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幻影の脅威

その動画は1人のプレイヤーを6人のフルパーティでフルボッコにするという内容だった。しかしその動画に批判はあまりなかった。

それはその動画では新スキルの実用性がある事を証明した、そして最強の敗北を成し遂げたからだ。


*****


「……むー」

「アリアちゃん、負けたからって膨れないの」

「装備ロストも在庫で新しく作った上に性能が高くなったんだから良いじゃねぇか」

「ううん。膨れてはいない。何をされたのかが全く分かんなかったの」


そう、それが一番気になるのだ。だって分かれば即座にやり返しに行くから。

こういうところが子供っぽいってよく言われるけど中学生だから子供っぽくて良いよね。


「しかし動画を撮った上に投稿サイトにアップするか……向こうも向こうですげーな」

「でもアリアちゃんは負けっぱなしの子じゃない。きっとすぐにやり返しに行くよ」

「マモンの言う通りなんだけどね……対策を練っているの」

「でもさ、この動画を見る限りアリアの動きがなんかおかしいんだよな」


シエルがそう言って動画を僕に見せる。そして


*****


幻影騎士団ファントムナイツ、それが奴らの名前だな」

「魔王はどうしてそこまで調べたの?」

「奴らはお前を、俺たちの仲間を見せしめのように動画に撮った上で狩った。これは俺たち全員への戦線布告だろう」


魔王が何故か好戦的だ。すると


「ま、アリアが負けた理由もなんとなく分かってるっぽいし正直手を貸す必要あるのか?」

「手を貸す程度じゃ生温いわぁ」

「やるなら徹底的に」

「全力を持ってお相手しよう」


やる気満々の7人に比べて僕とシェリ姉、シエルとセプト、マモンは正直乗り気じゃなかった。


「はっきり言わせてもらうとこれは僕の復讐なんだ。僕一人でやらないといけない」

「自分の仇を自分で取るっておかしいよな?」

「確かにな」

「とりあえず幻影騎士団は僕がやる。もしも負けたらあとは任せるよ。潰すなり放置なり好きにしてくれ」


*****


最強の敗北を成し遂げたプレイヤーたちがこの辺りのエリアに来ているそうだ。思うところがある。だから


「行くか」


大鎌を振り抜き、纏めて切り払った。

そして10分後


「やぁ、幻影騎士団」

「なんですか?」

「負けっぱなしは僕の性分に合わない。やり返しに来たよ」


最強のリベンジが始まった。


*****


「行きますよ」

「いつでもどうぞ」


ルールは無い。ただやり合うだけ、そして全損ありだ。だから


「先手必勝! アークスラッシュ!」

「幻影」

「そのカラクリは解けたよ! スターダストリープ!」


空打った剣からの突撃連続切りで1人のプレイヤーが吹き飛ぶ。


「幻影のスキルは半径1メートルの中で質量を持った分身を生み出し、本体は透明になるんだ!」


僕の言葉に動揺が走る。そのままさらに追撃を加え


「そしてスキルを放ったら分身が消えるからスキルは使えない!」

「……」

「ダブルサークル!」


範囲スキルで纏めて吹き飛ばす。そして


「幻影」「幻影」「幻影」「幻影」「幻影」「幻影」「幻影」「幻影」「幻影」「幻影」「幻影」「幻影」「幻影」「幻影」「幻影」「幻影」「幻影」「幻影」「幻影」「幻影」「幻影」「幻影」「幻影」「幻影」「幻影」


……


「出せる分身は一体じゃないの?」

「スキルレベルに比例して増えるのさ……」


余りにも多くの分身に囲まれた。さすがに無謀な行動は出来ない。何故なら


「分身も攻撃出来るんだね!」

「前回のから時間が経っているので」

「なるほどね!」


地面を蹴ってスキルを使わずに幻影を切る。切った、つまり当たり判定は無いけどその幻影は消える。これが当たっているのに当たっていないと思い込んだ理由だ。そう思った瞬間


「分身」「分身」「分身」「分身」「分身」「分身」「分身」「分身」「分身」「分身」「分身」「分身」「分身」「分身」「分身」「分身」「分身」「分身」「分身」「分身」


……


「今度は質量を持ったソリッドビジョン?」

「攻撃も当たるし体力もしっかりと持っている分身だ。堪能してくれ」

「幻影スキル……強いなぁ」


僕は苦笑して地面を蹴る。そのまますれ違う相手だけを切る。振られる剣をかわす。受け止めたら囲まれるから。止まらずに切り続ける。そして


「最強は伊達じゃないですね」

「褒めたって無駄だ。君たちを倒してその名を返してもらうまで負けない」

「そうですか。ちなみにこれ、見えます?」


リーダー格の男が指先でフラフラと見せるそれは


「MPポーション……」


その結果、数える気も失せるような数の分身が僕に襲いかかる。必死で避け続けて……背中に一撃を受けた。ダメージは小さい。でもバランスを崩した。まずい。そう思った瞬間


「見てらんねーなこれ」


と、聞き覚えのある声が響いて


「クリムゾンワルツ!」


分身が一息で大分薙ぎ払われた。そして


「よう、元最強。元気そうだな」

「……幻影面ファントムマスク

「とりあえずこいつらを刈り取ろーぜぇぇ⁉︎」

「まずはお前だ!」


僕は幻影面に切り掛かる。しかし大鎌の柄に止められた。


「まずは周りをやるべきだろ⁉︎」

「僕にも優先順位はある!」

「自分よりも俺かよ⁉︎ 周りのをやれよ!」


幻影面はそう叫んで大鎌を振るった。それに巻き込まれて分身が散る。


「くたばれ!」

「てめ、ゲームだからって言って良い事と悪い事があるだろ⁉︎」

「お前に言われたくない!」

「その通りだなこんちくしょう!」


喧嘩しているといつの間にか周囲には誰もいなかった。そう思ったが


「クリムゾンワルツ!」

「へ」

「幻影スキルの名前からして思っていたが……正解のようだな」


幻影面は笑い捨てる。その大鎌の先端にはプレイヤーが引っかかっていた。


「透明化……」

「だろうな!」


そのまま4度大鎌を振るった。そして大鎌に5人を引っ掛けて


「ジャッジメント!」


振り上げた。高く飛ぶ5人。そしてその直後に放たれた高速の4連撃で纏めて全損した。


「1人はお前の攻撃で全損したっぽいからな。これで終わりだろ」

「……助かったよ」

「……お前はもう少し周りも見ろ。それじゃな」


そう言って背を向けて去ろうとする。それに


「待って⁉︎」

「……どうした?」

「どうしてあんな事を……PKを進んでやるようになったのさ!」

「……」

「僕たち10人はみんなで強くなったじゃないか! どうして……」


僕は叫ぶ。なのに


「……俺の目指す強さは他者を蹴落としてでも手に入れられ、かつそっちの方が早いからだ」

「……もう、戻らないの?」

「戻れない。今さら戻ったところでどうなるってんだ」


幻影面は自嘲するように笑う。そして


「お前たちが俺と戦うのも楽しいと思っている。それを越えられるものがあれば……どうにかなるかもな」

「……戻してやる。絶対にボコボコにして戻してやる!」

「ボコボコに⁉︎」


幻影面はため息を吐いて


「それじゃ、息災で、最強」


その言葉は何故か素直に僕の胸を突いた。

……


「お兄ちゃんっっっ!」

「っ⁉︎ ……また懐かしい呼び名だな」

「僕は絶対にお兄ちゃんをこっちに引き戻す! 絶対にだよ!」

「……期待しないで待っておくか」


お兄ちゃんはそう笑って……今度こそ、転移アイテムを使ってどこかに転移した。

もはや幻影ってより分身スキルの方が正しい気がしてきた

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