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二回戦

「魔王が負けたか」

「奴は我々10人の中でも最弱」

「次はこの俺が相手よ」


 選手席でノリノリな会話をしているマモンとレヴィ、ジャックを眺めて


「シェリ姉、トーナメントってランダムだよね?」

「そうよ」


*****


「――」

「――」


『えー、何やら一触即発な雰囲気ですがアリアさん、どう見ますか?』

『そうね……ぶっちゃけて言えばシェリ姉もエミもそれなりに強いし、エミのスキルならシェリ姉に通じると思う』

『ではエミの勝ちだと?』

『そういうわけじゃないわ。そのスキルだけじゃシェリ姉の攻撃を防ぎきれないと思う。だからどれだけエミが対処しきれるかによって結果は変わるわ』


 実況席の声が五月蠅い。エミは舌打ちをしたい気分で顔を顰める。その正面には怖気立つような表情を浮かべた姉が立っている。そしてその手には一本の短い指揮棒のような杖が握られていた。


「――まさか、エミとはね」

「嫌?」

「別に。蹂躙するだけだし」

「できると、させると思う?」

「さぁ?」


 姉はあくまでも惚けたような、馬鹿にしたような口調で指揮棒を振るって


「さーん、にー、いーち」

「っ!」


 1のカウントが終わり、口が動く。その瞬間に地面を蹴って前に出る。魔法使い相手ならば距離を詰めて攻撃を叩き込むしかない。そんな決意の元、地面を蹴ったが


「《セブンソード・メテオ》」

「《太極》!」


 七本の剣を扇ぐ。そのまま攻撃権を奪い取り、七本の剣をシェリルへと飛ばすが


「《セブンソード・シルド》」


 七本の剣が交差した歪な盾が七本の剣を受け止めた。そして起きる爆発の影から続く声が聞こえた。


「《セブンソード・ミラージュ》」

「っ!? 《両義》!」


 諸刃の剣のようなスキルだが、使わざるを得ない。その名の通り反対する二つの意味を持つスキルは攻撃をお互いが受ける、と言ったものだ。シェリルの放ったスキルで現われたは7を軽く越えており、どれが本物かを見極めるのが難しいということで諦めたのだ。


「ふーん」


 シェリルはエミと自分の体力が減ったことからスキルの内容を把握しつつ、小さくため息を吐く。そのまま杖を振り上げて


「《サウザンドソード・レイン》」


 広範囲殲滅スキルを使いつつ、さらに杖を振るって


「《サウザンドソード・メテオ》、《サウザンドソード・アーツ》」


 杖を振るう度に1000本の剣が怒濤の勢いでエミに迫る。しかしエミの体力が減ることはなかった。


(何かしらのスキルを使っているか、避けている? それとも防いでいる? だったら)


「《大瀑布の暴虐(タイラントウェーブ)》! 《超新星爆発(ノヴァブラスト)》!」

「《四象》! 《八卦》! 《六十四卦》!」


 太極から両義、両義から四象、四象から八卦。次々とスキルを展開していくエミの表情は決して穏やかな物ではなかった。攻撃を防げていたとしてもこちらからは攻撃を仕掛けることはできない。


「……はぁ」


 地面を強く蹴りつけて前に出る。そのまま扇を頭上に翳し、対の扇を背に構える。そのまま奉納を開始する。

 《太極》が完全反射、《両義》は互いが受ける。ならば《四象》《八卦》《六十四卦》は――?


*****


『なんだかエミは踊っているみたいですね。アレも何かのスキルなんですか?』

『《神楽》スキルね。神への奉納としての舞を行い、その力を借りるスキルよ……でも、正直に言えばあれだけ隙だらけなのだから実用性は皆無かしら。ボスに挑む前にするぐらいしか使えないと思うわ』

『なるほど……さっき使ったスキルで身を護っているんですかね?』

『《太極》スキルは身を護る系だって思っているけど……多分あのスキルを完全に納めているのはエミぐらいじゃないかしら』


 アリアはそう言いながら窓から身を乗り出して眺めていた。エミの動きが徐々に加速して光を纏っている。そのエミを護るかのように包み込む透明なドーム状のそれには文字が書かれており、次々と消えていく。シェリルの攻撃を受ける度に消えていく。


「なるほど、ダメージを肩代わりするスキル……? もしくはダメージ無効化かしら。でもそれはシェリ姉だともっとも高価が薄いと思うのだけど」

『あのー、アリアさん? 落ちそうなんで戻ってもらっても良いですか? 窓から身を乗り出すと危険ですよ?』

「てりゃ」

『アリアさあぁぁん!?』


 いきなり窓から飛び降りた彼女に実況席の相方は戸惑い、観客席もなんだなんだ、と騒ぎ立つ。そしてそれを見た。


「化け物!?」

「ドラゴン!?」

「悪魔!?」


 しかしそれにアリアは何も言わず、姉妹の戦いを見守っていた。光を纏い、剣の雨を貫いて扇を振るう妹。それに反応して手元の剣を使って器用に対処する姉。どちらも劣ることなく続けられているそれにもいつかは終わりが来る。


「せやぁぁぁっ!」

「はぁぁぁっ!」


 真紅と純白の扇が虹色の剣と激突する。その衝撃で降り注ぐ剣が消滅していくが、二人はそれに構うことはない。

 しかしシェリルは内心、かなり焦っていた。それはエミの速度が上昇していくからだ。どれだけ速く剣を振るおうと、それよりも速く扇がそれを阻むのだ。だったら


「弾け飛べっ!」

「っ!?」


 虹色の剣がその奔流を解き放つ。エミはそれに飲まれ、文字が次々と消えていく。始まりは六十四文字あったはずなのに、すでに一桁を割っている。


「《ミリオンソード・ガトリング》!」

「《雅楽天楽》!」


 100万本の剣が連続射出される。それを扇で迎え撃とうとするエミ、しかしその手に握る扇に異変が起きた。


「っ!?」


 骨が折れた。それにエミは戸惑いながら地面を蹴る。前に出るのではなく、怯えたように。そしてその隙を姉は見逃さない。


「《トリリオンソード・パラダイス》!」

「ぅぁ」


 数え切れないほどの剣がエミを包み込んで――


*****


『続いての試合はマモンとダイナソーですね』

『ダイナソーって恐竜よね。最近恐竜と触れ合うことが多いから期待が持てるわ』

『え、恐竜と?』

『ええ、恐竜と』


 滅んだよね、滅んだよね、と相方が繰り返し呟いているのを無視してダイナソーというプレイヤーを哀れに思う。相手がマモンだというのならば、絶滅するほかないのだから。


『っ!? コンボコンボコンボォ! 絶え間ない攻撃が次々と繰り出される! ダイナソーの苦し紛れの反撃も届かない! 圧倒的!』

『相変わらず得意武器を使わないのね……』


 マモンの蹴りがダイナソーの翼を吹き飛ばし、その尾を断ち切る。さらに続けての拳が鱗を弾き飛ばし、心臓を手刀が刺し貫く。


『決着! 速い、速過ぎる! これが世界最強ギルド《魔王の傘下》の実力か!』


 この程度で、とマモンの口が動いたが、気付いたのは同じギルドの者だけだった。


*****


「俺がシンと戦うとは思ってもいなかったぜ」

「……スカイ。僕は君がここまで残っていることに驚いているんだけどね」

「まー、そりゃそうだよなぁ……でも、斬らせてもらうぜ」

「それは僕の台詞だ」


 カウントダウンが終わると同時に地面を蹴るスカイ。その喉元に叩き込まれる剣の峰。吹き飛ぶスカイ。


「舐めているのかもしれないけど、遅過ぎるよ」

「……マジかよおい。全然反応出来なかったぞ」

「……なら君はここまでだ」


 シンは剣を鞘に収めて、スカイに背を向けた。そのまま数歩歩いて振り向いて、腰を落とす。そして


「一撃で決めよう」

「……良いぜ!」


 一撃必殺。


「《斬鉄剣》!」

「《闇よ》」


 高速の交差斬撃は、ゆっくりと振るわれた剣によって剣ごと切り裂かれる。そして驚愕の表情を浮かべる間もなく、斬り裂かれた。


残レヴィ、マリアとアジアンとジャック、ブブとエカテリーナ、ガイアにロシアから合計8人

勝、アリア、マモン、シン,シェリル

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