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学校

「あの、それはつまり私のデバイスだけが取られたと言うことで良いのかしら?」

『ええ、実害はそれだけになりますね』

『ロックしておいたのでおそらく中身の確認は出来ないかと思います。それにデータのコピーは私の中にありますからまぁ、問題ないかと』

『それに置き土産がありますからね』


 マグナとオバマは平然と口にした。それはユリアとアリアにとっては緊迫感を削ぐものであり、同時に安心をもたらした。だが、


「置き土産って何かしら? それとユリア、もう車を留めても良いのでは?」

『そうですね……どこか駐車できそうな位置を探しますね』


 路肩に留めない、とユリアは口に出しながら車を走らせて――結局、赤信号に引っかかった。


「そう言えばユリア、信号機を乗っ取るのはダメな気がするのだけど」

『バレないように記録も消しておきましたので大丈夫かと思います。それよりもアリア、どうもアリアのデバイスから不思議な反応があります』

「え?」

『『……』』

『どうやらアリアのデバイスに何かが、おそらくUSBケーブルが挿されたようです。そして――クラッキングが開始したようです』


 クラッキング? アリアが首を傾げていると


『あ、それ私たちです』

『あはは』

「……もう。ユリア、とりあえず会社に戻れるかしら? 色々と気になることはあるけど今日はもう疲れたわ」


*****


「アリアさん、無事でしたか?」

「デバイスが無くなったくらいですね……はぁ」


 アリアは優の言葉に小さくため息を吐きつつ、疲れたような笑顔を浮かべた。そして


「それではアリアさん、また今度時間がある時に……お願いします」

「ええ、それでお願い。ちょっと帰りに買い物していくわよ」

『言わずとも』

『分かっていますよ』

「それとユリアを借りても良いかしら? 車で買い物に行きたいの」

『気に入ったんですか?』


 頷きを返礼として、アリアはそっと微笑む。そして15分後


「どのデバイスが良いかしら……」

『デバイスの性能だとその壁際のが良いですね』

『ですがこのお店で買うよりは真央に頼んだ方が良いものが手に入ると思いますよ』

『真央というのがどなたか存じ上げませんが他人の好意に甘えるのもどうかと思いますよ』


 アリアは自分のスマホから聞こえる三人の会話に頷きながら店内を見回す。お勧めされたデバイスを買おうかな、どの色にしようかな、と悩んでいると


「あ、アリアじゃん」

「あら、きりじゃない。そう言えば最近出番が無かったわね」

「メタいなぁ……」


 きりは困ったように頭を掻いて、アリアの手首を見た。そこに珍しく巻いていない、というのに気付いて


「デバイス、壊したとか?」

「そんなところよ」

「ふーん。今は何で悩んでいるの?」

「色」

「んー、髪の色に合わせたら? アリアの髪綺麗だし」

「ありがと」


 そして10分後、


『あ、車、今日は返さなくても構いませんよ』

「ありがとうございます」

『次に出社する際で構いませんよ。その際に連絡いただければユリアを向かわせますので』

「ありがとうございます、優さん」


 いえいえ、と言って電話は切れた。アリアはそれに頷きながらきりと一緒にドライブしていた。もっともそんなロマンチックなものではなかったが。


「免許取らなくても良いってのは楽だねぇ」

「ええ、そうね。のんびりしているだけで運転してくれるんですもの」

『アリア、そろそろ着きますがどうしますか? きりを送り届けますか?』

「そうねぇ……きりの家は近いから私の家の前で降ろすわ。それで良いかしら?」

「良きに計らえ」

「川に落としましょうか」

「ごめん」


 きりは謝りながら笑っている。それを眺め、アリアも表情を緩める。


「――きり」

「ん?」

「最近、学校はどんな感じかしら?」

「うーん、何と言えば良いのかねぇ……アリアが学校に来なくなっても大差ない感じ?」

「そう」


 アリアは最近、学校に行っていない。会社に顔を出すことが多くなっているからだ。仕事を優先するのに関して両親は何も言わなかった。


「でもさ、アリア」

「なに?」

「学校来なよ」

「何のために? 授業内容が仕事に生きるわけじゃないし、部活をやっているわけでもない。成績が良いわけでもないのよ? 何が悲しくて仕事よりも優先しないと行けないのかしら?」

「世間体のため?」


 身も蓋もない、とアリアは呟きながら明日の仕事のデータを眺める。明日の仕事は今日と同じ仮想世界の調査。つまり、まぁ、アレだ。ゲームのようなものだ。


 きりのために学校に行ったとしても何か利点が有るわけじゃない。だからこそ、行く理由は無い。そう思っていると


「明日、期末テスト前日だから」

「あら、そうだったの? なおさら行く気が失せたじゃない」

「あっはっは」


*****


「――ユリア。学校まで運転してもらっても良いかしら?」

『構いませんよ。優からはそっちを優先してもらうよう頼まれているので』

「それならそうと言ってくれれば良いのに……もぅ」


 アリアは少し呆れながらそっと座席に背中を預け、目を閉じる。そして


「マグナ、オバマ。テスト範囲は分かるかしら」

『『教えません』』

「なぬ……」


 思わずため息を吐く。しかしまぁ、学校に行っていなかった私が原因だから仕方ないと言えば仕方ないのかもしれない。

 そして10分後、車は順当に進んで校門前で留まった。アリアは自動で開いた扉に凄いなぁ、という感想を抱きながら車を降りて扉を閉める。すると


『頑張ってくださいね、アリア』

「ええ。ありがとう、ユリア」

『帰りの時間はいつ頃でしょうか?』

「そうねぇ……4時半にここに来てくれるかしら? そのまま会社に向かうわ」

『分かりました。優たちにはそう伝えておきますね』


 アリアが頷いて校門に足を進める。直後、周囲から運転手がいない車についての質問攻めを受けるとも知らずに。


*****


「アリア、おはよう」

「おはよ、きり……もう、疲れたわ。帰りたい」

「あっはっは。逃がすか」


 きりは笑いながらアリアの頭に手を置いた。まるで身長を測るかのように。


「大きくなったね」

「上から目線でウザいことこの上ないわ……もぅ」


 朝日がアリアに気付いて足音を消して忍び寄る。しかし足音が完璧に消せるはずも無く、アリアはそんな些細な音にも反応する。


「朝日、気付いているわよ」

「……マジか」

「ええ」


 ため息を吐きながら窓際の席に座る。そのまま窓の外を眺める。

 かつて旦那が座っていた場所、そう思うと少し複雑だ。彼がいないこと、自分が成長したこと。喜べなくて、喜びたくて、戸惑う。


「――」

『アリア』

「何かしら?」

『お母様より伝言です。テスト前に学校に行くならそう言ってから行きなさい、とのことです』

「あら……なんて言って家から出ましたっけ?」

『行って来ますのたった一言でしたよ』

「あらら」


 確かにそれなら伝わらないなぁ、と思いながら時計型デバイスの表面を撫でる。マグナとオバマに触れられない。それは少し辛く、あの世界に行きたいと思う。


 現在は山小屋もどきのようなものを作ろうとして優と四苦八苦、マグナたちは食糧確保に四苦八苦していた。

 だからこそ学校に行くよりも向こうを優先したいのだ。ちなみにアリアにとってはゲーム感覚だが、きちんとデータが取れているのでアリアたちには給料が出ている。

 さらに言えばアリアはすでに社員である。


「だからこそ学校に来る意味があるのか分からないわ」

『ユリアもユリウスもアリアが普通に学校に行って欲しいそうですよ』

『孫の言葉ですから聞いて上げてくださいね』


 はいはい、と呟きながらアリアは机に突っ伏した。


不登校気味なアリアちゃん

私も現在夏休みだから不登校


100万字ですぜ旦那

書き始めた頃はそんなに書けるはずねぇだろこのすっとこどっこい的な事を考えていました私

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