残り体力0
「アリア! 跳べ!」
「うん!」
レグルスの雷を纏った尻尾による薙ぎ払いを飛び越えて接近、そのまま能力を使用している《炎龍の天剣》と《風龍の天剣》で連続して斬りつける。
「屈め!」
「うん!」
屈んだ直後、頭の上を鎌が通過した。そのまま背中に手をついて《死神》が僕を飛び越えた。そのままレグルスに鎌を振るうも避けられた。
「いやー、良いね」
「まったくだね」
お互いに笑い、剣と鎌を構えて
「苦戦だね」
「とびっきりのな」
《死神》が駆ける。落雷を避け、レグルスの顔面を貫くように鎌を一閃させる。しかしレグルスは《死神》と同等の速度でそれを回避しようとした。仕切れずに足にダメージが。
「小さくなってもオーラによる継続ダメージはあるな」
「そうだね」
ひよちゃんの範囲回復魔法のおかげで致命的にならずに済んでいる。
「っ!」
僕も落雷を避けながらレグルスの背後に回りこむ。続けざまに3回斬った。残り2割と1割の真ん中。もう少しだ。
「麻痺らせたいな」
「魔王しか状態異常に出来ないでしょ?」
「いーや、あの二人を連れて来れば」
「2人って?」
マモンとレヴィ?
「それじゃ少し2人に任せるぜ」
「仕方ねーか」
「《死神》、やるよ」
「わーってるって。それに別にあれを倒してしまっても構わんのだろう?」
「デスノボリ建てやがった⁉︎」
《死神》の言葉に魔王はやべぇ、みたいな表情をしながら駆けて行った。魔王にはテイムモンスターはいないのだ。
「アークスラッシュ!」
「ソーン!」
高速の2連撃の後に鎌による強力な振り下ろし。レグルスが回避したにも関わらず広範囲に衝撃を与えた。僕にも与えた。
「ルフ!」
『ばぉぉぉん!』
レグルスの背後から飛び付き、全身から炎を立ち昇らせるルフ。レグルスの体力がゴリゴリ削られる。しかし
「ルフ! 危ない!」
『ばぉん!』
落雷をギリギリで回避した、そう思ったが体が痺れてしまったのかルフの動きが不自然に止まる。
『ちぃ(ハイヒール)!』
『ちゅう(エアースパイラル)!』
竜巻がレグルスを打ち、ひよちゃんがルフを足で掴んで飛翔する。そのまま距離を取った。レグルスが一瞬固まった。その隙を見逃さずに
「ギルティ!」
投じられた鎌はクルクルと回転し、レグルスを切りつけてまるでブーメランのように手元に帰って行った。
「スナイプ!」
ターンッ、と音が響いた。そしてレグルスに与えたダメージが表示される。
「ホーミングパラライズアロー!」
「パラライズナイフ!」
3人のスキルによってレグルスの高速移動が止まった。
「やれ!」
「ダブルサイクロン!」
「ドラゴンジャッジメント!」
25連撃と鎌の霞むほどの速度の多分10連撃。これで
「1割を……」
「ギリギリ割れてないな」
「ちぇー」
「唇を尖らせるな。来るぞ!」
「スプレッドショット!」
「スプレッドアロー!」
2人の矢と弾丸がレグルスに降り注ぐ。そしてレグルスが頭を抱え込むような姿になり、地面に突っ伏した。
「やったか⁉︎」
「や、まだ体力あるから」
「様式美だ」
《死神》と軽口を叩いて
「ラスト1割だよ! みんな!」
「ああ!」
「おう!」
「うん!」
「そうね!」
みんなの返事に笑って
「《リンク》!」
ステータスを底上げして……
「え」
「わぉ」
空に浮かぶ双翼生やしたレグルスが僕たちに向かって口を開いた。その口にはバチバチと音を立てる光の球が。
「逃げるぞ!」
「《リンク》スキルを使ったら攻める一択!」
「《リンク》スキル……こっちはソロなんだよ!」
その言葉に苦笑してメニューを開く。そのままギルドへ勧誘する。
「……良いのか?」
「良いさ、お兄ちゃん」
僕は複雑な表情のお兄ちゃんに笑いかけて
「さっさと行くよ!」
「なら先に私が行くわぁ」
「俺も行くぜ! フレアランス多重並列100!」
「ダブルバレット!」
大量の炎の槍が宙に浮いて落雷を放つレグルスに向かって飛ぶ。弾幕避けみたいな軌道のレグルスを追うように銃弾が連発。
「ブレスが来るぞ!」
「回避しろ!」
「しなくて良いで御座るよ!」
「え」
「リョーマ⁉︎」
「いたのか⁉︎」
「全損してなかったのか⁉︎」
「色々酷いで御座るな……」
リョーマはため息を吐いて腰の刀、《朱櫻》の柄に手を添えて
『Gruaaaa!』
「居合ーー雷纏!」
吐かれた雷の球体はリョーマの刀に吸い込まれるようにして消滅。そしてリョーマが刀を振ると雷が軌道上に迸った。それはレグルスを撃ち、ダメージを通した。
*****
残り一割を切ったら《リンク》スキルを使って総攻撃を仕掛ける。そう言う作戦だ。
「いくよ! スプレッドアロー!」
「だるあぁぁ!」
マモンの矢にシエルとやらの投げられた大剣がレグルスを狙う。
「へヴィースロー!」
「フレイムランス多重並列120!」
「アイストルネード!」
セプトとやら、ベル、シェリルとやらが続きレグルスが地面に落下した。と、言うかセプトとシエルが投げたのはどうしてだ? 落下を待てば良いだろうに。
「旋風槍!」
「フルバスター!」
「炎天槍! からの氷結槍!」
「エンチャントフレイム! スターダストスプラッシュ!」
地面でもがいているレグルスに兄弟が続き、ブブとアスモが斬りかかる。槍なのに切るのがメインなのは二人とも変わっていない。
「まだ終わらないのぉ! スプレッドショット!」
散弾がレグルスの体を吹き飛ばす。小さくなって身軽になった分、容易となったようだ。
ああ、こいつらは相変わらずだ。眩しくて適わなかった頃のように。
*****
レグルスの残り体力3千万。
*****
「ああ…………」
お兄ちゃんが感嘆の声を漏らす。何となく無償に僕は
「競争だよ! お兄ちゃん!」
「……そうだな!」
「いや、俺もいるんだが」
「魔王はナイフだから問題無いもん」
「まったくだな」
「お前ら揃いも揃って……」
魔王がため息を漏らす。そして
「それなら先手必勝だ!」
「あ!? 卑怯だよ!」
「俺の方がagiは高い!」
完全に出遅れた。
出遅れたのはSSOでもそうだった。あの時は魔王にも、みんなにも出遅れていた。きっとお兄ちゃんにも。だけど
「抜いたっ!」
そうだった、魔王を抜いたんだった。だから次は
「負けないよ!」
「こっちの台詞だ!」
抜いたり抜かれたりを繰り返す。レグルスの落雷はあたるはずが無い。僕たちがその程度の攻撃に当たるものか。
「スターダストスラスト!」
「ジャッジメント!」
三連撃はレグルスをかすめ、5連撃はレグルスを切り裂く。
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レグルスの残り体力9百万。
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「エンドアルカナム!」
「グラビティメテオ!」
スカイとエレナが仕掛ける。削り取りにかかる。だけど
「ヴィクトリア……」
「あいつは欲望に負けたんだ」
「でもあの終わり方は無いでしょ!」
駆ける。もはや毎秒のように降り注ぐ雷を避けて避けて避け続ける。翼を広げてレグルスは飛び上がる。レグルスの真下は安地。だけど
「そんなの関係ない!」
ひよちゃん達は既に避難した。残っていたプレイヤー達もだ。残るのは僕達魔王の傘下とスカイ、エレナだけだ。
地面を蹴って飛び上がる。
「ミーティアリープ!」
超遠距離まで届く突進スキル、それはレグルスの翼に激突した。レグルスの翼は一撃では斬り落とせなかった。だからどうした、
「ダブルラッシュ!」
二刀流突進スキル、今度こそ翼を切り飛ばした。
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レグルスの残り体力53万。
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「まだまだぁ! ダブルグリザイユ!」
真下から切り上げ、真上から叩きつける。重力加速も加わってレグルスは物凄い勢いで地面に激突した。
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レグルスの残り体力34万。
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「クリムゾンジャッジメント!」
真紅の残撃がレグルスの体を奔る。
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レグルスの残り体力22万。
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「バーストナイフ! エンプレスナイフ!」
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レグルスの残り体力3万。
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「ミーティアメテオォォッ!」
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レグルスの残り体力0。
久々のタイトルネタバレだぜ
もう来ないと思って安心していたそこの君、残念だったな!
とりあえず次回か次次回、次次次回ら辺で1章が終わります
長かったと思うかは人次第ですねー
しかしレグルス戦、長かった
そして苦戦っぽいシーンを書けなかった(作者の技量的な理由で)
ヴィクトリアの終わり方は友人(リアルの読者)と会話している際に思いついた内容です
さぁ、リアルの友人よ、明日学校来いよ
後書きにリアルを持ち込む作者って初めてじゃね?




