店での1日(未満)
「期末テストの結果良かったみたいね」
「どうして分かるの?」
「ニマニマしているもん」
あぅ。
*****
「全体的に点数が高かったんだ」
「そうなんだ」
「マモンのおかげだよ」
「最終的にはアリアちゃんの力だけどね」
マモンは笑いながら製菓スキルでお菓子を作る。僕は料理スキルでうどんを作る。何故かうどんの麺をうつ時にアクティブスキルが使える。つまり
「星屑スキル使うほど麺を切るのは面倒なの?」
「使えるから使うだけだよ」
「ふーん」
スープはあっさりとした魚の出汁を使用したうどん。麺とスープ以外何も無い。今回はお試しだからだ。
「こっちは完成したよ」
「こっちはもう少し……出来た」
マモンはかいてもいない汗を拭う。そして
「パウンドケーキ?」
「そそ、ベルが作ったのが美味しかったから」
それを本人に伝えてあげなよ。本人には伝える気が無い理由が分からない。
「案外満腹になるものね」
「擬似的な満腹感だよ……」
僕たちはお互いに作った物を食べさせ合って
『ちぃ!』
『ちゅう!』
『うぉん!』
『ぎぎ!』
3人とマモンのカゲオが駆け回っているのを眺めて
「いらっしゃいませーってセスタスかぁ。久しぶり」
「お久しぶりですね」
「今日も実況?」
「あ、いや、今日はレベリングとか装備を整えたいなーと思いまして」
なるほど。それでカーマインブラックスミスに。
「どんな装備がお望みだい?」
「片手長剣と魔法を使っているんでint強化される片手長剣が」
「魔法剣士かぁ、ロマンだねぇ」
マモンはそう言い
「スキルではないよね?」
「無いですけどロマンですね」
「int強化の付与素材ってなんだっけ」
基本的に風はagiで炎がstr、水がvitで地がdexだから……
「光か闇だね」
「雷だよ」
「雷は光じゃないの?」
マモンは僕の顔を驚きの眼差しで見てため息を吐いた。酷い。
「確かに光属性魔法の中に雷が含まれていた事もあったけどね? 別のゲームだからね?」
「分かってるよ」
「それに光も闇もまだスキルになっていないよ?」
*****
「そう言えばアリアさん」
「んー?」
僕は完成品のステータスを眺める。
『魔法剣 攻撃力+97 int+58』
「鍛冶屋スキルのランクアップクエストが見つかったらしいですよ」
「ふー……ぬ?」
「良かったね、アリアちゃん」
つまりそれって
「もっと高性能な武具が作れるって事なのかな?」
「らしいですけどね……受注条件が難しいとか」
「そうなの?」
「どんなのかな?」
セスタスは少し考えるようにして
「……100本の中から1本だけ剣を選び、それがその中で最高である必要があるそうです」
*****
「あのー、僕も鍛冶屋なんですけど」
「ああん⁉︎ お前みたいな餓鬼が鍛冶屋ぁぁ?」
「はい」
「……お嬢ちゃん、ここがどこだか分かって言ってんだよなぁ?」
「はい、鍛冶屋として腕の高い方々がいらっしゃると」
ここでは敬語で対応しろ、とセスタスは言っていた。しかしNPCと分かっても少し怖い。
「……ついて来な、試してやんよ」
「はい」
そう言って一室に連れて行かれ
「見えるか? この100本の剣が」
「はい」
「この中に一本だけ性能が他と違うのがある。見つけられれば認めてやんよ」
「分かりました」
僕は一歩前に出て腰の安物の木の剣を抜く。NPCは何も言わない。だから
「ダブルサークル!」
纏めて薙ぎ払う。ポキポキとかなりの数が折れ行く中、一本だけが吹き飛ばされた。
「……これですか」
「正解だぜお嬢ちゃん!」
おっちゃんはさっきまでとは打って変わってにこやかだ。そして
「100本の中から一本を見極める眼力、それさえあれば素材の良し悪しに出来栄え、どんな武具だって作れるってもんよ!」
「そうですか」
「お嬢ちゃんにはこれを渡そう」
「……これは?」
手のひらに乗せられた小型のプレート。それは
「ここの鍛冶屋同好会のメンバーの証だ。持っているだけで性能が高くなった気分になれるぜ」
それ妖しいお薬じゃない?
「それからこの鍛冶屋用のハンマーだ。モンスターを殴っても意味は無いけどな」
*****
「……あのね、アリアちゃん」
「何かな?」
「さすがに99本も剣を折るのはやり過ぎだと思うんだけど」
「やり過ぎですよ」
鍛冶屋同好会の外に出ると2人が呆れたように言う。窓の外から眺めていたそうだ。
「2人とも、装備を強くしたくない?」
「うーん」
「買収ですか?」
「うん」
「素直に言うねぇ。うん、弓をお願いしよっかな」
「では俺は剣を作ってもらったんで鎧を」
と、いう話の流れになって
「高純度ミスリルの場所は明かしてくれないの?」
「一応内緒って事で僕も教えられたからね」
素材を3人で採りに行って
「ひよちゃんは3人に指示を出してヴォルケイノドラゴンを狩って」
『ちぃ!』
素材を集めてもらって
「マモンがstr高めで良いんだよね? dexじゃなくて良いんだね?」
「命中率はあんまり気にしないから。ホーミングとスプレッドをよく使っているからね」
「姑息だね」
「勝てば官軍」
マモンは笑いながら言った。
「セスタスは何を高めにするんだっけ?」
「agiですね」
「速く走って剣を使う魔法使いかぁ……ちょっと厄介になりそうだね」
「そうね」
「え⁉︎」
*****
「ここがアリアってプレイヤーの店か」
「みたいだな」
「……」
「最強と名乗っているそうだな」
「だが我ら6人」
「最強の名を返却してもらおう」
「あのー、店の前で並んでいられると邪魔だから退いてくれるかな?」
「あっ、スンマセン」
*****
「あ、シェリ姉。いらっしゃい」
「今日はご飯を食べに来たんだけどね? 外にテンプレ負け役的なのがいたけど知り合いかな?」
テンプレ負け役……記憶に無いなぁ。
とりあえず店から顔を出すとやはり見覚えない。だから何かを言おうとしているのを無視して店内に入る。
「良かったの?」
「うん、知り合いじゃなかったからね」
僕はカウンターの中に入って
「ご注文は?」
「兎」
「兎の肉を使った料理かぁ。ステーキで良いかな?」
「うん。お願い」
ステーキはvitを上げるんだったかな? そう思った瞬間
「あ、テンプレ負け役」
「なっ⁉︎」
「お客なら歓迎するけど?」
明確な敵意を持っているなら別の歓迎をするんだけどね?
「どうか俺たちと戦ってください!」
「「「「「お願いします!」」」」」
「……だってさ、どうするの?」
シェリ姉は楽しそうにニヤニヤ笑っている。僕はため息を吐いて
「そこの看板をお店の前に出して。それとシェリ姉のステーキを焼き終わってからね」
「は、はい!」
「それと街の中じゃなくて外で、ね」
僕はフライパンで焼く。そして火が通ったのを確認して
「はい。味付けは塩胡椒だから」
「はーい。いただきまーす」
シェリ姉はナイフとフォーク(武器としてダメージを発生させられない)を使ってお肉を切り分けてもぐもぐと食べる。そして
「私も見学しても良いかな?」
「僕は構わないけど」
「大丈夫です!」
あるぇー?
どっかで同じタイトルを見た記憶が……
新作書き始めましたよー
出来るだけラノベテンプレを出す予定




