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顎の脅威

「レグルスの様子に変化は無しか」


そのプレイヤーは漆黒のマントを羽織り、木の上に腰掛けていた。骸骨の面に身の丈を越える大きな鎌を身に纏い、遠くを眺めていた。


「ゲーマーとして、俺も参加したいよな」


そう、呟いた。


*****


「スカイ! 右は頼んだよ!」

「ああ! そっちもしっかりな!」


レグルスの鬣がうにょうにょと僕たちに迫る。それをスキルを使わずに纏めて斬り払う。隙を突く鬣をもう片方で斬り払う。

レグルスの鬣は鬣としての体力は無く、レグルスの体力全体のうちから削れていく。つまりここで切り続けるだけでダメージを蓄積させられるのだ。


「言っちゃ悪いけど地味だなこれ」

「気にしたら負けだよ」

「毎度思っているんだが何に負けるんだ?」

「自分自身」

「カッケェ」


スカイと軽口を叩きながら鬣を散髪。そして


「6割切ったか」

「継続ダメージはヒーラー部隊の範囲回復魔法で問題無いみたいだね」

「行動パターンに変化無しか……5割3割1割か?」

「多分そうだと思うよ!」


纏めて斬り払い、パーティメンバーの体力を確認する。ヴィクトリアとエレナは少し減っているけど問題無し。セスタスもリョーマもだ。


「順調だな」

「怖いくらいにね」

「フラグだな」

「え」


スカイがそう言った瞬間、レグルスの体力が5割を切った。そしてレグルスから金色のオーラが立ち昇る。すると


『ちぃぃぃっ!』

「え」

「なっ⁉︎」


ひよちゃんが僕とスカイを足で掴んで飛翔する。そして大きめの木に止まる。よく分からないけど木の枝に飛び移った。直後


『Graaaaaaaaa!』


雷が、レグルスに直撃した。ダメージは……無い? それどころか毛が逆立ってバチバチ言ってて……


「パワーアップか……」

「ひよちゃん! もう一度背中に!」

『ちぃ!』


ひよちゃんの背中に飛び乗る。そして翼の付け根を軽く握って


「GO!」

『ちぃ!』


レグルスの口から吐かれる雷のブレスを高く飛ぶ事によって回避し、落雷を高速で避ける。


「継続ダメージが大きくなってる⁉︎」

『ちゅう!』

『ばぉん!』


下を見るとルフとちゅう吉が。


「ルフ! ひよちゃんとちゅう吉を乗せて駆け回って! ひよちゃんは回復魔法でみんなの補助を! ちゅう吉はMPポーションやポーションをどんどん使って!」

『ばぉん!』

『ちゅう!』

『ちぃ!』


ひよちゃんが大きく旋回してレグルスの脇腹付近に着陸。降りて頭を撫でて


「ダブルテンペスト!」


振り下ろされる肉球に向けての16連撃。振り下ろされる肉球の勢いを削いでその場を離れる。それを繰り返す。


「アリア殿!」

「ご主人様!」

「上から来るぞ!」

「気をつけろ!」


四人の声に咄嗟に上を見ると


「顎⁉︎」


尖った顎が振り下ろされた。ギリギリで回避が間に合ったけど……死因が顎なんて意味が分からない。

あれ? そもそもライオンの顎って尖っているのかな? 後で画像検索してみよっと。


「なんて考えている場合じゃないよねぇ⁉︎」


地面を転がって顎を回避。この技を連続顎突きと呼ぼう。


「ソードパリィ! アークスラッシュ!」


スキル硬直のほぼ無いアークスラッシュを放って退避。顎が届かない距離まで離れたと思ったら


「今度は肉球……っ⁉︎」

「普通に足って言えよ⁉︎」

「防げ!」

「ダブルグリザイユ!」

「だらぁぁっ!」


連続重攻撃とシエルの大剣による斬撃は肉球を防ぐ。そして勢いの失せた肉球にセプトがスキルを放った。確実にダメージが通る。


「やれるか?」

「やるしかないさ!」

「まったくだな!」

「避けて!」


レヴィの声が聞こえた直後、真上から光が落ちてきた。それは球体でバチバチと音を立てて発光している。


「スナイパーボムショット!」

「ロングボムアロー!」


レヴィとマモンの遠距離からの狙撃が雷の玉を爆散させ、レグルスにダメージを与える。そして


「タゲが移ったか!?」

「今ので……っ!?」

「急げ! タゲを取るぞ!」


セプトの言葉に我に帰る。そのまま駆け出そうとすると


「射線を空けろ!」

「ベル!?」

「パラライズランス120多重連続射出!」


黄色いバチバチと音を立てる槍がレグルスのお尻に突き刺さる。そしてレグルスの動きが固まる。


「今のうちに逃げろ!」

「ベル!?」

「ありがと、ベル! カゲオ!」


マモンの陰に潜んでいるカゲオがのっそりと這い出て翼を広げた。その上にマモンとレヴィが乗る。そして飛翔。その間にも矢や弾丸を放つ手を止めない。

崖の上の高台から打ち続けていた二人がタゲられているようだ。だから二人を追うように落雷が。今のレグルスは雷すら操っている、そう思うと


「まだまだ掛かりそうだなぁ……」


*****


「ん?」

「どうした? 魔王」

「いや……誰かの視線を感じてな」

「視線? 兄さんも感じる?」


サタンとルシファーの会話を他所にアスモとブブを探す。魔法剣士のアスモに双槍のブブ。二人共積極的に動いていない足、おそらく利き足じゃない方を攻撃していた。


「……この視線、確かにどこかで」


思い出そうと思った瞬間、薙ぎ払うように足が迫る。それをサタンが両手長剣で斬り、ルシファーが槍を使って棒高跳び。そのまま一回転して斬りつける。


「魔王もやれよ!」

「……だな!」


俺はスカーレットを腰の鞘から抜く。その勢いのままにレグルスの爪に向けて振るう。一瞬噛み合い、爪に切れ込みが入った。


「悪いがこのスカーレットは仲間に作ってもらった大切なナイフだ。お前ごときの猫に負けるはずが無い!」


振るう。爪の切込みから切り離す。そのまま連続して斬り付ける。


「下がるぞ!」

「おう!」

「了解!」


サタンとルシファーが足から剣と槍を放して下がる。しかし


「雷がいちいちうざったいな」

「どうする? もっと下がってみんなと合流する?」

「……いや、前に出るぞ!」


*****


「魔王! 顔が弱点よ!」

「レヴィか!? 助かる!」


スコープの中の魔王は霞むほどの速度で振り下ろされた足を駆け上がる。そして飛び上がり、顔面に向けて連続切り。


「んっ」


眼球に向かって普通の弾丸を連続して放つ。しかしダメージはさほど大きくない。四桁程度だ。


「マモン、範囲で纏めて顔面を」

「レヴィも散弾ね」

「遠距離だと貫通弾の方が良いわよ」


弾丸を装填しつつ応える。


「ねぇ、マモン」

「んー? 何?」

「アリアがいないように見えるけど……どこにいるか分かる?」

「ゑ!?」


*****


「むぅ」


辺り一体が何も無い。もっとも継続ダメージは受けている。剣を振る隙間は無い。


「飲み込まれたのは人生初だなぁ」


そうそうあってたまるか、と思いつつメニューを開き傘下のメンバーに一斉送信する。『飲み込まれた』と。


「えーっと……確かいきなり顎が降って来たと思ったらそのまま飲み込まれたんだよね」


噛まれなかった分良かったと言えるほど僕は達観していない。


「へるぷみー!」


そう叫んでも、誰にも聞こえなかった。


*****


「っげ!? あいつ、飲み込まれた?」


木の上から見えた状況に驚き、バランスを崩して落ちかけた。


「助けねぇと……!」


かつて『死神』と呼ばれたプレイヤーは駆け出した。

顎と言えば青目の白龍狂いのあの人が……

もしくはダベリオン


リアルの友人にアリアが可愛いと言われたのだがどの辺りか、を聞いていたらいつの間にか魔王がかっこいいと話題が変わっていたぜ

ちなみにどこが可愛いとか言ってくれると作者は喜びます

至極喜びます

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