デートの約束
「ユリア、授業が終わったから迎えに来てもらっても良いかしら? 会社に直接行くわ」
『分かりました。現在学校の近くにいるので校門前に留めますね』
「ええ、お願い」
階段を降りながらユリアに伝える。そのまま踊り場で少し、足を止める。
「雨が降りそうね」
『降水確率は40パーセントですね。降る時は降りますし、降らない時は降りませんよ』
「確率なんてそんなものなのかしら……少し、不思議な気持ちになるわね」
『アリアは色々と考え過ぎますね。何もかも事実だけを受け止めれば良いのですよ』
「必要最低限しか考えないのは人間じゃないわ。私は無駄なことや何の意味も無いことを考えるのも好きなのよ」
ユリアはそれを理解できない。しかしユリアは知っている。人間とは複雑なのだ、と。だから理解できなくてもおかしくとも何ともないのだ。だから理解を放棄せず、かといって言及しない。
「アリアさん」
「……なにかしら、真白」
「校門前に車を向かえに来させるのって校則違反ですよ」
「へ?」
マジですかい、とアリアは思いながら校則のデータを開く。そのまま目を通して
「マジ……っぽい」
「なので車を移動させてください。運転手がいないから車に先生たちは手出しが出来ないんで」
「あ、え、あ、あぁ、そうね……もしもし、ユリア? 聞こえているかしら?」
『ええ、聞こえていますよ。ついでに雑音も聞こえますが』
「雑音?」
一体何のことだろう、とアリアが思っているとユリアは不機嫌そうな声で
『自分たちを正義だと思い込んでいる教師という人種ですね。滅べば良いのに』
「あの、ユリア?」
『正確なデータなんて人間には当てはまらない。それを理解せずに平均という範疇に生徒を抑え、それを出る者を持て囃し、貶める。人間というのは複雑ですね』
「……」
まぁ、間違っていないから良いか。アリアはそんな風に思いながら坂道を駆け下りる。途中、声を掛けられたような気がするけど無視して走り続けて――
「ユリア――っ!」
「二階堂!?」
「こっちに来るな!」
教師たちが一台の車を囲んで色々と言っている。しかし、エンジンがかかる音、そしてクラクション。完全に教師をどかすつもりだ。
「ユリア! 後部座席を開けて!」
『はい!』
飛び乗った。そのまま一息を吐いて、
「どこ行くの、お姉ちゃん」
「……エミ?」
「そうだよ」
なんでか分からないけど、隣に妹がいました。途中で下車させた。
*****
「アリアさん、そっちはどうですか?」
「ダメね……風通しが凄いわ」
「風通しに違和感はありませんか? 強過ぎる、とか寒すぎる、とかで」
「特に何も無いわね……季節に合わせて変更するのかしら?」
『はい、その予定です。現在は初夏の涼しげな風です』
「ちょうど良いけど……風が精密に作られすぎていて風通しが抜群すぎるわ」
木の板を作るのは難しい。だから丸太を重ねて無理矢理壁としている。もっとも洞窟で妥協していれば今よりもマシな環境にいられる。しかしアリアはそれに気付かなかった。
「時刻は夕方の6時半ですね……どうしますか、アリアさん」
「そうねぇ……後五分したらログアウトするわ」
「分かりました。では建築は一旦辞めましょうか」
そして二人は夜の森を散歩していた。アリアは森を歩くのはリアルでは経験が無い。それは優も同じだった。だが二人は森の中を歩く経験を持っている。
「モンスターが出現しないのよね? 大丈夫なのよね?」
『アリアは心配性ですね。大丈夫ですよ』
……ビビっていたが。
*****
「雷閃!」
心臓を刺し貫こうと放った突きがシンの剣に逸らされる。そしてシンは踏み込んで剣を振るった。
アリアの手から剣が弾き飛ばされそうになるのを指で必死に食い止めて、逆手に持ち替える。そしてそのまま首をかっ斬ろうとするが
「っ!?」
「秘剣華の型――露草」
「それ私の技!?」
私の技だからこそ軌道が読める。シンの高速の三連斬に剣を併せ、全てを防ぎきる。そのまま肩を狙った振り降ろしを放ったが
「読めているよ、アリア」
「あら」
シンがくるり、と一回転した。そしてその遠心力を乗せて剣を振るった。咄嗟にその軌道に掌を割り込ませ、受け止める。逸らす。流して
「はっ!」
「っ!?」
胸を強打する。シンの体が砲弾のように吹き飛んでいくのを眺め、アリアは小さくため息を吐いた。大分、体を思いのままに動かせるようになってきていた。しかし、
「中々思った以上には動かせませんわね」
「まぁ、まだまだステータスに振り回されている感じがあるね。それでも太刀打ちできないんだけどさ」
「あら、二刀流じゃないから全力ではないのでしょう? 全力で来られたら私だって全力じゃ無いと勝てませんよ」
片手で剣を構える。そのまま空いている片手の指を開き、いつでも併せられるようにしていると
「最近はどんな感じ? また家に呼べってお父さんたちが五月蠅いんだよ」
「あー、なら今度お邪魔させていただくわ。最近仕事が忙しくて難しいのだけど」
「仕事かぁ……学校にはちゃんと行きなよ?」
「まぁ、考えておくわね」
シンは苦笑しながら剣を振るった。それを剣で防ぎ、掌での打撃を放つ。それが左手に受け止められ、右腕が切られそうになる。
「シンは学校、楽しいの?」
「まぁ、少しは楽しいよ」
「どんな風に楽しいのかしら?」
「……友人たちと話すことかな?」
それ学校じゃなくても良いじゃん。アリアはそんな風に思いながら右腕を引いて避ける。そのまま引いた勢いで体を回転させ、斬撃。シンの剣が防いだ硬い感触を得つつ、ため息を吐く。
「学校、行きたくないわ」
「まぁ、大体みんなそうだろうね……でも、行っている人はいるよ」
「みんなはツンデレなのよ」
全国的に日本人はツンデレ、とアリアは呟いた。それにシンが苦笑していると
「シンもツンデレ?」
「自覚は無いなぁ……アリアは僕がツンデレだと思う?」
「ううん」
「じゃあそういうことだよ」
「そっか」
剣が激突する瞬間、火花が散る。それを眺めながら床を蹴り、前に出る。そのまま一息で胸へと打撃を叩き込もうとしたが、シンの手がその手を掴み、足を払う。そのまま放り投げられた。
「マモンみたいなことをするわね」
「マモンと一緒にされると僕が凄い人みたいだから嫌だなぁ」
「あら、凄いのは嫌かしら?」
「アリアの隣にいられるだけで充分だし」
「まぁ……」
現在進行形で斬り合っているけど、と思いながらアリアは頬を染める。そんな風に言われると恥ずかしく、嬉しい。
「アリア」
「……何かしら」
「早く一緒に暮らしたいよ」
ね、という同意を求める言葉ではなく、シンの意思表示だ。アリアは嬉しそうに笑顔を浮かべているが、剣が振るわれている。嬉しさ爆発しているのか分からないが、さっきよりも速度も威力も高くなっている。
感情の高ぶりは影響を及ぼす、とその様子を眺めていたユリアとユリウス、そしてマグナとオバマは思った。現在は四人体制で運営をしていたようだ。マグナとオバマは消えたわけではなく分裂した、というのが正確な表現とアリアは後日知らされた。
「っ!」
「っ、参った。降参だよ」
「ふふ」
アリアは指を器用に動かして剣を回転させる。そしてそのまま鞘に収め、腰を折った。そして首だけは上を向かせて上目遣いをした。ちなみに言うとそんなことをせずともシンとの身長差で大体いつも上目遣いになっている。しかしアリアはそれに気付かず、
「今度、デートしない?」
「うん、良いよ」
「ふふっ」
アリアは嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。そしてそれを見たシンは少し顔を赤くした。
デートですってよ奥さん
私デートした経験無いんでラノベからの知識になりますねぇ
もう少しで50万pvですねぇ
ちなみに私は他の方がもっと多くのpvを得ていても嫉妬しないです
まぁ、評価とかは嫉妬するかもですが
そんなときはその小説を読んで素直に面白いって思えるから嫉妬がすぐ消えるんですよね
嫉妬で思い浮かんだんだけど貧乳さんが巨乳さんに嫉妬するってマジなのかな私知らない知りたい




