表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/401

レグルスネメア

「……」

「……」

「……」

「やったか⁉︎」

「おい待てフラグ建てんな!」


辺りには静寂が漂っていた(過去形)。すでにざわざわし出している。そして


『イベントクリア!』


と、広場のど真ん中に大きく表示された。一瞬の沈黙、そして


「「「「「ーーーーっ!」」」」」


声にならない叫びが上がる。

勝ったのか? 終わったのか? レグルスが復活するなんて無いよね?


「やったーっ!」

「っし!」


僕は両手を上げて、お兄ちゃんは小さくガッツポーズ。


「随分と苦戦したな」

「勝てば官軍だ」

「勝てば良いのさ!」


僕は魔王の苦笑を眺めて頷く。そして表示される経験値とお金、スキルポイントにステータスポイントを見て


「相変わらず嬉しい事があるとふにゃってなるのな」

「ジャックもそう思うか」

「ああ」


2人が何かを言っている気がするけど気にしない気にしない。


『ばぉん!』

『ちぃ!』

『ちゅう!』

「あっ⁉︎ わわわ⁉︎」


振り向くとルフが飛びかかって来て地面に押し倒された。お返しとばかりに抱きしめて転がる。そしてひよちゃんの足に掴まれて止められた。


「いやー、ひよちゃんたちも頑張ったね!」

『ちぃ!』

『ちゅう!』

『ばぉん!』


何故かひよちゃんは僕を持ち上げる。その僕の腕の中にルフがいて、頭の上にちゅう吉が。いつの間に。


「あはははは!」


何が面白いわけでもないけど笑いが漏れた。


*****


『MVP』の発表はまだされていない。なのでみんな自由に広場を出て行ったり広場で駄弁っている。


「……」


俺は1人、端の方に腰掛けていた。

眩しい奴らは何故かテイムモンスターの鳥に掴まれて運ばれているアリアを見て笑っている。変わらない。変わったのは俺だけか?


「……」

「よぉ、センチメンタル浸ってんのか?」

「……魔王」

「お前も来いよ」


魔王はわざわざ俺を探したのか?


「……混ざれるとでも?」

「さぁな」


誘ったくせにそんな事を言った上で俺の隣に腰掛けた。ちぐはぐだ。


「そう言やプロポーズしたのか」

「ぶふっ⁉︎」


ゲホゴホ、とむせる魔王を見てしてやったりという想いが。


「何だ、付き合い始めて3年経つのにまだプロポーズ出来てないのか?」

「……五月蝿い」

「ヘタレにもほどがあるぜ」

「お前は結婚しているからそう言えるんだよ」

「俺だってプロポーズの際は緊張したが3年も掛からなかったな。精々2ヶ月だ」


舌打ちする魔王を笑って


「当たって砕けよ、ぶつかってみなきゃ分かんねー事もあるだろ」

「気楽に言ってくれるな……ったく」

「妻帯者舐めんな」

「リア充め……」

「付き合っている女性がいるお前に言う権利は無い」


魔王はふて腐れたようにインベントリから酒瓶を取り出して


「とりあえず飲むか」

「それ、酒っぽい風味のポーションだよな?」

「ああ、回復に目を向けなければいける一品だ」

「誰の作品だ?」


魔王がそこまで評価するのは珍しい。普段は身内ばかりなのに。


「アリア」

「……やっぱ身内か」

「ああ」


渡されたカップに注がれたそれを少し飲む……


「甘いな」

「悪くないだろ?」

「お前が甘党ってのも含めてな」


辛党の俺には少し甘過ぎる。だがそれも良い気がした。


「……なぁ」

「なんだ、わざわざ改まって」

「戻って来る気は無いのか?」

「……さーな」


一息でカップの中身を飲み干す。甘い、甘ったるい。その甘さがきっと俺にそんな甘い考えをもたらしたんだろう。


「……戻りたくても戻れないだろ」

「……そうか?」

「そうだ」


……


「戻りたいって思ってはいるんだな」

「……かもな」

「俺としては戻って来て欲しいけどな」


……


「よくもまあそんなクサい言葉言えるよな」

「上司への思ってもいない報告書を提出するよりはマシだ」

「相変わらずのブラックに片足突っ込んでるのか?」

「認めたら負けだろ」


魔王は苦笑して飲む。そして


「また俺ら全員で揃ってやりたいものだな」

「……だな」

「ジャック、ギルドリーダーとして命令しても良いか?」

「ダメだ」

「帰って来いよ」

「……今さら俺が帰ってもあいつらは……」


きっと俺を許さないだろう。アリアだってそうだ。呉越同舟なだけだ。終わればすぐに敵対関係に戻る。


「あいつらに聞いてみたら戻って来て欲しいって意見が8人、そもそも人となりを知らないが3人だな」

「アンケート済みかよ⁉︎」


*****


『MVP発表まで10!』


唐突なカウントダウンが始まった。プレイヤーたちは動揺していたけど


「「「「「5! 4! 3! 2! 1!」」」」」


0、のタイミングで堂々と表示されたMVPは余りにも予想外過ぎた。


『戦闘面アリア』

『援護面ひよちゃん』

『救助面ひよちゃん』

『よって12星座武具はひよちゃんをテイムしたアリアさんに贈られます!』


………………


「「「「「「「「はぁぁぁぁぁ⁉︎」」」」」」」」


僕はひよちゃんに負けた……。


「俺もテイムスキル習得しておきゃ良かったー!」

「ちっくしょー!」

「ワンチャンあると思ったのに……っ!」

「「「ねーよ」」」


『ちぃ!』

「ひよちゃんに負けたなぁ」

『ちぃ?』


僕の肩に留まって首をかしげるひよちゃん。珍しく頭の上じゃない。あ、ちゅう吉が乗っているからかな。


「っと」

『プレゼント:レグルスネメア』

「レグルスネメア?」

「ネメアの獅子?」

「ギリシャ神話のペルセウスに退治されちゃったライオンね」


マモンの言葉にふむふむ、と頷きながらオブジェクト化しようとした。すると


「……ぬ?」


出来なかった。もう一度『レグルスネメア』の文字列をタップすると『系統を選択してください。武器・防具』……お!?


「これってもしかして……」

「んー? どうしたの?」


武器をタップすると武器カテゴリーが表示される。剣カテゴリーを選んで片手長剣を選択。最後にそれで良いか、との確認が来た。もちろんだ。


「「「「「おお!?」」」」」

「わぉ」


黄金色に輝く柄頭に埋め込まれた真っ赤な宝石、レグルス色の柄、まるでレグルスが今にも噛み付きそうな柄の装飾、触れるだけで切れそうなほど鋭い少し広めの剣身。


「獅子剣レグルスネメア……かっこいいや」

「すげーな……つーか性能は?」

「そうねぇ、外見よりも性能よぉ」


ベルとレヴィの冷静な言葉に頬を膨らませながら性能を確認するとあらビックリ。ステータスが軒並み0だ……え?


「なんでぇ!?」

「そんなに良い性能だったのか?」

「見せて欲しいな」


的外れ兄弟にレグルスネメアのステータスを見せる。すると二人の動きが止まった。そしてそれを覗き込んだシエルとセプトのも。


「……つまりネタ武器?」

「みたい……あ」


特性の欄を開くと『獅子の咆哮』とある。タップして確認すると『カウンターで使用可能。受ける攻撃の倍のダメージを放つ。範囲は攻撃に比例』……なるほど、防御専用武器なんだ。

そう思った瞬間


「アイスストーム!」


この場にいる誰でもない声が響いちゃ。噛んだ。


「フレアストーム多重並列で20!」


氷の嵐を劫火が飲み込み、消し飛ばした。アイスストームの出所を見ると


「あの時の……っ!」

「知っているの? シェリルちゃん」

「シリアルキラーズ、あの時の奴らよ」


怒気を隠さないシェリ姉。それに頷いて僕は立ち上がる。シリアルキラーズのメンバーがたくさんいる。そいつらは何も言わずに攻撃を仕掛けようとしている。魔法が放たれる。僕達全員をキルするような範囲の魔法だ。きっとレグルス戦後の僕達を奇襲するつもりだったんだろう。だったらその目論見は失敗だ。


「『獅子の……咆哮』っ!」


だってカウンターで全員全損しちゃったから。

ステータス0のカウンター武器なだけじゃないぜ

次回明かす予定

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ