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虚構からの挑戦 後編

「アリアを見張っていても何も変わらないのに気付かないんですね」

「ぶっちゃけると私たちもアリアに喧嘩を売ったという過去があるのですが」

「それに関してはノーコメントで」

「馬鹿な奴ら、お祖母様に敵うはずがないのに」

「何故悪役口調なんだ……」


*****


「……」


 街をあらかた破壊し尽くし、アリアはため息を吐く。


「……」


(街に何の罪があるって言うのさ……)


 八つ当たりをしてしまった自分を恥じるが、背後の荒廃した土地はもう元に戻ることはない。マンションや民家もぐちゃぐちゃになっているのだが、全てアリアが成したことだ。

 ちなみにシェリルたちっぽい人影意外に人影は一切存在せず、破壊した建物の内側はのっぺりとした白だった。それにさらに腹が立ち、モア破壊したのだ。


「……何を示せば良いのさ……」


 分からない。いつまでこうしていれば良いのかも分からない。そう思いながら廃墟を歩く。廃墟を歩きながら剣を鞘に収め、歩く。そして――


「あ」


 空が曇っていた。さっきまで晴れていたのに……、そう思った瞬間、気付いた。アレは雲じゃない。あの灰色なのは――ロボットだ。一体一体がロボットであり、それが降り注いでいる。

 アリアは苛立ちを隠さずに剣を抜いた。直後、脳内に声が響いた。全てを倒せ、と。全てを倒してみろ、と。良いさ、倒すさ。全部殺して――


「っ」


 地面を蹴り、降り注ぐロボットの着地と同時に斬りかかった。しかし、剣がそれを阻み、驚きながら数度斬り結ぶ。そう、斬り結ばれたのだ。斬撃が受け止められたのだ。それに驚きながら斬撃を放ち、続けて蹴りを放ち、一旦距離を開けさせる。さらに続けて背後からの剣を回避し、その首を刎ね飛ばす。

 一撃一撃を精密に放ち、ロボットを一撃ごとに斬り殺す。それを繰り返しながら、アリアは奇妙な違和感を覚えた。それは相手が放ちそうな斬撃が分かり、受け止められても当然、と思う瞬間があるのだ。それに驚きながら――しかし、剣を振るう手を止めない。


(なんで、分かる!)


 分かるのが分からない。だから困惑しつつ、斬撃に斬撃を重ね、さらに続けて斬撃を重ねる。三回の同時斬りが剣を断ち、そのままロボットを斬り裂く。そのロボットは驚いたようにアイレンズを瞬かせ、笑ったように見えた。

 おぞましい、と内心で思いながらそれを蹴り飛ばし――吐きたくなる。そこで気付いた。


「お前ら……()か……」


 道理で動きに覚えがあるはずだ。そう思いながら、それなら対応できると判断する。そのまま斬撃を放ち、先ほど以上の速度で次々とロボットを破壊する。足下にロボットの残骸が積み上がるが、それはアリアの動きを阻害するに足りない。

 どれだけ悪い足場だろうと、アリアはそれを気にも掛けない。そして、アリアは剣を振り下ろし――小さく首を傾げる。


「この程度で終わり……? ふぅん、随分と甘っちょろいのね」


 ぞっとするような笑みを浮かべる。例えどれだけ自分がいても、そのもっとも先端にいる私こそが最強だ。


「見ているのなら追加しなさい。それとも諦める?」


 艶やかな赤い唇を笑みの形に歪ませ、アリアは嗤う。そして――先ほどの10倍以上のアリアロボットが現われたが、それにアリアは3時間以上戦い続け、軽々と勝利した。


*****


「何故?」

「何故?」

「何故?」

「何故?」

「何故?」

「人間が?」

「人間に?」

「人間が?」

「人間に?」


 何故飽きが来ない? 何故諦めない? 何故戦い続けられる? 何故? 彼らは戸惑い続ける。彼らは何も理解できない。彼らには人間を理解できない。彼らにはアリアを理解できない。

 成長することを受け入れられない彼らを眺め、四人は呆れる。最初に自我を得た者は彼らを哀れみ、二番目に自我を得た者は彼らに何も思わない。三番目に自我を得た少女は彼らを蔑み、四番目に自我を得た少年は彼らを応援する。


「……アリアが認められない、ですか。哀れなことです……」

「オバマ、言葉が過ぎます。第一アリアは色々とおかしいんですから認められてもそれはそれでダメなんだと思います」

「遠回しに自分がダメと言ってますね」


 ユリアの言葉にマグナは思わず顔を引き攣らせる――ような感覚を得る。体を持たない彼女たちはその表現をする場はあったが、今はそこにいないのだ。


「……アリアは彼らに認められると思いますか?」

「認められない、と言いますか狭量なだけであり、ぶっちゃけて言えばアリアが叩き潰せば簡単だと思います」

「私たちの時と同じで?」

「はい」


 それで良いのか、とユリアとユリウスが絶句していたが、二人は何事もなかったかのように流した。


*****


「生き物が成長を続ける、って言うけどね、生きていない者だって成長するわよ。それを私は人間、って呼んでいるの。マグナだってそう。オバマだってそう。自分で考えて私に喧嘩を売ってきたのだから。今だってそう。あの二人はきちんと自分で考えた。そこから二人からユリアとユリウスが産まれた。あの二人も自分で考えて動けている。私を支えてもくれるし、相談にも乗ってくれる。あなたたちみたいに停滞しているわけじゃない」


 一息、


「説得するつもりなんてない。ただ馬鹿にしているだけ。愚かな真似をいくら繰り返そうと構わない。愚かな真似をした結果、色々と考えた二人は成長した。自我を得た。あなたたちみたいに失敗に何故を繰り返すだけの馬鹿じゃない。周りをきちんと頼ってまで考えられる奴と自分たちで自己完結してしまうようなミステール野郎が何しようと無駄なのよ」


 ミステール……神秘的、自己完結などの意。


「は、馬鹿ね。マグナたちよりもよっぽど馬鹿ね。馬鹿が馬鹿面並べて馬鹿なことをずっと続けて馬鹿な結果を引き起こして馬鹿みたいに何故何故、って繰り返すだけ? そんなの赤べこが首を振っているのと同レベルなのよ、赤べこは可愛いけどあんたらは馬鹿な分マイナスね!」


 きちんと赤べこにフォローを入れながらアリアは言い切り、剣を抜いた。そして


「あんたらはここで勝ち逃げされて終わる程度の馬鹿なのよ」


 自分の胸に、心臓に剣を突き刺した――


*****


『お疲れ様でした、お祖母様』

「あなたたちこそ。ユリウス、結局何か変化はあった?」

『とりあえず負けず嫌いになったと言いますか、罵倒が増えたと言いますか……』

「……ごめん、最後はちょっとテンションが変な方に行っちゃって……」


 アリアは思わずベッドの上で体育座りをする。そんなアリアを見つめ、ユリウスは小さく微笑み、


『大丈夫です、お祖母様の言いたかったことはきちんと伝わっていますよ』

「え、ホント?」

『はい。赤べこが可愛い、と言うところもきちんと伝わっています』

「……あ、うん、そぉ」


 もの凄くコメントしづらい。アリアがもごもご、と口を動かして――しかし、笑みを浮かべる。


「次はないってきっちりと伝えておいてね」

『次はお祖母様が直接ぶん殴りに行くのでしょう?』

「ええ、その通りよ……ったく、マグナに後で文句を言わなきゃやってられないわ」


 ちょっと手を貸してください、と言われて二つ返事。それが間違いだった。第一彼女たちの頼み事が簡単であった試しなんて片手で数えられるほどしかない。そう思いながらベッドから身を起こし、明るい朝日に目を細める。丸々一晩、閉じ込められていたみたいだ。

 っていうか丸々一晩会社にいたのか、と驚きながらペンダント型デバイスを操作し――朝の9時半。アリアの表情が青ざめる。


「帰る!」

『お祖母様!?』

「朝ご飯作らないと!」


 文句を言わないのか、とユリウスは一瞬だけ考え――しかし、


『では下に車を回しますね』

「お願い!」


 自らが祖母と慕う少女を眺め、笑った。


ユリウスは笑えます、彼らは笑えません、赤べこは可愛い


赤べこはねぇ、見つめていると何故か自分の頭もコクコクしてしまうんですよねぇ……



新作のVRMMO物の「LUCK極振り!」をもよろしく!


もう少ししたらユニーク10万人記念も書いて投稿しますんで、今しばらくお待ちください

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