明日香お姉ちゃん
「よ、郁人」
「真央……みんな揃ってるの?」
「お前が最後だ」
真央の言葉に郁人が顔をしかめる。そして輪に加わって
「遅れました、葛城郁人です」
「郁人は中1。私と同い年」
「アリアの言う通りです」
「礼儀がしっかりとしているねー。アリアちゃんとは大違い」
「シェリ姉⁉︎」
私の言葉にシェリ姉は笑い
「猫被りだよ、そいつは」
「流沙の言う通り、偽っているだけよ」
瑠璃も頷く。9人全員で頷く。
「本人頷いちゃったよ……」
明日香は呆然と呟いた。
*****
「さて、宴もたけなわという事でそろそろ7時だ。学生は帰りなさい」
「はいはい」
「はーい」
「ちぇー」
「流沙、家まで送って欲しいなぁ」
「仕方ないか」
「悠人と僕は地下鉄で帰るよ」
その帰り仕度の中、明日香は少し困ったような表情をしていた。
「どうしたの?」
「いや……この辺りのビジネスホテルを探さないといけないなって」
「……唐人町付近にあったっけ?」
「無かったと思う……あるとしたら博多周辺ね」
シェリ姉はそう言って時計型デバイスを操作して
「……夏休み入ったからどこも満室ね」
「……少し待ってて」
私はお店から出てスマホを取り出して
「もしもし? お母さん?」
*****
「お、お邪魔します」
「どうぞお上がりって家主のパパじゃないのに私が言うべきなのかな?」
「せめて言い切ってから考えてよ」
私はシェリ姉と明日香と一緒に家に帰って来た。とりあえずお母さんはご飯を作っている途中だからと言って台所に戻って行った。
「ささ、入って」
「お邪魔します……案外広いんだな」
「そうだね。あ、荷物は壁際に」
明日香は物珍しそうに私の部屋を見回して……VRデバイスを見つけた。
「不思議だよなぁ」
「何が?」
「リアルでも向こうでも外見が変わらないアリアがそこにいるんだ。どっちか分からなくなりそうだ」
制服姿でどっかりと腰を下ろして明日香は呟く。確かにそうだ。
「アリアの部屋って結構本が多いんだな」
「え?」
「『VRMMOをマネーの力を使って無双する』『蕎麦・アート・オンライン』『オンリーワン・センス・オンライン』……ゲーム系が多いんだな」
「あ、うん」
「と、思ったら『盾の勇者が成り上がり』もあるし『無職で転生』もあるし……Web小説が書籍化されたのばっかりだな」
「えへへ」
あっさりとバレて少し恥ずかしかった。すると
「しかし中学か……楽しいか?」
「うん。きりたちもいるしね」
「きりってきりひな?」
「うん」
「勉強はついていけているか?」
……
「無言で目を逸らすなよ……」
「だって難しいんだもん」
「そうか」
明日香はははは、と笑って
「少し教えようか?」
「良いよ。それよりも話していた方が楽しいもん」
「ま、勉強したくはないよな……」
明日香は遠い目になった。すると
「アリアちゃん〜、シェリルちゃん〜、明日香ちゃん〜、ご飯よ〜」
「……え」
「お母さんは家に泊まる子を私たちと同じように扱うからね……」
絶句している明日香が動き出すのにあまり時間はかからなかった。
*****
「……シェリ姉、手伝った?」
「うん。私とエミの2人でなんとかね」
「なんとか……?」
明日香の疑問の声に頷いて階段を降りる。そのままリビングに。
今日はお父さんが出張でどこかに泊まっている。だから気にせずに明日香を泊める事が出来る。
「……シェリ姉、グッジョブ」
「エミにもちゃんと言ってよね」
「うん、エミもグッジョブ」
エミの頭を撫でて
「明日香、座ってよ」
「どうぞ、明日香ちゃん」
「それじゃ失礼して」
明日香が私とシェリ姉の間に座る。そして
「今日は何かな?」
「えへへ、今日はね、鶏肉の豚肉炒めと」
耳を疑った。
「牛肉のラム肉煮込み」
「……」
明日香が驚いている。だけどギリギリ普通の領域だ。
トマトの中にミニトマトを入れたのを料理と言ったのは忘れない。
15分後
「明日香ちゃんはアリアちゃんとどんな関係なのかな?」
「えっと……友達ですね」
「アリアちゃんに友達が⁉︎」
「アリ姉に⁉︎」
「ちょっと二人とも?」
お母さんとエミの反応に怒りそう。
「アリアちゃんは昔から不思議な子だったから普通の子が友達になってくれて嬉しいなぁ」
「……私よりお母さんの方が不思議なんだけど」
「え? そうかな?」
ほら、エミとシェリ姉が頷いているじゃん。
*****
「明日香とアリア、お風呂入ったから浸かって来なさい」
「はーい」
「風呂まではさすがに……」
「良いから。多分入らないとお母さんが枕元に立つよ?」
「幽霊かよ⁉︎」
シェリ姉の言葉に明日香は驚くけど実際された。怖かった。耳元でずっと『お風呂入って』って繰り返されるんだからこそ。
「……それじゃ失礼していただくかな」
「どうぞどうぞ。アリアちゃんも一緒に入ったら?」
「え」
「ん……一緒に入りたいなら構わないけど?」
明日香はそう言ったので
「うわ、下着がエロい」
「その言い方はやめようぜ……」
明日香はするりと黒のブラジャーを外し……貴様、揺らしおったな。今、揺らしたな。
「え、なんで睨んでんだ?」
「巨乳め……」
「いや、シェリルの方が大きいだろ⁉︎」
五月蝿いリンゴサイズ。青森県に謝れ。
「……えい」
「躊躇無く触るか⁉︎」
「むむむ、中々の気持ち良さ」
「同性に触られても何の感慨も湧かねーな」
明日香はやれやれ、といった様子でショーツを脱ぎ、持参した袋に入れた。着替え持参だから気にせずに着替えるそうだ。
「アリアも脱げよ」
「……」
フニフニと揉んでいたら明日香に頬っぺたを引っ張られた。仕方なく脱ぐも
ペターン
バイーン
「許さん」
「分かったから体が冷えるぞ」
明日香に持ち上げられて風呂場に運搬された。そして
「大きいんだな」
「3人くらいなら入れるよ」
「そうか」
明日香は私の頭を撫でる。何故そんなに撫でるのかな?
「やっぱ妹って感じだよな……」
「あ……」
「あ、気にすんな。過ぎた事だ」
明日香は私を風呂場の椅子に座らせてシャワーを手に取る。そして
「かけるぞ」
「ばっちこーい」
ジャー、と音を立ててお湯が僕の髪を濡らす。そしてシャンプーを使おうとしたら
「髪くらい洗わせろ」
「普通背中じゃないの?」
「知らん」
明日香は私の髪をワシャワシャとかき混ぜて
「流すぞー」
「ばっちこーい」
「古いな」
明日香は苦笑しながら流す。2回ほどでシャンプーをは流れきったみたい。
「体は自分で洗えよ?」
「分かってるよー」
洗面所から持ち込んだタオルの片方を明日香に渡して濡らす。そして石鹸で泡立て体を磨く。
*****
「明日香ってさー、生徒会長なんだよね?」
「ああ、そうだな」
バスタブの中でゆったりとしている。そして
「進路ってさ、どんな感じなの?」
「あたしは高校出たらすぐ働く予定だ。真央が言ってたように技能は多少習得したからな」
明日香は大変だった、と呟く。気になる。
「ま、中1の夏に考える事じゃないから気楽にしていろよ」
「うーん、そういうものなの?」
「そういうもんだ」
明日香は豪快に笑った。
*****
「やっぱり明日香はお姉ちゃんみたいだよね」
「あ、それは分かるわ」
「そうか……?」
そんな風に盛り上がって、今日は中々眠れなかった。
百合シーンを書こうとして無理だった非力な作者を許してくれ……
実際は少し書いたんですけどr18っぽい感じになりかけたので書き換えました
今舌打ちした男性諸君、この作者の書き方で興奮出来ると思うかい?
次回、アップデート後のSSO
夏休みイベントの始まり!(になる予定)




