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ただいま、お帰り

 アリアの言うずるいこと、それはステータス任せの翻弄だった。地面を蹴り、宙を舞い、四方八方から仕掛けるつもりだったのだ。だが、


「ん、こっちかな」

「っ!?」


 悉く読まれている。アリアは驚きながらそれを内心に留め、表情に出さないように努力する。そのまま速度を増して攻撃頻度を上げるが、何故かシンはそれを軽々と防いでいた。

 それは焦りから来る攻撃の単純化が原因だったのだが、アリアが気付くことはなかった。もっともアリアは気付いていたが、その声にアリアが耳を傾けることはなかっただけだ。


「ぁあっ!」

「ん」


 右手の剣、《アリア》が《天魔龍皇剣》に阻まれる。左手の剣、《エクスカリバー》が《夜明けと黄昏の剣(ドーン・トワイライト)》に阻まれる。どれだけ猛攻を仕掛けようと、アリアに剣はシンまで届かない。

 シンは冷静かつ慎重に攻撃を阻み続けていた。だが、決して余裕が有るわけでは無い。紙一重に攻撃を避けながら、衝撃が掠るだけでも全損する体力を護り続ける。それはアリアをずっと見続けていたシンだからこそ、できることだった。


「――あぁ、もう、焦れったいなぁっ!」

「どうも随分と焦っているみたいだね……でも、僕はまだ負けないさ。アリアを斬るまでは負けないよ」

「っ、あははは!」


 アリアは高笑いをし、にんまりと笑みを浮かべた。そしてそのまま翼を広げ、地面を蹴った。そのまま高速の突きを放つが、アリアの剣は阻まれる。さらにそのままシンの斬撃がアリアの体力を削り取ろうと迫るが、それはアリアの翼が振り払う。しかしアリアの翼も無事ではない。

 千切れ飛ぶ翼に感慨を受けずに剣を振るう。しかしシンはどれだけ斬りつけようともダメージを与えられることはなかった。もっともそれはアリアもだった。


 アリアの握る剣、《エクスカリバー》が音を立てる。ぴしり、とまるで折れるかのような音を立てる。しかしアリアはそれに惑わない。最後まで使い切る、という意志を載せて全力の斬撃を放つ。それが巨剣と激突し、砕け散るが


「《かぁっ》!」

「無駄だ!」


 吠えるだけのスキルで剣の破片をシンへと飛ばす。しかしそれは巨剣が扇ぐように振られ、全てが弾き飛ばされた。さらにその隙を狙う《アリア》は軽々と割り込んだ剣が止め、さらにシンの蹴りがアリアの小柄な体を吹き飛ばす。

 ダメージは0ではない。だが、アリアの体力は0ではない。ギリギリで耐えきったのだ。それは装備のおかげだろう。そんな風にシンは思いながら追撃として


「《ミーティアリープ》!」


 高速の突進斬撃を放つ。それにアリアは反応出来ない。吹き飛ばされつつ有るアリアは反応出来ない。

 袈裟懸けの斬撃が、小柄な体を真っ二つに斬り裂いた。その手応えにシンは安心しながら一息吐く。そして地面を蹴り、背後へと跳ぶ。直後、シンが立っていた位置を高速の斬撃が斬り裂き、陥没させた。


「ようやく一度、殺せたよ」

「《不死鳥》装備じゃなかったら今ので負けていたわね……でも、今ので私の体力は満タン、一方シンの体力は残り僅か。随分と差が付きました、悔しいでしょうねぇ」

「……どうだろう? あんまり悔しくはないかな」


 シンは《不死鳥》装備を持っていない。それどころか死を免れる装備を一つも持っていない。今残っている1割にも満たない体力がシンの全てだった。

 シンは冷静に自分の状態を把握しながら剣を握りしめる。そのまま深呼吸して


「おいで、アリア」

「うん!」


 アリアは地面を蹴り、シンの背後に回り込む、と見せかけてその場で跳躍し、真上からシンへと剣を振り下ろす。しかしそれはシンが振るった剣に阻まれ、続く巨剣に弾き飛ばされた。

 そのまま地面を蹴り、真下からの切り上げに剣を合わせ、その衝撃でアリアは跳ぶ。そのまま軽々と着地して、シンの体力を眺める。一切減っていない。だが、アリアの体力は今の一合で少し減っている。


 この少しの積み重ねがさっきの死だ、とアリアは冷静に思いながら《アリア》を振るう。それが受け止められると同時に腕を引き、そのまま突きを放つ。《天魔龍皇剣》は幅が広く、防御向けだなぁ、と冷静に考えながら背後に下がり、シンの斬撃を受け止め、受け流す。さらに続けて剣を振るうが、中々シンの防御を破れない。


「……もしかして」


 勝てない? そんな疑惑が脳内に浮かび上がった。首を振るい、その恐怖を振り払う。いや、怖くなんてない。むしろ――


「素敵よ、シン。愛しているわ!」

「僕もだよ、アリア!」


 アリアは地面を蹴り、シンへと斬りかかる。シンはそれを眺めながら剣を振るい、迎え撃つ。

 アリアの握っている剣は一本、《アリア》だけのはずだった。しかし今のアリアの手には二本の剣が握られている。対するシンの剣は《夜明けと黄昏の剣(ドーン・トワイライト)》と《天魔龍皇剣》。アリアが作り上げた最強の剣とシステムが創り上げた最強の剣。どちらが強いのか、今決着が付こうとしていた。


 アリアは剣を両手で握り、振り下ろした。それを正面から迎え撃つように、シンは巨剣を振り下ろす。巨剣に切り込みが産まれるが、どう足掻いても耐久は減らない。しかしアリアの斬撃は加速する。


「――――っっっっああぁあっ!」


 剣が振り抜かれると同時に、太くて大きなそれが宙を舞った。それにアリアは驚き、シンは無反応だった。そしてアリアの虚を突いて


「やっぱり、アリアならシステムを超えてくると思ったよ」

「っっ!?」


 シンの言葉にアリアは動揺する。アリアは切れない、と思っていたのだ。だからこそ、シンの手から剣を弾き飛ばし、追撃を加えるつもりだった。だが、切れてしまったのだ。それがアリアを動揺させ、シンに絶対のチャンスを与えてしまった。

 シンは途中で斬られた《天魔龍皇剣》を背後に向けて振るう。アンバランスなそれは耐久が無限な故に、斬られても消滅はしないのだ。それを利用して体を回転させる。そのまま遠心力を乗せて、《夜明けと黄昏の剣(ドーン・トワイライト)》を振り抜く。


 アリアは咄嗟に剣を割り込ませたが、衝撃で吹き飛ばされる。それにアリア自身が驚いていると、シンの声が聞こえた。


「《アークスラッシュ》!」

「っ、《ソードリバーサル》! 《メテオインパクト》!」


 空中で受け流し、空中で姿勢を制御しながらアリアは剣を振り下ろす。しかしシンはそれを読んでいた。両手の剣を交差させ、衝撃を受け流すように剣を振り払った。

 それは《ソードリバーサル》を擬似的に再現した一撃。アリアはそれに惑い、振り払われた剣を手元に戻すのが一瞬遅れる。さらにシンが続けざまに攻撃を仕掛け、アリアの反応が徐々に遅れ始める


 アリアの表情に焦りが浮び、それを掻き消すかのような笑みが浮かべられる。シンはそれに構わず、追撃を放ち続ける。


「《スターダストスラスト》!」

「《アークトライ》!」


 高速の三連斬と高速の三連斬が正面から斬り結ぶ。お互いに握っている剣が弾き合い、距離を詰めさせない。それがアリアにとって歯痒く、シンにとっても歯痒かった。だが、アリアには余裕がなく、シンには余裕がある。その決定的な違いが今の戦闘に顕著に表れていた。


「――アリア」

「なんだい?」

「随分と差が付いたね」


 シンの斬撃がアリアの髪を掠め、空中に赤を散らす。しかしアリアの斬撃はシンの握る断たれた巨剣に阻まれ、何一つ成果を残さない。


「まだまだ!」

「もう、遅いんだ」


 シンはそう呟いて、アリアの細い首に向けて剣を振り下ろした。


サブタイトルで内容を予測出来た人は凄いと思います


次回、決着が着けば良いなぁ

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