12星座武具
スカイは強い。僕の今の状態だと勝つのは至難だ。
「《リンク》スキル……やっかいだなぁ」
「まさしく繋がる心が俺の力だ!」
「その通りだね」
二本の天剣は彼にかするに留まった。つまりそれは彼に避けられた、もしくは防がれたという事だ。
「僕よりも速い……」
「ははは」
「とことんむかつくなぁ」
どうしたものか……
「とりあえず正面から! ミーティアメテオ!」
「レイヴ!」
突進重攻撃スキルは連続突進スキルによって防がれて
「くっ、ソードリバーサル!」
「まだまだぁっ!」
ふわりと浮いていたはずなのに力強い突進をなんとかそらして
「スターダストスラスト!」
「アルカナム!」
「ふぇ⁉︎」
連続して放たれるスキルに驚きつつダメージを受ける。まだ6割残っているけど……
「最強って言ってもこの程度か?」
「……そのスキルのデメリットは3分で終了し、10分間ステータスに大幅ダウン……だったよね?」
「なんでそこまで詳しく知っているんだ?」
回転しながらの斬撃をバックステップで避けて
「ミーティアメテオ!」
「は」
僕のスキルがスカイに激突。その体を吹き飛ばし、山肌を抉る。
「なんでいきなりパワーアップしやがった⁉︎」
「分からないのかな?」
「分からねーから聞いているんだよ!」
スカイは言葉とは裏腹に笑いながらスキルを交えて連続攻撃を仕掛けてくる。それを一つずつ対処して
「ダブルテンペスト!」
「ファイナルアルカナム!」
同時に16連撃を放ち、スカイの体が吹き飛ぶ。しかしあっさりと態勢を立て直して
「そういう事か!」
「その通りだよ」
「何が⁉︎」
外野の叫びを無視していると
「てめぇ、《リンク》スキル習得しているな?」
*****
やっぱりアリアはおかしい。何故あんな軌道で動き回れるんだ。
「スターダストスラスト!」
「ラグナロク!」
放たれた多数の光の球を駆け続け、時に山肌を走り、時に紙一重の位置を駆け抜ける。
「アリアに勝てる気がしないな」
「ったくだな」
「アリアちゃん……大丈夫かな?」
シェリルは心配そうに呟くがどう見ても余裕があるだろ。
「しかし《リンク》スキルね……最後の切り札として習得しておけって言ったのは間違いないようだな」
「魔王が珍しく指示を出したからな」
「それにお金も出してくれたし……」
「至れり尽くせりだな……ところでシエル、シェリル。例え《リンク》スキルを使ったとしてアリアに勝てると思うか?」
セプトの言葉に一瞬驚いて
「……どーだろ。不意をついて一気に押し切れなけりゃ負けるだろ」
「あの動きを見ると魔法は避けられそうだしね」
「だろうな……やはりアリアが最強か」
セプトの言葉と同時にアリアの剣がスカイの体力を全損させた。
*****
「レイドボスまであと一時間だね」
「ポーションがばんばか売れてぼろ儲けだよ」
僕の言葉にマモンはあはは、と笑って
「あ、カゲ。ダメよ」
「ひよちゃん、カゲを追いかけて」
店の奥に行こうとするカゲをひよちゃんが咥えてカウンターの上に着地。
「リョーマは亀山の方で参加するんだよね?」
「左様で御座る。蛇姫とともに参加するで御座るよ」
「その背後にいる4本腕の剣士?」
「そうで御座る」
随分と大きく強そうになったものだ。
『ちぃ⁉︎』
『ちゅう⁉︎』
『うぉん⁉︎』
「あ、ごめんごめん。3人も強くなったよ」
ルフの頭を撫でてちゅう吉の尻尾を触ってひよちゃんの羽毛に指を入れる。
「リョーマはメンテナンス?」
「蛇姫に合う武器を探しに来たので御座るよ」
「ふーん。そっちの方の量産品なら安めだよ」
「かたじけない」
「あれ? 全部1Mなのに安めなの?」
「え? 安いよね?」
「うむ」
「あれ、これって私がおかしいの?」
シェリ姉が首を傾げる。すると
「全員揃っているか?」
「奥にいるよ。それじゃリョーマ、今から閉店だから」
「む、ではこの4本を」
「はい、4Mね」
さっさと済ませてリョーマはカーマインブラックスミスから出て行った。
「さて、レイドボスだが少々気になる情報がある」
「どんな?」
「レイドボス戦のMVPプレイヤーに12星座武器を授与だとさ」
「……12星座武器?」
「多分最強装備の一種だろうな」
その言葉に店内はザワッとして
「……俺らが本気で参加したら奪い合いにならね?」
「それもVRMMOでは普通の事だ。俺は全力で取りに行くつもりだ」
魔王の言葉に僕たちは
*****
「おい……あれってどこのギルドだ?」
「……分かんねーや」
「人数少ないから大したとこじゃないだろ」
そんな声が聞こえた。するとたくさんいる人の壁が割れて
「よぉ、魔王の傘下」
「よう、勇者達」
「お久しぶりです、ご主人様」
「お久しぶり」
聖堂騎士団、THE・メイド、勇者達がわざわざやって来て
「最強装備の噂、運営から通達あったな」
「私たちはそれを聞いたからガチ傘下しますね」
「ご主人様、我々メイド一同奮って参加いたします」
「俺たちだってそのつもりだ……カウントダウン?」
イベントのフィールド、星の庭園と呼ばれるエリアの中央に大きく数字が表示される。
最前線の山の頂上にある大きな広場。ここには200を越えるプレイヤー、その倍以上なら入いる。
「……構えろ!」
「おう!」
「ああ!」
「ご主人様のお役に立つために、構えなさい!」
「「「はっ!」」」
「頑張りますよ! みなさん!」
「「「おぉーっ!」」」
「俺らもあのノリするのか?」
「一応魔王の指示に従うよ」
僕の言葉に魔王はため息を吐いて
「いつも通り、俺たちが最強だ」
「うん」
「ああ」
「そうね」
全員(3人驚きつつ)頷いて
「来るぞ!」
構えた瞬間、来た。
*****
雄々しい鬣に鋭い眼差し。ぶっとい4本の足によく切れそうな爪。ゆらゆらと揺れる尻尾。
「ライオン……?」
「12星座って言うならそうなんだろうな……」
「レグルスだっけ?」
マモンの呟きと同時にレグルスは動き出す。体勢を低くして突進、プレイヤーを纏めて弾き飛ばす。
そのプレイヤーたちが地面に落下した瞬間、光に包まれて消えた。全損したんだ。たったの一撃で。
「おいおい……」
「今のどこのギルドかな?」
「多分有名所じゃないね」
「野良パじゃないよね……」
兄弟の会話を聞きながらひよちゃんたちの様子を見る。やる気に満ちた表情でレグルスを睨めつけている。だから
「行くよ!」
『ちゅう!』
『うぉん!』
『……』
「ひよちゃん?」
ひよちゃんはルフの上から飛び上がって僕の足元に降りる。すでに僕よりも大きなひよちゃんが翼を広げると……なんというか怖い。
「乗れって事?」
『ちぃ!』
「……分かったよ。だけど攻撃はしないよ?」
「偵察か?」
「うん。行ってくるね」
僕がひよちゃんの背中に跨る。そしてひよちゃんは翼を羽ばたかせて飛翔した。
「……大きいね」
『ちぃ』
「今のところ近接攻撃のみ。大きな体を使った突進と前足による引っ掻きだけかな?」
それだけでも随分と多くのプレイヤーが全損させられている。このままじゃ全プレイヤーが全損するのもそう遠くない。
「……あ」
聖堂騎士団のリーダー、エレナたちがレグルスに向かって駆けた。
最強装備ってロマンだよね
しかしレグルスさんを強くし過ぎた感がぱない
とりあえずの展開は決めています
作者の新作の「はぐれ勇者とずれた武器〜勇者は帰りたいので魔王になります〜」を読んでくれても良いのよ?




