決闘の前に
「おおう?」
レグルスネメアのステータスの欄に強化、とある。とりあえず覗いてみると
「……なるほどね」
「今の見た以上中々驚けないと思うわぁ」
「で、何かあったの?」
「うん、レグルスの強化方法が分かったの」
『アント10体討伐ー攻撃力+1』
『ガードアント10体討伐ー攻撃力+1』
と、たくさんある。ちなみに『アント10』を突破すると『アント20』と増える。灰色のツリーだけど確認は出来るようだ。ちなみにツリーは系統に分かれている。アント、ドラゴンなどって感じに。
*****
「……アリア」
「どうしたの? お兄ちゃん」
「……俺と決闘してくれないか?」
「へ?」
アリアの目がパチクリと瞬き、そして
「僕と?」
「ああ」
「誰が?」
「俺が」
「良いの?」
「ああ」
アリアの確認に答える。するとアリアは俯いて震えた。泣かせたか?
「っしゃーっ! やろう! 今すぐやろう!」
「えええ⁉︎ 今すぐは無理だ!」
「えー⁉︎」
「予定を立ててやるべきだろ!」
「思い立ったが吉日!」
「思いつきで行動したら後悔するぞ!」
昔のように言い合う。すると
がんっ! ごすっ!
「はい、二人共落ち着いた?」
「痛いよマモン」
「痛くしたのよ」
「相変わらず容赦ないな」
「そう? スキルを使わなかったんだけど?」
マモンは弓矢を取り出して微笑む。相変わらずブラックな奴だ。
「それで? 決闘するの?」
「ああ」
「うん!」
「でも今日は疲れているからまた今度にしなさい。来週の日曜日、来れる?」
「……ああ、問題無い」
「うん! 夏休みだからね!」
「宿題しているのか?」
「してなさそうね」
俺の言葉にマモンが頷き、アリアは頬を膨らませた。
「自由研究に漢字毎日二百字書いてるか?」
「数学もしっかりやってる?」
顔を逸らすアリア。それにみんなで笑った。
「で、お前らが決闘する理由はなんだ?」
「あー、一応区切りのようなものか踏ん切りのようなものだ」
「ほう、戻って来るのか? 俺は歓迎するぜ」
魔王の言葉に苦笑して
「そのようなものだ」
「ならアリアが負けたら次俺な」
「いーや、俺だ」
「私よ」
「私だわぁ」
「俺っしょ」
「んにゃ、俺だろ」
「いやいや、俺たちだよな」
「まったくだね」
……良い奴らだ。相変わらずだ。
「空気についてけねー」
「俺もだ」
「アリアちゃん、逆立ちするとスカートの中が見えるから辞めなさい」
「大丈夫! スパッツ的なの履いてるから!」
「だとしてもよ、女の子らしく逆立ちじゃなくて棒高跳びにしなさい」
「「「女の子らしく?」」」
突っ込んでしまった。するとアリアは躊躇無く棒高跳びを始めて……ひよちゃん? に掴まれて攫われた。
「あれ? 今のって」
「ひよちゃん……じゃなかったよな」
「普通のモンスターね」
「「「「……⁉︎」」」」
「ま、アリアなら問題無いだろ」
「そうだな、新武器の性能を確かめているだろう」
「でもひよちゃんがルフとちゅう吉を乗せて行っちゃったよ?」
「撃ち落とすんじゃないか?」
「……それ、アリアちゃんが落下しない?」
「ひよちゃんがキャッチするだろ」
「ルフとちゅう吉が乗っているよ?」
「「「……」」」
「助けに行くぞ!」
「自力で助かりそうな気もするけどな」
シエルの言葉にやれやれ、とセプトが立ち上がる。
「おいで、アルカ。どっちか分かる?」
『……ちゅっ!』
「ありがとうね。向こうだって」
シェリルの掌に栗鼠が出て来て尻尾で指さす。テイムモンスターか。だが尻尾で指さすっておかしいよな?
「行くよ」
「俺も行こう」
「……あれ」
「む」
「えーっと」
「……問題でもあったか?」
少し不安になった。すると
「名前は?」
「知らないからな」
「ごめんなさい」
「……そうだったな」
知っている顔ばかりだから名乗るのを忘れていた。
*****
「ジャック? どうしたの?」
「……いや、なんでも無いよ」
俺は娘の紗凪を抱いて寄って来た妻の李莉の言葉に首を横に振る。
「嘘ね」
「……」
「ジャックが嘘を付くと目が細くなるもの」
「マジで?」
「嘘よ」
「李莉……」
「どうせ何かに悩んでいるんでしょ? 話したら楽かもよ」
李莉は眠っている紗凪の頭を撫でて俺の隣に腰掛ける。
「ほら、吐きなさい」
「強制かよ」
「そうよ」
「……いや、大丈夫だ」
「そう、詰まんないのね」
李莉は完全に寝た紗凪をベビーベッドに寝かして俺の隣に腰掛け直す。そのまま俺にもたれかかる。
「あなたの好きなようにすれば良いじゃない。それがあなたらしさよ」
「……」
「どうせどうしたら良いかで悩んでいたんでしょ?」
「なんで分かるんだろうな……」
「あなたの妻だからよ」
やはり敵わない。すると
「それよりも2人目、欲しくない?」
「それはもうちょっと紗凪が育ってから……」
「子育ては私の領分だから大丈夫よ!」
男らしい言葉に苦笑が漏れた。
*****
「でね! アリアたちの戦いを見てたのよ」
「セスタスの動画って意外に有名なんだね」
「別に動画だけじゃなかったよ。前にアリアたちが出演した番組も放送していたし」
「え、ホンマに?」
「なんでいきなり関西風なのよ」
「たこ焼き美味しかったから」
「なら仕方ないね」
きりはうむうむ、と頷く。その間にスマホを取り出してメールを送る。内容は軽い疑問と要望だ。
「何したの?」
「メール」
「ふーん」
「そう言えばきりたちはレグルス戦にいたの?」
「……いなかったよ」
「なんで?」
私の言葉にきりは頬をヒクヒクさせた。
「なんでってアリアたちが決めた基準以下だったからよ!」
「え、そんなのあったんだ」
「誰が決めたのよそれ……」
「多分アスモかブブかサタルシブラザーズ」
「サタル……なんて?」
「サタンとルシファー兄弟」
私はスマホの画面に表示される『メンゴメンゴ。次からちゃんと報告するから』の文字にため息をつく。
「ねね、アリア」
「何?」
「私の装備を安く作って」
「他を当たって」
「そこをなんとか!」
「特例は無しだよ。シェリ姉からもちゃんと料金は受け取ったもん」
「はー、身内からでしょ?」
「うん」
私の言葉にきりはため息をつく。するといきなり真剣そうな表情になって
「ねぇ、アリア」
「んー?」
「セスタスの動画で見たんだけどさ」
「うん」
「あの《死神》ってプレイヤーと決闘するの?」
「うん」
「誰なの?」
「ジャック」
「誰なの?」
「私たちの仲間だね」
「仲間割れ?」
「仲直りかな」
「仲直り?」
「そうね」
振り向くと
「直美」
「直美さん……聞いてたんですか?」
「聞こえたの。結構声大きいよ?」
「げ」
「それよりも宿題しないと。これ言ったらきっと笑われるわよ?」
「むぅ」
「ほら、まだ漢字もあるでしょ?」
「あっちは残すと大変だよ」
きりはそう言うけどさー
「漢字はもう全部変換で出るから良いじゃん」
「だーめ。それじゃ脳が発達しなくてちっちゃいままだよ」
「どこがですか?」
「きりちゃんにあって私たちに無い物」
つまり
「おっぱいよ!」
「直美、お客さんいるんだよ?」
次回か次次回で最終回
この章が
ねぇねぇ、終わると思った? 終わると思った? 残念、やんば(ry




