色々斬って
アリアは自分に向かって飛びかかってくるたくさんのプレイヤーを見据え、二本の剣を交差させるようにして構えた。そのまま、地面を蹴った。前に出る、横に飛ぶ、背後に飛ぶ。そういった動作を織り交ぜながら、切り刻む。
左手に握るのは対の剣、《春雷真打》。かつて自分が創り出した最高峰の剣。
右手に握るのは対の剣、《無銘真打》。かつて自分が創り出した最高峰の剣。
「この二本が並べば、切れない物は何も無い」
そう思っていた剣は、実際にその通りの戦火を発揮していた。そしてそのまま、
「行くぜ、アリア!」
「遅いよ、スカイ」
連続斬りを正面から切り払う。そのまま前に出て、縦に真っ二つにして
「おっと」
「避けましたか」
「エレナ、久しぶりだね」
シリーズ装備を身に纏った彼女の剣が、振り下ろされる。それを軽々と逸らして、真下から切り上げる。それと同時に十字を描くように斬りつけた。
「立派な防具だね」
「あなたが創った装備よ、アリア」
「うん、知っているよ」
剣を阻んだそれに動揺していると、エレナの拳がアリアの頬に触れた。しかし
「っ!? なんで!?」
「気付いていないんだね」
細い糸が、エレナの手に巻き付いていることに。エレナの動きを縛り、止めていることに気付いていない。
そのまま、アリアの剣が閃いてエレナは首から上が無くなり、光となって消えた。
「隙あり、と言いたかったのだが」
「隙があると見せかけて隙が無い、と見せかけて実は本当に隙があったり?」
「しないから俺の剣を止められたんだろう? 相も変わらず、ラスボスのような子供だ」
ガイアはそうぼやきながら、剣を振り下ろした。しかしその剣はアリアに当たらない。何故ならすでに、ガイアの体は光となっていたからだ。そしてそのまま、アリアの動きはさらに加速した。
「お久しぶりです、ご主人様!」
「ヴィクトリア……久しぶりだね!」
瞬殺、と言うほか無い。アリアの剣は誰にも止められない。霞むような高速の連続斬りは、誰一人として同じプレイヤーには向けられない。
しかしアリアも無傷ではない。1カ所に留まらずに動き回るアリアを、遠距離から狙う者がいるからだ。
「波動の七式、《連伝波》!」
「《ダークネスパニッシャー》!」
「《ミリオンレイン》!」
降り注ぐ様々な攻撃。アリアにとってはそれらは避け続けるのが前提であって、一撃でも受けるのはまずいのだ。
「っ」
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬るkill斬る斬る斬られる殴られる切り返す。そうして残ったのは、実力者ばかりだった。
「《魔王の傘下》……」
「よぉ、アリア。機嫌悪そうだな」
「……まぁ、ね。コレが最後みたいだし」
アリアの言葉に魔王は驚いた。死を覚悟しているような口調だった。
「俺たちはお前が嫌いじゃない……だが、お前自身の願いだ。お前を倒し、終わりにする」
「うん、良いよ。やれるもんならね」
「お別れだな、最強」
その言葉と同時に、アリアと《魔王の傘下》は激突した。
*****
「迸れ、春雷! 輝け、無銘! 《真終解放》!」
二本の剣が輝き、その光が交わる。そして――アリアの手に握られていたのは、一本の剣だった。
「《アリア》」
「自分の名前を冠する剣かよ!?」
「それは一本だけの場合だよ。二本だと、もっと強いよ」
そう言ったアリアの体力が少しずつ、減っていく。それはあまりにも強大な剣が発するオーラに体力を削られているのだ。
「ん」
「っ!? 甘い!」
「魔王が甘いよ」
二本のナイフが剣を受け止めた、魔王はそう思ったが――アリアの剣が、めり込んでいた。そのまま徐々にアリアの剣がナイフを切り裂いていき――
「なんだと!?」
「僕は消えない。僕が勝つ!」
真っ二つにされた魔王は、苦笑して
「それも良いだろう……楽しかったぞ、お前と一緒だった間」
「……遺言、みたいだね」
でも、それを言うのは僕だ。僕が最後に、言わないといけない言葉だ。誰も彼者姿の無いここで、言わないといけない言葉だ。だけどそんな寂しいことは嫌だ!
「――みんな」
誰もが動きを止めた。だから
「ありがとう、さようなら」
最後の戦いに臨んだ。
*****
振るわれる鞭を剣で切り裂くつもりだった。だが、アリスは手首を小刻みに動かして、アリアの剣を奪おうとした。
「むむ」
「アリア、改めてお礼を言わせてもらいますね」
「ん?」
「愛しています」
「っ!? アリス!?」
「娘として愛しています、アリア」
「……へ?」
誰だろう、アリスって。でも僕、リアルのアリスと会ったことがあるし……あれぇ?
「娘というのは言葉の綾ですよ」
「えっと……どういう意味?」
「あなたを娘のように私は思っているんですよ。今も、あの時からも」
「そっか……そうなんだね」
アリアはそう言いながら、アリスを斬り裂いた。
*****
飛んできた小瓶を掴み取った。すると、小さなダメージが入った。見ると、小瓶に小さな棘が生えていた。
「アリアなら引っかかると思ったよ」
「ムカつくなぁ」
「あっはっは」
地面に叩きつけられた小瓶から、もくもうと煙が立ちこめた。それは視界を阻害し、《感知》や《探知》スキルを阻害した。
マリアの姿を見失った。そんな風に思いながら煙を剣で切り裂いた。しかし、手応えは無かった。
「っ!?」
「《鳥もち》だよ」
「っ……千切れない」
アリアは文句を言いながら剣を振るい、声の出所を狙った。しかし、剣から伝わる感触は空振り、だけだった。
「ちょこまかと!」
「なんだか悪役みたいな台詞だねぇ」
剣に感触があった。それは硬く、弾かれるような感触だった。そのまま、何度か同じ感触があった。
「おっとっと」
「そこだね!」
足下の地面を剣でえぐり取り、そのまま不格好な状態で踏み込んで、剣を振るった。何かを斬り裂くような感触があり――
「《金克炎》! 《縛炎》!」
「《焔纏》!」
炎を剣に巻き付け、剣身が炎に包み込まれた。そのまま、威力を増した剣が、マリアの剣を切り裂き、煙の残滓を焼き尽くした。
*****
「ぶっちゃけ鞭なアリスが負けるとさ、剣の技術で負けている私ってどう足掻いても勝てなくない?」
アジアンの首が空を舞った。
*****
「で、いつの間に君は《魔王の傘下》に加わっていたの?」
「はン、お前がいない間だ!」
「まったくもってその通りだね」
飛び膝蹴りがアビスの鎚に、受け止められた。しかし、そこからのサマーソルトは予想していなかったのか、吹き飛んでいった。そこに追撃を加えようとすると
「させっかよ!」
「わ、シエル!?」
「他の誰に見えるんだよ!」
両手に握られた二本の巨大な剣が振るわれる。しかしそれらは同時に、斬り裂かれた。それはシエルやアビスの知覚を超えるほどの高速の剣だった。
「んだよ!?」
「マジか!?」
*****
次々と《|魔王の傘下》メンバー《仲間》がアリアに斬られ、消えていく。それを眺め、8人は少し、色々と考えていた。
「最後なんだよなぁ」
「最後か」
「最後、ねぇ」
「最後なのね……」
「最後……か」
「最後……」
「……最後だね」
「最後……なんだな」
*****
「さてと、コレで残るのはエミとシェリ姉と……みんなだね」
「そのみんなって、一体誰なの?」
「誰だと思う?」
「初期メンバーでしょ?」
「うん」
アリアは姉と妹を眺め、少し考えた。自分の、彼女の姉妹。だからと言って手を抜く理由は無い。さっき斬った義姉はもうすでに、頭の中から消え去っていた。
「さてと、それじゃそろそろ行っても良いかな?」
「良いよ、アリアちゃん」
「良いよ、お姉ちゃん」
二話投稿できた……夏休みって偉大
一日を生け贄に捧げたけど
整骨院と執筆だけの一日
お別れしたくないなぁ
リアルに泣きそうになっているよ今




