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マリア

「改めて挑ませてもらうわね、マリア」

「どちらかって言うと挑むのって僕じゃないかな? 別に良いけどさ」


 アリアはナイフをどこかに投げ捨てて、一本の直剣を構えていた。そこには先ほどまでのような油断は存在していなかった。だからこそ、マリアはやってられっかという気分になった。


 アリアの剣は速い。だからこそ先手を取ってくる可能性は低いはずだ。後はタイミングを合わせて――小道具のどれかを使ってダメージを与える。いや、ダメージは要らない。隙を創るために《鳥もち》だ。


「行くわよ、マリア」

「え」


 完全に仕掛けるつもりでいたマリアはアリアの言葉に驚く。そしてそれと同時にアリアは地面を蹴って、大きく剣を振りかぶっていた。しかしその剣は、片手で握られていた。


「両手握りじゃない!?」

「せぁぁぁっ!」

「っ、くっ!?」


 アリアの剣が振るわれた。それは防御動作を読んだ上で、防ごうとしている剣の上から叩き込まれた。高速で叩き込まれた剣はマリアの体を吹き飛ばすが――アリアの速度はその速度すら、上回る。

 マリアの服を掴み、勢いを利用して地面に叩きつける。軽くめり込んだマリアに向けて、アリアは無情にも剣を逆手に握り直して、突き刺した。咄嗟に反応で身を捻ったマリアは何とか回避したが、続けての蹴りは避けられなかった。


「……やっぱり、アリアに勝つにはアレしかないかな」

「あれ?」

「アリアの知らない技だよ――スロットセット」


 マリアは何をしようとしているのだ。アリアはその思考で動けなくなる。反撃カウンター系統ならば不容易な攻撃は危険だ。だとすれば、一番良い攻撃は――


「《臨兵闘者 皆陣列前行》!」

「っ!? 強化スキル!?」

「使い続けていた《陰陽》スキルが進化したんだよ。詠唱って呼ばれる全ては今、私だけが使えて作れて使いこなせるようになったんだ」

「何を……?」

「《光、雨となりて、闇、剣と化す。炎、風に乗りて、水、万物を押し流す。風、刃となりて、地、万物を飲み込む。時、狂いて、空、歪む――」

「っ、これは一体!?」


 アリアは周囲を見回して、すでにマリアの姿が無いのに気づいた。アリアがどれだけ周囲を見回しても何も無い。そして空からは《天使龍皇》のような光の雨が降り注ぎ、シェリルの《セブンソード》シリーズのような闇の剣が迫る。

 さらに風の刃が迫り、その刃が炎を纏う。そして地面が割れてアリアを飲み込もうとして、どこからともなく押し寄せてきた波がアリアを押し流そうとする。そのままアリアが動き出そうとした瞬間、その動作の前の状態に戻る。

 そして驚いているアリアの上下が瞬時に反転して、地面に背中から叩きつけられた。


「っ!?」

「《時空魔法――時楔》!」

「あ」


 マリアの手から投げられた一本の楔が、アリアに刺さった。それと同時にアリアの動きが止まって――マリアは大きくため息を吐いて、地面にへたり込んだ。


「時空魔法って言ったは良いけどさ、実際はスキルじゃないし詠唱で作り上げただけなんだけどさ」


 《詠唱術士スペルキャスター》というスキルは詠唱に意味を持たせて攻撃化するものだ。実際はかなり使い勝手が悪く、マリアぐらいしか使っていないのだが。

 そもそも詠唱する間に攻撃を受けてしまうと詠唱は失敗となり、意味をなさなくなる。さらに詠唱の内容は考えながら口を動かさないといけないため、難しいのだ。


「《ちちりぼし・たまおのぼし・ぬりこぼし・ほとおりぼし・ちりこぼし・たすきぼし・みつかけぼし――」


 意味のある詠唱を含めれば含めるほど、その詠唱の効果は大きくなる。そしてマリアは大きく息を吸って


「《朱雀七星陣》《セット》!」


 陣、と名の付くスキルには味方へのサポート効果、相手へのデバフ効果がある。そして稀に罠の効果があるのだが――6つのスキルだけだ。だがその一つはエカテリーナにしか使えず、エカテリーナは滅多なことがない限り、使おうとしていない。ちなみに《獣帯十二宮陣》という名前だ。


「《とかきぼし・たたらぼし・えきえぼし・すばるぼし・あめふりぼし・とろきぼし・からすきぼし――白虎七星陣》《セット》!」


 《セット》はスキル発動を遅らせるスキルだ。発動自体のタイミングはセットしたプレイヤーが指示出来る。とりあえずしばらくは動かないアリアを放置して、


「《ひきつぼし・いなみぼし・うるきぼし・とみてぼし・うみやめぼし・はついぼし・なまめぼし――玄武七星陣》《セット》! 《すぼし・あみぼし・ともぼし・そいぼし・なかごぼし・あしたれぼし・みぼし――青龍七星陣》《セット》!」


 二十八宿を詠唱に織り交ぜることで、そのスキルの発する属性を強化する。そしてそのまま、手を上げて


「《雷よ、円を描きて、焔と交わり、天を渦巻き、闇を取り込み、神を喰らえ》!」


 詠唱自体がスキルだ。だからこそ、マリアの上空では雷が焔と交わって、炎雷と化していた。そしてそれが竜巻のように上空で回転して、その色が漆黒に染まった。それを眺めてマリアは平手に己の拳を打ち付けて――


「《ファイエル》!」


 全てのセットしたスキルを放った。


 目映い4色の爆発がアリアの周囲で巻き起こり、空から降り注いだ黒雷炎が爆煙を全て消し飛ばしてアリアに突き刺さった。紛れもなく即死のはずだ、とマリアは思った。そしてそれは間違いではない。相手がアリアでなければ。


*****


「っ、嘘!?」


 いきなり目の前で爆発が起きた。そんな予兆はなかったのに。しかも爆発に取り込まれている。


「《龍化ドラグナイズ》!」


 《龍鱗》スキルで爆発への耐性を一瞬で高める。そのまま続けて地面を蹴り、翼を広げて飛び立つ。瞬時に爆発の範囲から逃げ出した、そう思った瞬間黒雷炎に飲み込まれた。


「っ、あぁぁぁあ!?」


 一気に体力が削られていく。雷属性の魔法に炎と闇の特徴である、継続ダメージと妨害が付与されている。そしてそれが雷属性の特徴、多段ヒットのせいで幾度も妨害を受ける。


「《闇よ、剣となりて降り注げ》!」

「っ、《スターダストスラスト》!」


 高速の三連斬が降り注ぐ闇の剣を斬り裂いた。そしてそのまま翼で大気を叩いて、急加速したが


「えいっ」

「あ」


 アリアの剣が、マリアの投げた小瓶を切り裂いた。そして中から飛び出した《強酸》がアリアにかかり、一気にダメージを与える。削りきれるかな、とマリアは思いながら剣を抜いて地面を蹴る。案の定削りきれなかったので、斬りつけるが、アリアの差し込んだ剣がそれを阻んで、弾く。


 アリアの剣は一本で、マリアの剣も一本だ。しかしマリアには小道具があり、アリアには色々とある。アリアは咄嗟の判断で剣を抜いて二刀流を構える。そしてそのまま地面すれすれを飛んで、マリアに斬りつける。マリアは剣を割り込ませて剣を受け止め、その衝撃で一旦距離をとろうと地面を蹴って跳んだ。

 そんな露骨な隙をアリアが見逃すはずがない。マリアはそう思いながら小瓶を掴んでアリアに向けて投擲した。


「え!? 嘘だぁ!?」

「|何かしてくるなんて予想通りよ《ふぁふぃふぁふぃふぇふふふぁんふぇふぉふぉふふぉふぉふぃふぉ》!」

「だからって普通小瓶を噛むなんて……歯が痛そうじゃん!?」

「虫歯は無いのよ! ちゃんと歯磨きしているから!」


 知らないよ、とマリアは思いながら剣を振り上げてアリアを迎撃する。そのまま小瓶を投擲して、アリアがそれを避けるのを眺める。


「今の小瓶、ただの水だよ」

「……信じられないわ!」

「だろうねぇ」


激戦だなぁ


次回もまだ戦い続けているよ


ちなみにここを書いているのは0927です。

木曜日が1から4まで講義なので余裕を持つためにです。

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