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問いかけ

「アリア、何か来ているよ!」

「嘘!?」


 さっきの穴の方から何かが来ている。そんなシンの言葉に驚きながら剣を抜く。とりあえず前に進むか、背後に戻るかを悩む。

 先ほどの落とし穴から通風口に入った。しかしそこはアリアやシンが普通に立っていても余裕のある広さだった。そして一本通行だった。


「どうする?」

「後ろを任せるわ! 前から来たら私が対応するわ!」

「了解だよ」


 アリアは《乖離地連》と《乖離天連》の二本の剣を構えながら小さく息を吐く。前方からも後方からもモンスターが来るようなことになっては――戦えても生き残れるかは分からない。だから


「っ!?」


 その現象は驚きその物だった。何故、そこが!?


「壁が開いた!?」

「多分それをドアって言うんじゃないかな!?」


 シンはアリアとの間に空いたドアに驚きながら、しかし決して振り返らない。それは何故なら、アリアがいるからだ。アリアの剣が高速で閃いて扉から現われた謎の存在を一瞬で斬り殺す。それが何かを理解する前に斬り殺して――大きくため息を吐く。そしてそのまま室内に飛び込んで残る気配を斬り伏せて


「――?」

「アリア? 何かあったの?」

「……分からないわ。これ、何かしら?」

「パッチワークで似たような模様があったけど……この建物にいるモンスターの共通の模様じゃないの?」

「フラクタル、ね」

「え?」

「この模様はフラクタルよ……一体、なんでフラクタルが出てくるのよ」


 数多の三角形が一つの図形として存在している。それをシンは冷静に眺めながら、そっと室内を見回す。同じような模様があちこちにあるが――別段、目を惹くような物はなかった。が、


「っ!?」


 影が動いた。室内にある影が動いた。シンの影が動いた。アリアの影も動いた。そしてそれらはのっぺりとした影法師のような外見を持ち――剣を手に襲いかかってきた。咄嗟に剣を抜いて地震の影を抑えるが、アリアの反応が遅れた。


「っ!?」

「アリアっ!?」


 剣がアリアの片腕を切り飛ばした。それにシンは動揺したが――アリアは冷静に地面を蹴った。距離を開けるのではなく、詰める。そのままアリアの影に膝を叩き込んで、そのまま回し蹴りで吹き飛ばす。

 室内の広さは大体畳20畳と広いと言われればそうだが、狭いと言われてもそうとも言えるような広さだ。だからこそ、アリアとシンは決してお互いの戦っているテリトリーに入ろうとはしない。


 アリアの剣がシンの後頭部を掠めるが――それにシンは何も反応しない。そんな物が当たらないとシンは理解していたからだ。シンの剣がアリアの剣と1ミリ以下まで接近して――触れ合わない。お互いにその剣に目を向けない。


「アリア、そろそろ終わらせる?」

「ええ、そうしましょうか」


 一際大きな金属音が鳴り、アリアとシンは背中合わせに立つ。正面から迫るお互いの影に眼を細くして――アリアの二本の剣が交差するような斬撃を放ち、シンは身の丈を越える巨大な白い剣を振り抜いた。

 アリアの影が4つに切り分けられ、シンの影が全て真っ二つにされた。しかしアリアの動きは止まらない。切り分けられた影の一つがまだ、動いていたからだ。続けての高速の連続斬りが動いた影を次々と斬り裂いて――その中央に存在するコアのような物を露出させた。そして迷い無く、それを踏みつぶした。


 真っ二つになった影の右側が動いている。それを眺めながら片手で《天使龍皇剣》を構えて、振るう。刃を立てずに奥義で扇ぐように振るった。それがシンの影に激突すると同時に、シンの影を吹き飛ばした。強力な一撃が影を吹き飛ばし、コアを剥き出しにする。直後、そのコアが剣で切り裂かれた。


*****


「アリア、ここからは慎重に行かないとね」

「ええ……さすがにこれだけ私を斬り裂いていると疲れるわね」

「僕もこれ以上自分を斬っていると疲れるよ……」


 通路を歩いていると扉が開いて、影が出現する。そして続いて自分たちの影から自分たちの影が現われる。だからこそ動かずに、通路に座り込んでいるのだ。


「アリアはこの島を手に入れたらどうするの? 自分好みに創り換える? それともここに家でも建てる?」

「そうねぇ……この島が動くのなら拠点にしてみたいわね」

「動く拠点かぁ……ロマンだなぁ」

「ロマンでしょ?」


 アリアはクスリ、と笑ってシンの背中の剣を眺める。《悪魔龍皇剣》にそっくりな《天使龍皇剣》だ。結局、《悪魔龍皇剣》はシエルが返却してきたから使っていない――なら、


「シン、《悪魔龍皇剣》いる?」

「うーん、要らないことはないけど……使うかって言われるととても悩むんだよね」

「あら、そうかしら? 使い勝手は良いと思うわよ。それに私には使えないから誰かに引き取って欲しくて……出来るのならば、シンに受け取って欲しいわ。そしてシンがその二本の剣を使って――《最強》になって欲しいわ」

「アリアは《最強》じゃなくなりたいの? 一体どうしたいの?」

「私はシンになら殺されたって構わないわ。それに《最強》って称号は私にとって、かなりの重荷だもの」


 知っているよ、とシンは思った。しかし何も言わず、アリアの頭を撫でて


「《悪魔龍皇剣》と《天使龍皇剣》の二本が並び立つとき、一体何が起きるのかしらね」

「きっと凄いことが起きるんじゃないかな? でも、私からしてみれば新たな敵が産まれるだけよ」

「新たな敵?」

「その二本よりももっと強い剣を産みたいわ」

「アリアがまた新しい剣を創るんだ、楽しみだね」


 アリアはシンの背中を指でなぞりながら大きく息を吐いて


「そろそろ進みましょうか」

「ん、そうだね」


 アリアとシンは剣を抜いたまま慎重に通路を進む。いつどこから影が現われるか分からない。だから常に最大限の警戒をしていたが――不思議なことに、影が二度と姿を現すことはなかった。それにアリアとシンが戸惑いながら通路の奥、大きな部屋に足を踏み入れた。


「――ここは何かしら? 見たところ、制御室のように見えるわね」

「うん……何を制御するんだろう?」


 周囲の光景に戸惑いながらも警戒を解かない。そんなアリアたちへ、声が掛けられた。


『この島が欲しいか』

「え?」

「ええ!」

「ちょま、アリア!?」

「この島を手に入れるためには何をしたら良いのかしら?」

『簡単だ……玉座に着け』

「分かったわ!」


 シンの制止虚しく、アリアは周囲を睥睨して――お目当ての玉座を発見した。そして助走を付けて跳び上がり、見事にお尻から椅子に着地した。現実なら尾てい骨を強打しているよ、とシンは思いながらアリアに駆け寄るが――アリアの表情は訝しげな物だった。


「アリア?」

「……玉座じゃないわ、これ。騙されたわね……目の前の物に」


 アリアはふふふ、と笑って


「良いわ、見つけ出してこの島を手に入れるわ!」


 それも一種の攻略だ、とシンはすでに諦めていた。そしてシンはアリアに付き従って歩いていたが――アリアは小さく疑問を感じていた。


「あの声の主は一体何者なのかしら? 単純なモンスターなのか、それとも何かしらの重要なNPCなのか」

「……さてね。でも今の僕にとってはどっちでも構わないと思うよ。敵ならば斬り倒して、味方なら離して奪えば良いってね」

「あら、シンも乗り気になったのね」


 アリアは嬉しそうに笑いながら通路を戻っていた。しかしすでに影は二度と出現しなくなっていた。それに拍子抜けしながら歩いて――


「声の主、ボス? ううん、違うわ……声の主は……あぁ、なるほど。それで……」


 アリアは何かに納得して、


「シン、この島のどこかに残骸がなかったかしら?」


ヤバい、後頭部がずきずき痛む。

調べたら姿勢が悪いってさ

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