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決着は付かず

今回戦闘回

読みたくない人はタイトルと後書きだけを読めば分かるようにします

 アリアの放ったスキル、《露草》は単純な三連撃だ。だからこそ、その軌道を読めば防ぎきることは難しくない。だが、それを放つ剣が100万本ならば……容易ではない。


「ん」


 しかしシンは冷静に剣を握りしめ、もう片方の剣を鞘に収める。そのまま両手で巨剣を握りしめて、大きく息を吸って


「はぁぁぁっ!」


 スキルでも何でも無い斬撃を放ち、剣を斬り裂く。次々と剣が斬り裂かれ、爆散していくのを眺めながらアリアは小さく息を吸い、左腕を振りかぶる。そのまま地面を蹴り、左腕を放つ。


「っ!? これはルフ!」

「だけじゃないわ!」


 ひよちゃんの翼が、ちゅう吉の魔法が、アリアの尾がシンを攻め立てる。巨大な剣一本では防御しきれない、とシンは考えながら、しかし剣を抜く隙が無い。

 咄嗟に剣を地面に突き刺し、壁とする。そのままその影に隠れて小さく息を吐きながら剣を抜く。しかしその間にもアリアの攻撃は止まらない。いくら耐久が無限の剣だからと言ってもそれが攻撃を全て防げるわけではないのだ。


「……残り体力、2割」


 対するアリアは万全の10割。勝ち目は完全に無い、とシンは冷静に考えながら地面から剣を引き抜き、投擲する。アリアはそれを受け止めることはできない。

 その結果を冷静に眺めながら地面を蹴って直剣を振るう。アリアの剣と激突し、噛み合うがどちらも一歩も引かない。しかしアリアの左腕、ルフが噛みついて来る。


「ん」


 剣を振り払い、そのままルフに斬りつける。しかしアリアはルフを守るように剣を振るい、シンの剣を防ぐ。そして産まれた隙をシンは見逃さず、アリアの背中を切りつける。


「っ!?」

「ルフを護るんだね」

「……大切な仲間ですもの」

「そっか」


 シンは小さくため息を吐いて剣を握りしめる。そのまま低く構えて


「ならば君がどこまで守り切れるのか分からないけど、そっちを狙うのは辞めよう」

「ありがとう、シン。それのお礼になるか分からないけど……お願い、ひよちゃん、ルフ、ちゅう吉。今は私の力だけで戦うから!」

『ちぃ……』

『がぅ……』

『ちゅぅ……』

「私だけがシンを斬る。だから邪魔はさせない。私だけがシンを斬る」


 アリアはそう言いながら翼のように《アリア》を構え、小さく息を吐いた。そしてそのまま地面を蹴り、斬りかかる。

 それはシンの虚を突き、彼の右腕を切り落とそうと迫った。直前でシンの剣が割り込むが、衝撃までは殺せない。シンの足が地面を削りながら後退する、がアリアの追撃が叩き込まれる。

 突き、切り上げ、切り下ろし、左右からの連撃。柄による打撃も加えた無限に続くかのようなコンボはシンの二本の剣に阻まれているが、ダメージが無いわけではない。


「残り体力が1割を切ったよ?」

「……まぁ、まだ負けって決まったわけじゃないからさ。それにアリアだってさっきの一撃で半分以上持っていかれたじゃないか」

「ええ、そうね。でもシンの剣よりも私の剣の方が速いわ」

「かもしれないね」


 シンは巨剣を握りしめ、振るった。そしてそれを見極め、アリアも高速で剣を振り抜いた。それは《天魔龍皇剣》を斬り裂き、しかしその耐久を失わないという矛盾した光景を見せる。それにアリアは動揺し、シンは動揺しない。

 もう片手に握る《夜明けと黄昏のドーン・トワイライト》を振るう。それがアリアの細い首に吸い込まれるように迫るが、咄嗟に放った拳が剣を逸らす。しかしダメージはある。


「っ!?」

「ん」


 シンの剣がアリアを切り裂こうと迫る。しかしアリアの剣は無限の耐久を持つ剣に食い込み、抜けない。咄嗟に巨剣を蹴りつけ、背後に飛ぶが完全に徒手空拳となってしまった。


「終わりだよ、アリア」

「……まだ、私は負けない!」

「無理だよ。アリアじゃ勝てない」

「……私は……僕は負けない!」


 シンが驚く間もなく、アリアの表情がかつての表情となる。愚直なまでに最強を目指し続けていたあの頃の表情となった。


*****


 お帰り、僕。

 ただいま、私。


「――シン」

「アリア……」

「僕らは全力で君を斬り裂く。全力で応えて見せろ!」

「――うん」


 アリアは一緒にいるだけで良いと言ってくれた。でも、アリアは応えろと、今は言う。ただいるだけじゃなくて、着いて来い、もっと見せろと無茶を言う。


「君のそういう無茶振りが、僕はとても好きだった」

「ありがと、シン」


 アリアは微笑んで剣を背負うように構えた。そしてそのまま地面を蹴り、袈裟懸けのように剣を振るう。しかし、それはシンの剣が軽々と受け止め、もう片方の剣で切り裂こうとした。だが、アリアにはその程度の剣は通用しない。

 地面を蹴り、前に出る。そのまま紙一重で剣を避け、足下からシンに斬りつける。咄嗟の蹴りがそれを阻むが、アリアの剣が一瞬制止し、シンの足を切りつける。だが、それはシンの剣が阻み、もう片方の剣で斬りつける。


「中々攻め込めないなぁ」

「まぁ、護りは僕の得意分野だからね……こればかりは負けられないよ」

「うーん」


(あなたが不容易に攻め込んでいるからですわよ。もう少ししっかりと考えてから攻撃しなさいな)

(お断る)

(はぁ!?)


 アリアは地面と体を平行にしながら走る。そのまま右下から切り上げを放ち、シンの剣を弾く。そして左からの薙ぎ払いを放つが、それは巨剣に阻まれる。巨剣の切り込みに嵌まらないように、とアリアは考えながら突きを放ち、防御を崩そうとする。


「……」

「むぅぅ……おいで、《エクスカリバー》」

「うわ、懐かしい」


 アリアがアリアと別れてから使わなくなった剣だ、とシンは思いながら内心で冷や汗を掻く。どう足掻いても勝てなかったあの頃を思いだしたのだ。

 咄嗟に息を吐いて、二本の剣を構え直すシン。それをアリアはじっと眺めてから、剣を構える。まるで鳥の翼のような構えを取り、アリアは地面を蹴った。


 高速で突っ込んでくるアリアを眺めながらシンは巨剣を振るう。牽制としての一撃に手応えはなく、奇妙な感覚があった。そして強い手応えが有り、首へと斬撃が放たれる。咄嗟に剣を割り込ませ、その衝撃で吹き飛ばされた。

 アリアは巨剣に着地し、巨剣を足場にしたのだ、と理解しながら吹き飛ぶ。ダメージはないが、下手な着地をすれば体力は0となる。足首も挫けない、と思いながら地面に巨剣を突き刺して、巨剣を足場に跳び上がる。そのまま両手で《夜明けと黄昏の剣(ドーン・トワイライト)》を握りしめ、アリアに向けて振り下ろす。


 アリアはそれを眺めながら両手に握る剣を交差させて構えた。そしてそのままシンの剣目掛けて高速で振り抜いた。


「――ん」

「っっっ!?」


 シンの剣に弾き飛ばされた。アリアがそれを理解したのは、残り体力が1割を切った警告音が鳴り始めていたからだ。

 とりあえず地面から体を起こし、迫っていた剣を避ける。そのまま返しの一撃を放つが、シンはそれを剣で受け止めて斬撃を放つ。体勢が不安定なアリアに向けて追撃を放つ罪悪感が無いでも無いが、こうでもしないと勝てないのだ。


「ん、ん、っと」


 でんぐり返り、跳躍、着地。そうやってアリアは体勢を立て直して剣を構えた。そして地面を蹴り、シンの喉を狙った斬撃を放つが、シンはその程度の攻撃を受けない。剣が斬撃を振り払い、返しの一撃を放つ。それをアリアは跳ぶことによって避け、着地を狙った斬撃を正面から受け止めた。


「うーん」

「どうしたの?」

「負けそうだなーって思っただけ」


 口調は軽いが、アリアは本心からそう思っていた。だから


「ちょっと、ごめん」


 ずるいことをする決意をした。


まだまだ夫婦喧嘩は続きます

喧嘩じゃないけどさ


次次々回辺りで終わる予定

そして予告していたリメイクはちょっとリアル事情により遅くなるかもしれません


続編も書いていますが、投稿ペースは週一くらいになると思います


あー、モーニングスターに通らないかなー

一次だけでも通りたいなー

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