えて歩いて闘技場の中央に。
ここは7つ目の街、闘技場がある他洞窟が多く存在する街だ。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「なんだ?」
「僕が勝ったら帰って来てよ」
「……俺が勝ったら?」
「一緒に帰ろうよ」
「……選択肢が無いだろう」
「大丈夫、一緒に謝るから」
僕の言葉にお兄ちゃんは困ったような笑みを浮かべて
「解説、始めてくれ」
「始めていいよー」
『試合開始っっ!』
「アークスラッシュ!」
「ソーン!」
開始と同時の高速2連撃。それは単発重攻撃と正面衝突、相殺した。
「ダブルサークル!」
自分を中心に4閃。当たらない。離れた。離れたところから鎌を振りかぶった。遠距離攻撃。
「ギルティ!」
「……メテオインパクト!」
ダメージが大きい部位は回転して狙えない。だから適当に切りつける。切れなかった。吹き飛ばしただけだ。
「よっと」
「え、手元に戻るんだ」
「ああ、便利だろ?」
そう笑って突っ込んで来る。スキルを撃つ暇は無い。飛び込んでお互いにスキルを使わずに切り合う。剣で鎌を弾き、石突きを剣で止める。
「あの時みたいだね!」
「ああ!」
どっちが最強かを決めた時みたいだ。あの時はお互いに笑っていた。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「ん? なんだよ」
お互いに距離を取った。
「手加減は無しだよ」
「こっちの台詞だ!」
お互いに同時に間合いに飛び込んだ。
*****
「アリアちゃん、楽しそうだね」
「だな」
「きっと……何だっけ、《死神》ってプレイヤーと仲が良いんだろうな」
「そうねぇ」
「どっちが勝っても後腐れなし」
「あの時とは違った結果になるかな」
「ならないと思うよ」
「どっちが勝つかに賭けるか?」
「2人で賭けをしても詰まらん」
観客席はマイペースだった。
会話が多いんだよ
誰がこんなに書いたんだよ
あ、私か
どーもみなさん、孤独っぽい面をした男、略して孤面の男です
次回辺りこの章は終わりますね
一応アリアが全体的に最強と認められたところで1章のつもりなわけで若干今の部分は蛇足と言いますか……
それでなんですけどね、次章からどんな展開を描いて欲しいなどがあったら言って欲しいです
リアルの友人みたいに魔王を活躍させてくれ、みたいな感じでも構いませんので
案がありましたら是非教えてください




