モンスターテイマーひよちゃん
「と、言うわけでみんなで頑張ってドラゴンと仲良くなろー!」
「無理だと思うよ?」
「それとみんなって言っても結局いつものメンバーじゃないか」
僕とマモンとシエルとセプトとリョーマとシェリ姉の6人パーティだ。
テイムモンスターはパーティメンバーにカウントはされない。でも経験値はもらえる。素敵。
「それで今日は誰を狙うの?」
「え、ドラゴンを狙おうよ」
「スキル習得なのにボスクラスに挑むのはおかしいよね?」
『ちぃ!』
『ちゅう!』
「ほら、2人もこう言ってる」
*****
「と、言うわけで具体的にモンスターを決めた結果砂漠に来ちゃったね」
「最初にリョーマが決めたからね」
「かたじけない」
「気にすんな、あたしたちも手伝ってもらうんだから」
砂漠を見回しながら歩く。前に僕が遭遇した場所へ。
しかし
「中ボスクラスだと思うんだけどね」
「それがね? 中ボスクラスなら可能性は低いけどテイム出来るんだって」
「ふーん。ちなみにリョーマの目標は誰かすでにテイムしたのかな?」
「テイムスキルがそもそも無名で御座るからな……検証とさせていただく」
「僕たちだとテイム前に全損させちゃいそうだけどねー」
僕の言葉に5人の足がピタリと止まる。そして
「思っていたが言わなかったんだ!」
的な内容の事を5人から言われた。酷い。
「ひよちゃんたちも警戒してね?」
『ちゅう!』
『ちぃ!』
ひよちゃんの上でシャドーボクシングをするちゅう吉。しかし
「ひよちゃんの次の進化があったら僕も乗れるかな?」
『ちぃ?』
「そうだよね、分からないよね。 っ、リョーマ!」
「む、見つけたで御座るか!」
「こっちに来てる! 必要があるなら手伝うから!」
僕たちは一斉にリョーマから離れる。そしてリョーマにトレイン。
トレインとはモンスターに狙われた状態、タゲられている状態で他のパーティやプレイヤーのところに逃げ、モンスターを押し付けるマナー違反行為だ。
もっともこの場合は打ち合わせ済みだ。
「あ、向こうから鳥が来てる」
「はーい。ホーミングポイズンアロー!」
リョーマと目標のモンスターを二人きりにする事だ。
テイムの方法はモンスターによって違うらしい。ひよちゃんの場合は引っこ抜いたけど亀はひっくり返ったのを元に戻す、などだ。
「む、居合・三日月!」
「なーんか、狩りそうじゃないか?」
「とりあえず眺めながら考えるぞ」
セプトの言葉に2人の動きを眺める。
「ラミアの急所がどこか分かるか?」
「え」
「ちょ」
「うーん」
「それを聞くのはどうかと思うなー」
「……何か失言したか?」
セプトは困ったような表情だ。それにシェリ姉が苦笑して
「あの子、外見は女の子だよ?」
「あの子に限らないけどね」
「……」
セプトが分かりやすく顔を赤くした。そして
「……言いかたを変えよう。どうしたらテイム出来る状況に持ち込めるか、だ」
「それはアリアちゃんが経験者だから一回説明して欲しいんだけど?」
「そうね」
「だな」
「言われなくてもするつもりだよ」
僕はひよちゃんに氷結草、ちゅう吉に烈風草を食べさせる。2人は黙々と食べる。
「ひよちゃんの場合、困っている状態から助けたんだ。あそこに見える山の上で嘴で突こうとしてきたんだけど地面に刺さってね」
「困っている状態から助ける」
「分かりやすいけど」
「ラミアってどうやったら困るんだ?」
下半身は蛇、上半身はトップレスの女の子だ。リョーマが実は目を細めてあまり見ないようにしているのは知っている。
「「「「「……」」」」」
途端に全員で沈黙する。するといきなり
『ちぃ!』
『ちゅう!』
「あ、こら⁉︎」
2人が飛び立つ。そしてリョーマとラミアのところまで飛び
『ちぃ(ウォーターボール)! ちぃ(アイスフロア)!』
『ちゅう(ウィンドボム)!』
「む⁉︎」
『ぎぃぃぃ⁉︎』
ちゅう吉の放った風の爆弾は砂漠だからこそ威力を発揮した。撒き散る砂がリョーマとラミアに覆い被さろうとする。
リョーマは持ち前の瞬発力で回避するがラミアはそうはいかない。砂に下半身が埋もれ
『ぎぃぃぃぃ⁉︎ ぎぃっ⁉︎』
氷に覆われた首より下が動かない。それに悲痛な叫びを上げるラミア。その目は
「ひよちゃん! めっ!」
『ちぃ⁉︎』
ひよちゃんが慌てて僕の頭に着地する。そこじゃないよ……
「むぅ……ラミアがひよちゃんを見ておる気がするで御座る……」
「リョーマが助けてあげて!」
「む、了承した」
*****
「危なかった……」
『ちぃ……』
「ひよちゃんは悪くあらず、拙者が至らぬだけで御座る」
「ま、なんにせよリョーマも仲良くなれたから良いんじゃない?」
そう、マモンの言う通りリョーマはラミアをテイム出来た。しかし気になるのはラミアは
「ちっちゃな蛇だね」
『きゅぃ⁉︎』
「アリア殿、この子は立派になるで御座るよ」
「そっか」
パンパン
手が打ち鳴らされる。その方向に顔を向けると
「次を決めよっか」
「はーい」
「とりあえずリョーマが終わったから後は5人ね」
「だから僕は2人がいるから良いって」
「だーめ、みんなで一緒に」
マモンはニコニコしながら言う。仕方ない。
「それで次はどうするのさ」
「私とシェリちゃんは近接系の、シエルとセプトは中、遠距離系のでしょ?」
「近接系ならソードマン系か?」
「遠距離系なら……」
シエルはそこまで言ってひよちゃんを見る。そしてため息を吐いて
「ま、あんな感じすれば良いよな」
「あー、私はちょっと違う感じな子が良いんだけど」
シェリ姉の言葉に僕はシェリ姉の好みを思い出す。
「栗鼠だね」
「アリアちゃん正解」
「栗鼠型モンスター……いたっけ?」
「おそらく森の中に出るのでは?」
「多分そうだろうな」
「攻略サイトを確認してみるね」
僕たちは三々五々に調べて
「いたけど……鼠から進化していく感じ?」
「テイムしたら系統の一番下になっちゃうからね……」
マモンは言いながらちゅう吉に気付く。そして首を横に振って
「鼠系のモンスターは色々な場所で出るからね。誰かのと一緒に行けるね」
「それなら次はあたしでも良いか?」
「良いよ?」
「あたしは純粋な魔法系のモンスターが良いんだ」
「うーん。育て方はアリアちゃんみたいに適性に合わせたご飯みたいだからね」
「ステータスだけなら大差は無いよ。全部10ずつ」
僕の言葉にみんなが頷く。リョーマも頷く。しかし
「ネクタイ?」
「ダキがじゃれついておるのだ」
「ダキ?」
「蛇の姫で蛇姫で御座るよ」
「む」
「アリアちゃんと違ってネーミングセンスが『ちぃ!』『ちゅう!』
2人の抗議にシェリ姉は誤って
「シエルはどんなモンスターが好みなの?」
*****
ドラゴンに進化するのはリザードマン系統だと思われる。だからひよちゃんとちゅう吉が頑張って氷に閉じ込めた。そしてそれを丁寧にシエルが砕いて助けた。
『ぎゅり!』
「……なぁ、アリア」
「……何かな」
「テイムしたモンスターって頭の上が好きなのか?」
リョーマの頭の上で蜷局を巻いて寝ている蛇姫と僕の頭の上でひよちゃんがすやすや、その上でちゅう吉もすやぁ。そして
「リザも頭の上にいるんだね」
「あぁ……シェリとマモンとセプトの方がどうなるか楽しみだ」
「スライム乗せたらベトベトして面白そうだね」
「お、それ良いな。セプトがスライムをテイムする方に掛ける」
「なら僕はマモンがワイバーンをテイムする方に掛けるよ」
「掛けが成立しておらぬぞ……」
リョーマが頭を動かさないようにしてボソリと呟いた。
タイトルはおかしくありません
テイムの過程
モンスターを困らせる→モンスターが助けを求める→助ける
の一連動作です
そこでひよちゃんたちはモンスターが助けを求めるところまでやっています
最後までやっていたらアリアのテイムモンスターが増えています
多分首を痛めるくらいには




