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僕と僕

 島を手に入れるにはどうしたら良いのだろう。アリアはそんな風に思いながら島を散策する。しかしどこにも何もいないように見える。

 すでに地面からは闇が払われている。だからこそ、モンスターが出現しないのは分かるが――他のモンスターすらいないのは明らかにおかしい。アリアは戸惑いながら《波動超龍剣コズミックブレイザー》を肩に載せつつ、歩いていた。


「邪魔だなぁ」


 邪魔な木を纏めて斬り裂きながらアリアが歩いていると、背後を着いて来ているシンが突然、足を止めた。それはいきなり現われた不可解な気配に対しての反応だった。


「シン?」

「――アリア、先に行って!」

「え!?」

「速く! 行け!」

「っ、ええ!」


 理由が分からずとも、アリアはシンを信じている。だからアリアは振り返らずに先に進み始めた。

 シンはその背中を眺め、頷いて――二本の剣を抜いて翼のように構える。そのままため息を吐いて――ゆっくりと近づいてきているそれに目を向ける。


「久し振り、シン」

「久し振りだね、アリア」

「僕はもう向こうに行っちゃったみたいだね……面倒だなぁ」

「アリアはこの島が欲しくなったみたいなんだ。だから先に行ってもらったんだよ……それに、君が来ているみたいだったからね」

「僕?」

「今のアリアと君が戦えば、面倒なことになるからね。最悪、この島が消し飛んだっておかしくない」


 シンはそう言いながらアリアに剣を向けて、眼を細くして


「僕はアリアと共に進む」

「僕はアリアを切り倒しに来ただけだから」

「ならば通さないよ」

「なら止めてみなよ」


 瞬間、アリアは地面を蹴って、シンに突撃を仕掛けた。その手に握られているのは純白の巨大な剣。アリアの細い腕では持つだけで折れてしまいそうな巨大な剣。その名は――


「《天使龍皇剣》!」

「ご明察だよ、シン!」

「《夜明けの一撃(ドーンインパクト)》! 《黄昏の一撃トワイライトインパクト》!」


 振るわれる剣を正面から相殺しようとして、二本の剣を放つ。激突と同時に衝撃が地面を抉り、周囲の木を吹き飛ばす。そのまま二本の剣で剣を逸らし、剣の内側に飛び込んで、アリアの懐に飛び込む。そして


「はぁぁっ!」

「遅い!」


 空いている手からの打撃を剣で切り落とそうとしながら、もう片方の剣で斬りつける。しかし、アリアの手が剣の腹を掴み、《天使龍皇剣》の柄でもう一本の剣を止める。極至近距離での攻防を繰り広げながらシンは小さくため息を吐く。


(アリアに届いてしまいそうだ)


 そう思えてしまったからだ。それを諫めて――二本の剣を重ねる。そのまま一息に


「《最終解放ラストリベレイト》! 《夜明けと黄昏の災厄ドーントワイライトディザスター》!」

「んー、《片手長剣》一本で僕に勝てるとでも思っているの? だとしたら随分と舐めすぎだって思うんだけど、どうかな?」

「知らないよ。それに僕は君ごときになら負けない」

「ごとき、ねぇ? シン、随分と言ってくれるじゃない……っ!」


 シンの握る剣がアリアの剣と激突した。しかし今度は逸らす必要は無い。正々堂々と正面から受け止めて――弾き返す。アリアの驚きの視線に頷きながら、連続斬りへとシフトしながら剣を振るう。だが、アリアの握る剣の柄が割り込んで、剣を全て止めた。


 アリアの超絶技巧は相変わらずだ、とシンは思う。しかしアリアはシンの技巧に舌を巻く。いつの間にこれほど成長したのか、と。アリアと並び立つためならばこの程度、とシンは内心で思う。そしてさらに動きが加速する。


「嘘!?」

「――アリアは君ほど弱くない」


 冷酷な呟きと共に、アリアは自分の体を白刃が通り抜けたのを眺めていた。


*****


 アリアは一人、岩山を歩いていた。今だにモンスターと出くわさないアリアは、この島がとても気に入っていた。だからこそ、現在はどこに何を創ろうか、という思考をしていた。


「あら、湖」


 飛び込もう、と思うのに一瞬もなかった。アリアは《アストライア―》以外の全ての装備を解除して、《アストライア―》を水着に変更する。そしてそのまま一気に飛び込んだ。


 水中は澄み切っていて、何者の気配もない。しかし水底には水草が茂り、倒木や大きな岩が魚たちの住処を創っていた。そう思いながらアリアが近づくと――小魚の群れが姿を見せ、アリアから逃げていく。それが無性におかしくて、笑ってしまう。


「ふぅ」


 笑い過ぎて泳げなくなり、水面に浮上する。そこでもまだ、笑いながらぷかぷかと揺られていると――姿を現した彼が少し笑う。


「アリア、随分と魅力的な姿だね」

「あら、シン。そっちの用事は終わったのかしら? それに随分と立派な剣を背負っているわね。どこかに生えていたのかしら?」

「そんなところ。シンも泳いだらどうかしら? この湖、とても綺麗よ」

「うーん、泳ぎたい気持ちは山々なんだけどね……この島のどこかにダンジョンが有るんじゃないかなって思うと探索せずにはいられないんだ」


 シンは苦笑しながら湖の畔に背中に背負っていた剣を突き刺して、座り込む。そしてため息を吐いて


「あー、疲れた」

「お疲れ様、シン。でもその剣……道理で倒した際にドロップしなかったわけね」

「アリア、この剣要る? 僕はあんまりこういった剣は使えそうにないんだけど」

「私も使えないからいらないわ。シンが使っているところを見てみたいって気もするんだけどね」


 アリアは水中に姿を眩ました。それを眺めてシンは少し呆れながら、仄かな笑みを浮かべる。そしてシンも装備を解除して湖に飛び込んだ。


 そして10分後


「さてと、そろそろ真面目に侵略しないといけないわね」

「攻略……まぁ、良いけどさ。とりあえずはダンジョンか何か、重要な物がありそうな場所を探さないといけないね」

「ええ、そうね。でも大体は分かっているわ」

「え?」


 アリアは手を高く掲げ、その手をゆっくりと振り下ろした。そしてそのまま地面に指を向けて


「地中にあると思うわ」

「へぇ……なるほどね。確かにそこに行く方法は見当たらないからね」


 そして3分後


「掘り返しても良いかしら?」

「アリア、もう少し探そうよ……まぁ、探しても中々見つからないんだけどさ。一体どこに行けば良いのやらって感じだけど」


 シンは背中の剣で歩き辛そうになりながらのんびりと周囲を見回す。

 この島は森エリア、山エリア、草原エリアに分けられている。しかし草原エリアはすでに焦土となり、山エリアはアリアが吹き飛ばしたため岩場となり、森エリアに至っては全ての木が切り倒された上に湖の方が印象に残っている。


「あ」

「ふぇっ!?」


 アリアの姿が下にスライドして消えていった。そして長い悲鳴が聞こえた。


「……これって、落とし穴? それとも地下通路?」


 とりあえず飛び込んで壁を駆け下りる。翼を広げるには足りない広さだが――壁を走ることが出来るのならなんの問題もない。そう思いながら落ちていくアリアに追いついて、その手を掴む。


「この先に何があると思う?」

「硫酸の溜まった落とし穴かしら?」

「まだ奈落の方がマシだって思えるよ……実際は逆だけどさ」


 壁を駆け下りていても、中々そこが見えてこない。シンがそれに少し戸惑いながら駆け下りていると――アリアがシンの背を叩いた。何かを言いたいように叩いた。そして


「今、何か通風口のような物があったわ! アレに向かっていけば良いんじゃないかしら?」

「――どっち?」

「シンの右側! 一気に駆け上がるわ!」

「うん!」


 シンの手からするり、とアリアの手が抜けて――直後、落ちそうになったアリアは咄嗟に剣を壁に突き刺した。


タイトルで予測可能なこの感じ、さすが私


ぶっちゃけタイトルネタバレに迷いがないんだよねうん


次回予告

謎の建造物に入り込んだアリアたちはそこで異形の者を操る者と出会った――

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