浮島
アリアはまた、湖の底の城にいた。城のどこかに宝物庫がある、と思ったからだ。そしてそれに対してシンは通風口をもう一度駆け回ってみる、と言って行った。
「うーん……この辺りには何も無いのかしら?」
意味なしなお城なのかしら、とアリアはため息を吐きながら水中を駆け回る。一体どこに宝物庫があるのだ、と悩んで全ての扉を蹴破ったが……どこにもなかったのだ。
「……もしかして宝物庫もどこかに埋まっているのかしら? だとしたら掘り返すか探し出すか……よね」
*****
「宝物庫はきっと、この島自体なんだろうね……だとすれば、どれが王冠なのかな……まぁ、どうせまた抽象的な物なんだろうけどさ」
この島が玉座自体で、宝物庫。そう考えるとここに王の城はないのかもしれない。王の城の中に玉座がある。そう考えると何を城とするか、だ。
「かなり難しい問題だな……でも、まぁ、なんとなく分かったけどさ」
大体理解してしまった。だからシンはアリアにメッセージを送ろうとしたが、送れない。それにため息を吐いて――制御室に戻った。
そして15分後、アリアが姿を現した。
「あ、お帰り」
「ただいま、シン。答えは見つかったかしら?」
「うん、見つけたよ」
アリアはそれに頷いて
「私も見つけたわ」
王冠を手にせよ、と声は言った。アリアは手に持っているよく分からない物を頭に乗せて
「見つけたわよ、宝物庫の王冠を」
『汝、何を王冠と成す』
「王が被る物なら何だって王冠よ」
滅びた国の滅びた理由は何だろうか。戦争だろうか、しかしこの城にはそう言った痕跡はなかった。ならば考えられるのは――疫病か、それとももっと他の何かだろうか。
痕跡を残さずに死ぬ方法なら色々とあるだろう。そんな風にアリアは思いながら声の主へと挑戦的な口調で
「王冠が無いと王と認められないのならばそれでも構わないわ。私がこの島を占拠して、私の物とするのだから」
「……」
『では第三問だ』
「「まだ続くの?」」
『最終問題だ。王とは何か答えよ』
その答えは簡単だ、とアリアは思い、シンは分からないと思った。そしてアリアは平らな胸を張り、堂々と答えた。
「私が王よ」
*****
「不正解じゃないわよ……私が王になるんだから……」
「アリア、向こうからしてみたら何を言っているんだ、って思われたんだよ。アリアの意見は間違っていなくても、向こうが欲しかった答えじゃないんだよ」
シンの言葉にアリアは慰められながら、闇の繭の中で体育座りをしていた。なんとなく暗い空間にいると落ち着くのだ。そんな風にアリアが思っていると
「ほら、閉じこもっていないで顔を出してよ」
「まるで天照大神ね」
「天岩戸って言うのは随分と柔らかい壁だったけどさ」
シンは苦笑して
「アリア、王とは何かって質問にきっと定まっていない答えがある」
「え?」
「僕にとってはその質問に、答えはない。僕は王になるつもりなんて無いから」
「……え?」
「僕にはそれがすでにあるから、王になる必要なんて無い」
シンは冷たさすら感じる瞳でアリアを見据えて――
「望むのなら、進めば良い」
「……シン、何を言っているの?」
「何でもないよ」
シンはただただ、冷酷な眼差しでアリアを見つめていた。そしてそれにアリアは頷いて
「――なんとなく理解出来たわ。シンと私の違いで、どうしたら良いのかを」
そして5分後、二人はまた制御室にいた。そしてアリアは大きく息を吸って
「王とは何か、分かったわ」
『ならば王とは何か答えよ』
「王とは強欲よ」
シンはアリアがいるだけで満足してしまうような欲が無い男で、アリアはシンがいるだけじゃ足りず、まだまだ望みを持つ。
「望むわ、王の座を!」
『――好きにしろ』
直後、地震が起きた。シンが戸惑いながら崩落に備えて逃げるために、通路に向かって駆け出そうとしたが――アリアがその手を掴んだ。
「アリア!?」
「……大丈夫。ここなら、大丈夫」
「なんで……何を?」
「なんとなくだけど分かったの……この島は初期化されて……私の望むままに変えられるって。そして私が殺されたら、島の制御権が全て――殺した人の物になる」
「……どうしてそれを知っているの?」
「分からない……分からないけど、情報が頭に流れ込んできているような気がするの……怖いわ」
アリアの言葉にシンは頷いて、
「大丈夫だよ、ここなら死なないから」
「え?」
「ここ、ダンジョンでもフィールドでもなくて、街扱いだから」
「……え!?」
まだ知らなかったんだ、とシンは苦笑した。そしてその言葉にアリアは目を輝かせて
「ならここでのんびりとしていることも出来るのね!」
「まぁ、出来ると思うよ」
これ、別にこの世界じゃなくても出来るんじゃないかな、とシンは思ったが無粋なことを口にはしない。そしてそのままアリアの頭を撫でて
「とりあえず今はこの制御室以外が無くなったみたいだね」
「あら、どうして分かるのかしら?」
「壁に俯瞰空景が映っているじゃん」
「え」
アリアがそれを目視し、顔を真っ赤にした。気付かなかったのだ。そしてシンに向かって何か言い訳をしようとしたが――シンの慈愛の表情を見て何も言えなくなる。歳の差は2のはずなのに、シンはとても大人な表情をする。それが姉である亜美によって育てられたとは知るよしも無い。姉の全てを諦めた男の浮かべる慈愛の表情だからだ。
「アリア」
「なに?」
「僕は改めて、アリアが好きな理由が分からないよ」
「あら、私だってシンが好きな理由は分からないわよ。好きだから、好き。それで良いじゃない?」
「まったくだね」
歳上が好きで、おっぱいは大きい方が良い。そんな風に思っていた柘雄にとってアリアはその対極に存在する存在だったはず――なのに、アリアを好きだ。
「ねぇ、アリア」
「何かしら?」
「アリアはどうしたいの? この世界で」
「――《最強》に拘りなんて無いわ。誰かがそれを名乗ったって私はふーん、としか思えないもの。私はただ、楽しめたらそれで良いのよ」
「……アリアは《最強》じゃなくても良いの?」
「ええ、いつかは誰かが超えてくれるって信じているから」
*****
「アリアが浮島の改造を始めてから何分経ったっけ?」
「5分よ」
「大分変わったよね」
まず層式のダンジョンにしていた。そして第1層には全面湖、第2層には森。第3層には全面海。この時点でアイデアは出尽くしたようだ。
アリアの印象に残った場所を作る、そういうことを言っていたからこそ、シンは少し呆れていた。もっともアリアが飽きっぽいのは知っているし、本当に気に入ったならばとことん大事に扱うと知っている。
「アリア、自分用の家は無いの?」
「あら、この城自体が私の家よ? シンと私のマイホームよ」
「随分と大きなスケールの話だね……でも、僕はこんな大きな家だと慣れないなぁ」
「あら、小さな家が好みかしら?」
「うーん……僕はアリアと二人で暮らせるぐらいの家で充分だよ」
「え? 双子もいるから四人よ」
まだ結婚をしているわけでもなく、卒業すらしていない。そんなアリアの言葉にシンは苦笑して
「本当に双子を産むんだね? 危険だって分かっていても」
「ええ、危険ごときが私を止められるなんて思わない事ね。例え死んだとしても双子を産んで、シンに育ててもらうわ」
「……死なないで欲しいよ」
「それは私がどうにか出来ることか分からないけどね……」
シンは本当にそう思った。しかしアリアは達観したような言葉を返した。そして――
「シンになら殺されたいわ」
柘雄の心臓を止めるような呟きが、アリアの唇から漏れた。
アリアちゃんとシンの熱愛が発覚!(かなり前から)
猫きゃわわなので宣伝
「にゃんとして咲く高嶺の花に」
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猫耳っ子に限らずケモ耳っ子が実は好きです私
某キャスターとか某アリアちゃん(元バニっ子)とか
しかし何故猫ってマタタビの匂いで酔うんでしょうね
人間ってアルコールの匂いで酔うのか分からないんでなんとも言えないんですけど
私未成年なんだよ実は




