テイムモンスターマジパネェ
その変化は劇的だった。あの巨体が小さくなったのだから。
「おお⁉︎」
「普通のライオンよりはでけぇな」
「普通のライオンを知っているんだ」
「逆に中1で知らない方がおかしいだろ」
《死神》はそう言って鎌を担ぐように構えた。僕も《炎龍の天剣》を体の前に、《風龍の天剣》を右に広げるように構えて
「来るぞ!」
「ああ!」
「うん!」
魔王の言葉と同時にレグルスが突進してくる。その速度は先ほどよりもとーっても速い。それでも
「ギリギリ反応出来る!」
「だね!」
《死神》の振るった鎌がレグルスの腰を切る。怯みもしない。しかし
「防御力が下がっている?」
「総攻撃をかけろ! ここが決め場だ!」
*****
「総攻撃をかけろったって魔法だとあいつら巻き込みそうだから出来ねーよ」
「ベルさん、回復に専念しましょう」
「仕方ねーか……《エリアハイヒール》」
フィールド全体に存在するプレイヤー全員の体力が回復する。ひよちゃんたちも回復をしているから必要無かったかな?
「とりあえず大技が来そうだったら束縛系な」
「分かっています」
*****
「素早くて狙い辛いなー」
「あんたはホーミングが出来るでしょ。こっちは無いのよ?」
「速度は速いでしょ」
《死神》がレグルスの突進のタイミングで足を払う。アリアが切り掛かり、爪と剣を交わす。レグルスの動きが止まった。射つ。
「これ、私たちはもう必要無いかな?」
「んー? 多分まだ1割があるからそこまで待った方が良いよ?」
「あんたの勘は当たるからね……しばらくここで休憩ね」
はーい、と返事をする遠距離狙撃隊。私は前に出ても良いかもしれない。
「レヴィと私はここから動かないよ」
「そうなの?」
「カゲオに乗ってなら例外だけど下に降りるのはね」
私たちはアリアたちがタゲを取り返したおかげで元の位置に戻っていた。しかし
「あの2人、パワーアップをビクともしてないんだけど」
「あの2人はストラギでしょ?」
「あー、そうね」
2人の動きを眺めて
「憧れが対象を追い抜いたから、あんたは離れたの?」
*****
「アスモ! レグルスの動きが追えるか?」
「いーや。あの2人しか無理じゃね?」
「エンチャント掛けてくれよ。agiの」
「断る。それに俺は攻撃魔法一択の魔法剣士だ」
ブブの要請を素気無く断ってアスモは目を細めた。
その視線の先には高速で動き回る者たち。俺たちには何も出来そうにない。
「サタン、ルシファー。生き残ったプレイヤーたちに素早さを上げるエンチャントを使えるプレイヤーがいないかの捜索を」
「りょーかい」
「分かりました」
「シエルとセプトはテイムモンスターを引かせてくれ」
「オーケー、サラマンダー! 戻って来て」
「蛇姫、戻るで御座るよ」
「スカイ、エレナ、ヴィクトリアはあれに参加出来るか?」
「ん……ギリギリだな」
「そうですね、ご主人様」
「あ!」
エレナが大きな声を出す。当然注目される。
そしてエレナは口を開いて打開策を口にした。
*****
「はっ!」
「やぁっ!」
レグルスの爪による引っ掻きを回避して体を一回転。剣で斬る。その間に《死神》は鎌でレグルスの尾を切り取ろうとするが
「ぶらぶら揺れていると切り辛い!」
「だろうねぇ!」
「打ち上げるぞ!」
《死神》の言葉に頷くと鎌がレグルスの腹を打つ。切らずに打ち上げた。
「アリア!」
「うん! ダブルサイクロン!」
全力で、スキルを放った。
*****
「エリアスピードエンチャント!」
「サンキュー、シェリル」
「気にしないで。それよりも早くアリアちゃんをお願い」
「ああ!」
レグルスと戦っている《死神》とアリアの元に駆ける。そして
「ダブルサイクロン!」
アリアの高速の25連撃が空中で身動き出来ないレグルスを斬る。残り2億半。
しかしようやく同じ速度に近くなったからこそ分かる。あいつらはやっぱりおかしい、と。
「魔王! さっさと手伝って!」
「分かっているさ!」
さっきのアリアみたいに隙を作らないとスキルは撃てない。だから
「バーストナイフ!」
「アークスラッシュ!」
アリアの斬撃をレグルスが回避する。その横腹に向かってスカーレットの刃が沈む。確実な感触に笑みを浮かべる。
「ボムナイフ!」
体内に直接触れたら爆発を起こすナイフを入れたらどうなるのか。簡単だ、内部から爆発する。
「《死神》!」
「言われなくともやるさ! ジャッジメント!」
「メテオインパクト!」
*****
魔王のスカーレットのように僕の《炎龍の天剣》と《風龍の天剣》にも特殊な能力がある。それは
「燃え上がれ! そして纏え!」
《炎龍の天剣》の柄から吹き上がる炎が剣身のような形になる。元々あった剣身は炎に飲み込まれ、姿を消した。数多の物を焼き尽くす炎龍の息吹。
《風龍の天剣》の柄から先が烈風に包まれる。やや薄緑色の風に包まれた剣身はおぼろげながらに存在感がある。数多の物を切り裂く風龍の息吹。
「っ!」
激しくなった落雷の隙間を駆け抜ける。なんとなくだけどどこから降ってくるのかが予想できるから当たらない。
『ばうっ!』
『ちぃ!』
『ちゅう!』
「ルフ!? それにひよちゃんとちゅう吉も!?」
三人が落雷を平然と回避して駆け寄ってきた。
「ひよちゃんはちゅう吉と上から魔法で! ルフと僕は下から攻めるよ!」
「俺達の存在意義ェ」
「気にするな、魔王」
《死神》と魔王の会話に少し笑って
「行くよ!」
『ちぃ!』
『ちゅう(エアーランス)!』
ひよちゃんが飛翔、そしてその上からちゅう吉が魔法でレグルスを狙う。レグルスは回避しようとするが
『ばぉん(ブレイズクロー)!』
「アークスラッシュ!」
『ちぃ(アイシクルプリズン)!』
僕とルフのスキルに阻まれ、動きが止まる。その瞬間に氷の檻に閉じ込められた。唯一空いている上方向の穴から飛び出そうとするレグルス。しかしそのタイミングでちゅう吉の魔法がレグルスを貫く。
……なんだろう、プレイヤーよりもテイムモンスターのほうがとっても強くないかな。もしかすると運営からの調整が入るくらいには。
「俺達を忘れてもらっちゃ困るぜ!」
「まったくだな!」
二人が突撃して氷の檻を砕いて飛び出したレグルスの顔面に鎌を振るい、仰け反った腹部にナイフを刺す。そのまま抉り、左右に振るった。直後、振るわれた足を避けきれずに吹き飛ばされるが全損はしていない。
「嗚呼……」
「ちょ!? ヴィクトリアを止めて!」
「肉球……」
「止める必要があるで御座るか?」
「下手に止めようとしたら俺達が危険だ」
「まったくだ」
何故かふらふらと歩くヴィクトリアがレグルスに近づく。レグルスは腕を振るい、ヴィクトリアを打ち倒そうとするが
「え!?」
「は!?」
「嘘だろおい……」
レグルスの腕による一撃を受けているにもかかわらず、ヴィクトリアは吹き飛ばなかった。そしてレグルスの腕にしがみ付き
「嗚呼……肉球」
それがヴィクトリアの遺言だった。
「「「ええ~」」」
余りの光景に三人で反応が被った。うん、仕方ないよね。
「と、とりあえず気にしないで続けよっか」
僕達は再び地面を蹴って落雷を回避した。
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レグルスの残り体力約1億8千万
ひよちゃんたちパネェ
とりあえずレグルス戦はもう少し続くんじゃ




